いつか遠くの空に向かって行きたい。
真っ白な翼を広げて、高く、高く飛び立って、
ずっとずっと遠くに飛んでいきたい。
この地球の何処かにいる誰かに会ってみたい。
まだ見たことも無い景色を見てみたい。
今まで感じた事の無いような感情を抱いてみたい。
そんな沢山の『してみたい』を胸に、
-僕は「今日」を歩んで、「未来」へ羽ばたいていく。
彼の目はまるで青空をそのまま詰め込んだような
綺麗な空色。
じっと見つめてみると吸い込まれてしまいそうな雰囲気がある。
彼の声は、優しく私の鼓膜を揺らす心地よい低音の声。
彼が私の名を紡ぐ時、胸が高鳴る。
彼は勉強も運動も平均以下で顔は
滅茶苦茶かっこいい!って程じゃないけど
『儚げな少年』って言葉がよく似合うと思う。
性格は誰にでも優しくて気遣いができて…
陰でみんなを支える縁の下の力持ちみたいな感じ。
クラスでは目立つ方では無いけど好都合。
だって彼の事狙ってる子が居ないってこと。
つまり、彼の事を1番知ってるのは私だけ!
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私はね、起床時間、家を出る時間、最寄り駅、いつも乗る電車の時間、電車のどこに乗ってるかぜーんぶ知ってる。
詳しくは教えてあげない、私だけの情報だもん。
学校では授業中、放課、お昼ご飯の時間、どんな風に過ごしてるかだってずーっと見てるから知ってるよ?席、斜め後ろだし。
部活には入ってないからすぐ帰るんだけど、いつも同じルートで帰るの。どんなルートかはひ・み・つ♡
エヘヘ、あとはあとはー、家に帰ったら自分の部屋に行って、
自分の机に向かって勉強するんだ!偉いよね〜。
一通りその日の復習が終わったらご飯の時間までベットでゴロゴロして、ご飯食べてお風呂入って、またゴロゴロして大体22:35位に寝るんだ〜、ゴロゴロしてる時すっごく可愛いんだy、
え?なんでそんなこと知ってるの、って。
…この世には知っていい事と知らなくていいことがあるって教わらなかった?まぁいいy
なんで家での行動を知ってるの、か。
……それはね、私が君の部屋に色々仕掛けてるからね♡
探しても意味無いよ、絶対見つかんないから。
なんでこんな事するの、って決まってるじゃん!
君の事が、だーいすきだから!!君の全部を把握しなきゃ気が済まないの!ねぇ、君なら分かってくれるでしょう?
嗚呼、きっと今私の目は暗く濁ってるんだろうな。ドロドロなんだろうな。でもしょうがないよね!君の事が大好きなんだもん!諦めて私に愛されてくれればいいのに…。
--誰よりも、ずっとキミを愛してる…。
君の目はアメトリンの様な、珍しい色合いの目だ。透明度が高い中あるに柔らかく溶け合う美しさには思わず時を忘れて見入ってしまう。
僕は君の瞳が好きだった。この世の綺麗な所を詰め込んだような、キラキラとした純粋無垢な君の瞳が。
その瞳で見つめられるとどれだけ平然を装いたくても
簡単に崩される。心臓に矢が刺さったかのように胸が痛くて、息が詰まって、、、
今の君の瞳はどうだろうか。
以前は美しい透明感あった筈なのに暗く濁ってしまった。この世の汚れた所を知ってしまったのだろうか。
光が灯っていない。
僕を見つめる君の目は蜂蜜のようにドロリとしていて、
その目に映るもの全てを溶かしてしまうようだ。
でもその瞳すら愛おしいと思ってしまうのは
もう手遅れだろうか。
そのドロリとした瞳に見つめられて溶かされてしまいたいと願う僕は狂っているだろうか。
きっと君を見つめる僕の瞳も君と同じ様に蜂蜜みたいに
ドロリとしてるんだろうね。
しょうがないよね、君が愛しいから。
君と僕は互いに同じ感情を抱いてる。
この関係をきっと人は『共依存』と呼ぶのだろうか。
君の目を見つめると僕の中にある愛おしいと思う感情と独占欲が渦を巻く。きっと君は僕を狂わすテンシだろう。
そして僕は君に狂わされ惑わされた愚かな人間だろう。
でも関係ない。だって僕等は互いにアイシアッテル。
キミノ目ハ、昔も今モ、時間と我ヲ忘れテシまうホドニ
ウツクシイ。
柔らかな風が吹く丘の上。
芝生に3人寝転んで星空を眺める。
ふと、万昼が空に向かって手を伸ばして、
「いつまで一緒にいられるのかな」
そう言った。その声は微量の哀を含んでいた。
すると朝凪は万昼と同じように手を伸ばして言った。
『いつまでも。皆の気持ちが同じである間はずっと一緒』
その言葉を聞いた万昼は目を少し見開いて愛おしげに笑った。彼の頬には一筋の星が流れていた。
2人の視線は僕に集まる。
「『悠夜はどう思う??』」
【…2人と一緒にいれる未来以外僕は見てないよ。】
2人は鳩が豆鉄砲喰らったような顔してる。なんでだろ。
「…悠夜ってそういう事平然と言うよね。」
『ねー笑』
【なんかムカつく。】
そんな漫才の様な会話をして、3人で大笑いして。
そして3人で祈った。考える事は同じようだ。
「『【3人でずっと一緒にいられますように】』」
-星空の下で3人祈ったとある夏の夜。
『今はそれでいい。』
そう先生は言った。言ってくれた。
僕が"役立ずだ"と、"出来損ないだ"と自分を責めて責めて責めて追い詰めて…
自分の首を絞めていた時に掛けてくれた言葉。
「今は役に立てなくても、出来損ないでもいい。
いつか来る大事な時に自分の力を最大限に
発揮出来ればいい。
だから自分で自分を追い詰めて負の鎖で縛り付けないで、
今の自分を認めて、大切にして進みなさい。」
その言葉を辛い時、繰り返し思い出すとさっきまで
上手く出来なかった呼吸がすんなりと出来るようになる。
先生の言葉は魔法だ。
-何度となく僕を救ったその言葉の主は今年の7月、
この世を去った。僕は社会に出て世間の歯車として
日々働いている。そんな時、僕の目の前には1人の少年が立っている。あの日の、先生と出会った日の僕と同じ、
自分の価値を見失って彷徨って、未来に期待なんか出来ずに己の存在を呪って濁った目をしている少年が。
僕は彼と話をする。
彼が何を失くして、何を迷って、何を得たいのか。
沢山沢山話をして、そして僕は一つ少年に言葉を送る。
先生のように、少年の何かを救える様に。
『今はそれでいいんだよ。』
-ねぇ先生、僕も誰かを救えるかな。
僕の言葉でも救えるかな。
…わかんないけど自分のやれる事、やってみるよ。-