さっくん

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~入道雲~

「飽きたな」
俺は病院のベットの上で呟く

同じ部屋で同じ担当医
そして同じ匂い
何もかもが入院してから
変わらない。

入院っていうのは
とても楽なイメージがあるが
過労が結構出るものだ…

友達とふざけて
階段を9段飛ばしした行いが
今来たのか…?


甲子園前になって
気を張らずに学校生活を
送っているから神様へのバツが
この入院に繋がる鍵だったり?

高校3年の最後の大会が
あるというのに

みんなは練習。
俺は入院。

「ふざけんなっ!!」

なんで俺だけなんだ。
他のメンバーをやったのに
俺だけ骨折とか有り得ないだろ!

すると隣のベットから
咳払いが聞こえる。

同じ病室の人なのに
もっとイライラが増してしまう。

別に同じ骨折原因でも
違うように捉えてしまって
余計に自分が情けなく思ってきた。

「外…出たいな」
けれど入院の原因となるのが
骨折だ。簡単には出れない


大きくため息をすると同時に
病室の扉が開く

また誰か入ってきなと思って
扉の方を見ると
俺より遥かに小さい男の子だった。

その子のことを
ずっと見てみると原因は
骨折でもない

喘息気味な男の子だと分かった。
息が苦しくなるのを見ていると
俺まで苦しくなってしまう

見て見ぬふりは
出来なくて気づいたら
自分から話かけに行っていた。

「よ…うボウズ!」
緊張で上手く喋れない…。

そうすると男の子は
「こんにち…は?」
疑問で返してくる
それが当たり前だ。

絶対相性が合わないことは
見た目でも分かるのだが

それが意外にも
趣味もあって
俺と似ている部分が沢山あったのだ

趣味は野球と言って
共通点を1つゲットした

けどやってみたいけど
喘息持ちには厳しい競技らしい

男の子は
「羨ましいです!」
「今度教えてください!」

俺は自慢げに答えた。
「全然いいぜ!」

俺の骨折は
案外軽いもので2週間もすれば
退院が可能だそうだ。

あのボウズに
別れを告げると

「僕の代わりにホームランね!」

おっと…幼い子の夢は
案外可愛らしいものだな

背中で語るように
何も言わず出ていった。  


新品同様なユニホームを着て
久しぶりに会う友人にも
大丈夫かと言葉を繋いだ。

最後の大会は
絶対ホームラン打って
あの男の子に伝えたいんだ。

『俺は諦めなかった』とね
さてグラウンドに立とう…!

空一面には
青い空と大きい雲のようなものが
広がっている。

俺はバットを握りしめて
心に決めたことを
叶えようと努力する!

打った瞬間にも
あの男の子は起きてるんだろうか
俺の事を差し置いて昼寝とかしてないよな
っと心の中で嘲笑う。

再び病院へ行くと
姿はない…

「退院かぁ!」
と、声をあげるけど誰もいない。

扉が開く
あの男の子だけども
顔に白い布が
覆いかぶさっている。

「おい…夢はいいのかよ!」
っと怒鳴るが男の子には聞こえていない。

俺の夢は叶ったが
男の子の夢が叶わず終わってしまった。

そうあの入道雲みたいに
大きく散るように…

6/29/2022, 1:44:23 PM