~赤い糸~
恋愛と言えば
赤い糸と関連づける人は
多いだろうけど
俺は残念ながら彼女という人物は
生憎 持ち合わせていない。
3時間目で行う家庭科の
手縫いの時であったか…
俺の後ろの席で甲高い声が
俺の耳を劈く(つんざく)
「みてー!」
「赤い糸で恋人気分!」
俺は鼻で笑った。
心の中で思ったことは
恋愛してない人に限って
そんな馬鹿なことをするっと
思ってるのが現実だ。
次に思ったことで不思議なのが
女の子のランドセルは赤色が無難だ。
けれど男の子も靴の色が赤色なのも無難だ。
だから誰にでも愛される色が
『赤色』なのかと改めて疑問に思った。
俺は何事も新しいことは好きだが
恋愛だと興味が全くない。
でもそれは
3週間前の言いがかりだ
俺は現在
付き合ってる人がいる。
その子は少し
物静かでよく図書室にいる女の子。
その子がよくお気に入りで
読んでいる本の題名こそが
『赤い糸』という本だ。
ある日俺は
その子に話しかけた
「赤い糸ってさ
どこまで続くと思う?」
少しドヤる感じで
話しかけてみた。
そうすると女の子は
「どこまでも続かない。
今、貴方の身体を駆け巡ってるもので
止まってしまうと元に戻らないものなの」
俺の頭の中は
クエスチョンだらけだ
あの子は何を言ってるんだ?
俺の質問の仕方の問題か?
女の子はため息をついた。
「話しかける相手違うかもよ」
俺はその一言で
少しワクワクしてきた。
なんか子供が解く問題みたいで
すぐ近くに答えがあるはずだから
余計に気になって仕方がない!
「ねぇ!俺はその問題解きたい!」
けれど女の子は
「身近にあるものなのに
不思議がってるのは貴方だけよ」
突き放すのが早いな…
けれど身近にあって赤い糸のような物
他にあるか?
紐か?いや…身体って言ってたし
女の子が口を開くと
「貴方 恋愛に興味ないでしょ」
っと言われた。
俺は「ないよ」っと即答で返した。
呆れた感じで女の子は
俺の所へと近づく。
女の子が
赤い糸の事柄を小さな声で話す
「私が言ったのは紐とか糸とかじゃない
身近にあるものといえば
自分の喜怒哀楽でよく携わってる
心臓でその周りについている
『血管』のことを私は『赤い糸』って言うのよ」
「あー!!」
俺は大声をだした。
けれどここは図書室。
周りから早く出ていけという
オーラが空気として分かってくる。
俺は新しいことや
新しく知ったこと 理解できたものに
満足感を得るのがとても大好きだ。
あれ?大好き?
俺…多分この子といて
もしかして楽しいのか?
とっ!思ったのが
付き合ったキッカケだ!
なかなか俺の彼女さん面白いだろ?
興味のない学校で
唯一楽しみになったのが
この子の会話だ。
次の話の例え方は
どういう内容なんだろう
俺と彼女も流れ、持っている
『赤い糸』
恋愛として繋ぐ
『赤い糸』
どちらにしても
俺は赤い糸について
興味が湧いたのは
最近の事なのだ。
~入道雲~
「飽きたな」
俺は病院のベットの上で呟く
同じ部屋で同じ担当医
そして同じ匂い
何もかもが入院してから
変わらない。
入院っていうのは
とても楽なイメージがあるが
過労が結構出るものだ…
友達とふざけて
階段を9段飛ばしした行いが
今来たのか…?
甲子園前になって
気を張らずに学校生活を
送っているから神様へのバツが
この入院に繋がる鍵だったり?
高校3年の最後の大会が
あるというのに
みんなは練習。
俺は入院。
「ふざけんなっ!!」
なんで俺だけなんだ。
他のメンバーをやったのに
俺だけ骨折とか有り得ないだろ!
すると隣のベットから
咳払いが聞こえる。
同じ病室の人なのに
もっとイライラが増してしまう。
別に同じ骨折原因でも
違うように捉えてしまって
余計に自分が情けなく思ってきた。
「外…出たいな」
けれど入院の原因となるのが
骨折だ。簡単には出れない
大きくため息をすると同時に
病室の扉が開く
また誰か入ってきなと思って
扉の方を見ると
俺より遥かに小さい男の子だった。
その子のことを
ずっと見てみると原因は
骨折でもない
喘息気味な男の子だと分かった。
息が苦しくなるのを見ていると
俺まで苦しくなってしまう
見て見ぬふりは
出来なくて気づいたら
自分から話かけに行っていた。
「よ…うボウズ!」
緊張で上手く喋れない…。
そうすると男の子は
「こんにち…は?」
疑問で返してくる
それが当たり前だ。
絶対相性が合わないことは
見た目でも分かるのだが
それが意外にも
趣味もあって
俺と似ている部分が沢山あったのだ
趣味は野球と言って
共通点を1つゲットした
けどやってみたいけど
喘息持ちには厳しい競技らしい
男の子は
「羨ましいです!」
「今度教えてください!」
俺は自慢げに答えた。
「全然いいぜ!」
俺の骨折は
案外軽いもので2週間もすれば
退院が可能だそうだ。
あのボウズに
別れを告げると
「僕の代わりにホームランね!」
おっと…幼い子の夢は
案外可愛らしいものだな
背中で語るように
何も言わず出ていった。
新品同様なユニホームを着て
久しぶりに会う友人にも
大丈夫かと言葉を繋いだ。
最後の大会は
絶対ホームラン打って
あの男の子に伝えたいんだ。
『俺は諦めなかった』とね
さてグラウンドに立とう…!
空一面には
青い空と大きい雲のようなものが
広がっている。
俺はバットを握りしめて
心に決めたことを
叶えようと努力する!
打った瞬間にも
あの男の子は起きてるんだろうか
俺の事を差し置いて昼寝とかしてないよな
っと心の中で嘲笑う。
再び病院へ行くと
姿はない…
「退院かぁ!」
と、声をあげるけど誰もいない。
扉が開く
あの男の子だけども
顔に白い布が
覆いかぶさっている。
「おい…夢はいいのかよ!」
っと怒鳴るが男の子には聞こえていない。
俺の夢は叶ったが
男の子の夢が叶わず終わってしまった。
そうあの入道雲みたいに
大きく散るように…
~夏~
「はぁぁ…」
それが僕の口癖となる
言葉の始まりだ。
最低な人間だと分かっている。
人前でため息なんて
ダメなことなのについてしまう…
誰が僕を求めるのか
ついつい頭の中で問いかけてしまう
けれど僕はこんな
寒い季節がとても好きだ
毛布に包まれれば
心も暖かく
そして…人の気配も
気にせず過ごすことができる
「冬なんて毎年来い!」
なんて願っても押し寄せるように来るのが
夏という四季だ。
「あれ?」
「もしかして僕って頭いい?」
急に思いついた
気になる?気になるよね!
僕は1人のこの部屋で
声を押し殺すように笑っている
「僕のこと必要と思ってない」
「それでもって夏は嫌い」
気づいちゃったかな?
そう!実はね
「冬の間に死のうと思ってるんだよね」
ね!いい考えでしょ!
さて…計画的にやらないとね
バレないように
遺書なんて残すのって
カッコイイかな?
いや…突然の方が
後々の事が楽なのか?
悩みに悩んでいると
ドアの方から声が聞こえてくる
「いつまで起きてるの!」
いつもの恒例の説教だ。
僕は
「もうちょいっ!」
今の気分は
とても『楽しい』に分類される
そしたら僕はお母さんにむかって言うんだ
「死んだらいつでも寝れるからさ!」
おっと…沈黙だ
勘づかれたか?
バレたら面白くないし
頭をひねって
考えていると母親の気配は
薄れていった。
次の日になると
僕はかっこよく死ぬために
色々と工夫を始めた。
紙に助けて欲しかったことを
書き綴るのも良いだろう!
時間が徐々に過ぎていくと
チャイムがなった。
「お母さーん?」
返事はない
仕事か?
それにしてもこのタイミングかよ…
俺はため息をつきながら
扉を開ける
宅配便か
送り主は…っと
なんだ
おばあちゃんか
手紙付きで
ある布状の物が届いた
着物だ。
手紙には
「これを着て行事など
満喫してください」とね
なるほどね…
着物って夏祭りに着るのが
無難だよな?
もしかしたら
おばあちゃんが僕に送る
最後の希望なんだと
息をすることを忘れるほど
驚いている。
それを着て
『夏』まで生きろというのか
しょうがない…人にお願いされたら
言うことをきくしかないだろ
分かったよ
僕は『夏』まで生きようと
心に決めたのだ。
(太宰治さんの名言を元につくりました!)
~ここではない どこかで~
僕は黒い服を着ながら
ある場所へと行く
少し老けている
おじさんが僕に問いかけるんだ
「トイレは大丈夫かい?」
僕は
「平気だよ!」
おじさんだから
声は大きくないとね
静かすぎる建物
いや‥少しだけ声が聞こえる
楽しそう‥ではない
なんだろう。
なんか心を締めつけるような
とても物静かな声だけが僕の耳に
飛びついてきた。
その声が大きくなる‥
僕はおじさんに聞いた
「なにかここにあるの?」
おじさんは眉を寄せて
肩に手をやりこう答える
「なにもない」
なにもないのに声がするのはおかしい
僕は歯を食いしばりながら
扉の前で突っ伏してる
おじさんを横に扉を開ける
そこにはお母さんの姿がある
弱々しい背中で今にも触れたら壊れそう
僕に気づいたお母さんは
何事もなく僕を腕の中に包んだ
泣いている。
けどなんで泣いてるかは
よく分からない。
「なんで泣いてるの?」
「悲しいことあった?」
周りの人たちは
僕の発言に涙を流しながら笑っている
けれど僕は泣くどころか
怒りを覚えた
僕には何も教えてくれない
涙の理由も!無理して笑ってる理由も!
僕は悔しくなり
その場所から飛び出した
どこまでも遠く
息を切らしながら遥か遠くまで
けれど僕の年齢だと
遠くとはいかなかった
大人で言う数メートルくらいだろう
近くに川がある
水分補給がてらにそこに寄ろう
息が切れて
今にも胃液が出るくらい
無我夢中で走り続けた挙げ句
喋ることも困難だった
ふと目をやると
白い物が何かに引っかかっている
「犬だ!」
僕は慌てて助けに行く
けど梅雨は明けたけど
その余韻の川の威力というものが
あとを絶えない。
僕はあの建物では
何も使えないダメな人だったから
今度こそ役に立ちたいという一心で
靴のまま川へと入った
僕には川のスピードとバランスをとる感覚が
うまく読み取れなかった。
僕は尻餅をつき
あとは身を投げるまま流されていく
本題といこう
犬であろうあの白い物は
ただのポイ捨てした
白いビニール袋だった。
ほら‥何をやっても
僕は使えないダメ人間だった。
ここにはない
ある場所へと可能な限り
僕はどこまででも人を助けるために
走り続ける。
ね?そうでしょ?
僕はお父さんの背中をただ単に
見てきたのだから。
「君と最後に会った日」
俺はいつものように
目をこする
周りから見たら
目やにがあるのかとか
ゴミが入ったからだとか
適当なことに紐づける
案の定
答えはNOだ
じゃあ逆に俺は
なぜ目をこするのか
この小説の中だけは教えてあげる
俺は…自分の目が
大っ嫌いだからさ
周りから見て気持ち悪いのか
どうだとか上手くは分からない
けど…よく言うんだ
「なんだよ その寒々しい目は」
この言葉は俺が配達員をしているからであって
毎日その言葉を聞く
自分では怒ってもない
なにも感情もない
その目を周りからだと嫌われている
お陰であって
その仕事は速クビになった
笑えるよな
この小説を見てる人だって
俺のこと大声出して息が切れるまで
笑ってろよ…俺は
そんな顔してこの小説を読んでいる
その!今の顔がとてつもなく大嫌いだ!!
っと…すみませんでした
ほら誰もいないのに
謝ってしまった。
けど俺は分かる
その言葉の先には幸運が恵まれてるのだと。
世の中には
この目を好きだという人は何人いるのだろうか
10人か?いや…それだと多すぎる
1人…そう
こんな少人数で十分だ
でもそれがまた
妄想ではない。
実際に俺は
外見を悪く言うどころか
褒めまくる人が目の前に現れたんだ
「私はその目…好きですよ」
何ということか
やはり運命はいるのだと心から
そう思ってしまった
「好き…ですか?」
と聞くと
「なぜ悲しそうに笑っているの?」
また不思議なことを言う
俺はあまり表情に出ない男だ
なるほど。
これは想像以上に
面白い人に出会った
毎日通うジムのすぐ近くの公園で
よくチラシを配ってる人に
話しかけられるなんて
あの人も暇なんだなと鼻で笑う
俺は褒められることが
数少ない。
そんな一言の言葉で
俺は浮かれてしまい毎月…いや
毎日と言っていいほどその公園を横切る
けれど話しかけてくれたのは
たった4回だけ
5回目からは会っていない
体調を崩したのかと心配するが
赤の他人なのになにを心配して俺に
何ができるのか…何を持ち合わせているのか
自分自身よく分からない
よく風邪を引くと3日で治るのが
普通じゃないのか…?
男女でそんなにも違うなんて
科学的に証明という言葉が今、現在欲しい。
再び公園の方へと視線を向けるが
いつもの場所にはいなく
その近くの信号の前にいる
「こんにちは」
と、話しかけると周りから
変な目で見られてるのが微かにわかる。
陰キャの俺が
挨拶を間違えたのか…
そう考えると
1人お婆さんが話しかけてきた
「あの…どなたに話しかけてるんですか」
「はい?」
俺は耳を疑った。
目の前にいる彼女は
俺の幻なのか…
唯一 俺の助けとなった
人物はもう…この世から消えてしまったのか
俺は彼女の隣に立った
普通から見たら信号を待ってる人だと
思うだろう。
けど俺は見えている
何故か苦しい現実なのに
『悲しそうに笑っている』のが
横目でも分かる。
最後の言葉でも
彼女の優しさは絶えない
「私はその目が好きでした」
最後に伝えたいことは
俺が根に持っていた
目のことだった。
俺は自分の目が
褒めてくれた目のことが
大好きになるように
鏡へと向き合っている。