さっくん

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~ここではない どこかで~

僕は黒い服を着ながら 
ある場所へと行く 

少し老けている
おじさんが僕に問いかけるんだ

「トイレは大丈夫かい?」 
 
僕は
「平気だよ!」 

おじさんだから
声は大きくないとね

静かすぎる建物
いや‥少しだけ声が聞こえる

楽しそう‥ではない
なんだろう。

なんか心を締めつけるような
とても物静かな声だけが僕の耳に
飛びついてきた。


その声が大きくなる‥
僕はおじさんに聞いた
「なにかここにあるの?」


おじさんは眉を寄せて
肩に手をやりこう答える
「なにもない」

なにもないのに声がするのはおかしい
僕は歯を食いしばりながら
扉の前で突っ伏してる 
おじさんを横に扉を開ける

そこにはお母さんの姿がある
弱々しい背中で今にも触れたら壊れそう

僕に気づいたお母さんは
何事もなく僕を腕の中に包んだ

泣いている。
けどなんで泣いてるかは
よく分からない。

「なんで泣いてるの?」
「悲しいことあった?」

周りの人たちは
僕の発言に涙を流しながら笑っている

けれど僕は泣くどころか
怒りを覚えた

僕には何も教えてくれない
涙の理由も!無理して笑ってる理由も!

僕は悔しくなり
その場所から飛び出した

どこまでも遠く
息を切らしながら遥か遠くまで

けれど僕の年齢だと
遠くとはいかなかった

大人で言う数メートルくらいだろう
近くに川がある
水分補給がてらにそこに寄ろう

息が切れて
今にも胃液が出るくらい
無我夢中で走り続けた挙げ句

喋ることも困難だった
ふと目をやると

白い物が何かに引っかかっている
「犬だ!」

僕は慌てて助けに行く
けど梅雨は明けたけど
その余韻の川の威力というものが
あとを絶えない。

僕はあの建物では
何も使えないダメな人だったから
今度こそ役に立ちたいという一心で

靴のまま川へと入った
僕には川のスピードとバランスをとる感覚が
うまく読み取れなかった。

僕は尻餅をつき
あとは身を投げるまま流されていく

本題といこう
犬であろうあの白い物は

ただのポイ捨てした
白いビニール袋だった。

ほら‥何をやっても
僕は使えないダメ人間だった。

ここにはない
ある場所へと可能な限り
僕はどこまででも人を助けるために
走り続ける。

ね?そうでしょ?
僕はお父さんの背中をただ単に
見てきたのだから。

6/27/2022, 12:28:58 PM