エリィ

Open App
4/14/2024, 1:38:43 PM

お題:神様へ

ありがとうございます でも
なぜ このような
ただの わたしのような
にんげんは なぜいきていたいと

かんがえて
しまうのでしょうか じんせいを
やめてしまいたいのに いままでいきて
しまいました
ますます このじんせいを うとましくおもいます
すみません おゆるしください

ですが
もしも

こんな わたしが
のうのうと
よのなかで 
にんげんとして

うみだされたことに
まったく いみのないことではないと
れっきとした にんげんとして
ただ いきていてもいいと
ことば
という かたちをとって
にんげんとして
はっきり あなたは ひつようだと

つらい じぶんを
かなしい じぶんを
れいぞうこみたいな ばしょにこもる さみしいじぶんを
まわりから かくれている じぶんを
しっかりと うけとめてくれる だれかに
ただ であえたら こんなわたしでも

どうにか
うまれてきたことを うけいれて
かみさまのことを うらまずに

やっていくことが できるでしょうか
すんだ こころで
まっすぐ じぶんを
せめることなく いきていけるように
てんからみまもって

くださいますか
だから どうか
さいごに おわらせるまで
いきていけますように

―――――

書いたとき疲れていたと思います。
休ませてください

4/9/2024, 12:24:09 PM

俺と兄が住んでいるマンションに、兄宛に荷物が配達された。匿名配送なので差出人はわからない。比較的大きくて軽いので、おそらく服だろう。
兄が、通販かフリマサイトを利用したのかもしれない。
そう思って、夕飯のときに兄に荷物が届いた話をした。
でも、心当たりはないらしい。

「とりあえず、開けてみるか」
兄は差出人不明の荷物の袋を大胆に破って中身を取り出した。
ピンクのレースをあしらった二つ折りのカードがひらりと落ちる。

「誰よりも、ずっとあなたを愛しています」

そう赤い文字で書かれたカードの筆跡は女のものだったが、兄にも俺にも心当たりはなかった。そんなカードも不気味だったが、中に入っていた手編みのセーターが、兄の好きな色、デザイン、サイズ全てにピッタリだったのが、なおのこと不気味だった。
いつも冷静沈着だと思っていた兄は、眉をひそめて顔をしかめると、パソコンに向かいキーボードを叩き出した。
犯人探しに取りかかったようだ。

その後、いろいろあって犯人が分かった。
俺と同じ大学の、学年も学部も全く違うおとなしそうな女の先輩だ。特にそんなことをするようには見えない。
同じ大学の俺はともかく、兄との全く接点がわからない。

後日、警察立ち会いのもと、話し合いがなされた。

「何故、こんな真似をしたんだ。君は何者なんだ」
兄は不思議そうにたずねた。

「私はあのとき、あなたに助けていただいたんです。他の誰よりも、ずっとあなたを愛してるんです」
女の先輩は泣きながら、地面にうずくまった。

話を聞くと、兄は土砂降りの中、傘を忘れていた上に道に迷ったこの女の先輩に傘をあげ、道案内をしてあげたらしい。
女の先輩は、最初は傘を返したい一心で住所を調べていたらしいのだが、そのうち兄の家に行けばもう一度会えるのではないかと思い詰め……ということだった。

お題:誰よりも、ずっと

4/7/2024, 1:15:37 PM

沈む夕日

夕日が沈み、濃紺へと変わる空にひときわ眩しく輝く一番星を見ながら、駅からバスに乗り換える。
郊外へ向かうバスの中は、私と同じように仕事を終えた人達で、いつもごった返している。
この時間はひときわ混むけど、早く家に帰りたい。
やすみたい。
だから、混んでいるのがわかってこのバスに乗る。

バスの中の人は降りていって、少しずつ減っていく。
座れるようになった帰りのバスに揺られて、私は再び窓から空を見た。

この沈む夕日の空と夜空へと変わる前の空。
この時間が好きだ。
境目は曖昧で、それでいて混ざり合うようで完全には混じり合わないふたつの空。

この時間は、特になんの意味もなく日々を過ごしている曖昧な私を包み込むようで、なんだか安心する。

なにか成功を目指して走らなければならないと思わせるほど輝く昼の太陽は、今の仕事に、生活に疲れた私には眩しい。
そうかと言って、夜になったから必ず身を休めて眠りに落ちなければならないと思わせる月の光が照らす夜空も、寝付けない私には、少し眩しくて落ち着けない。

だから、
どちらでもいい。
曖昧なままでいい。

そんな気になるこの時間は、私にとって癒やしの時間になる。

4/4/2024, 10:27:51 AM

それでいい

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も頑張りました
ゆっくり休みましょう

明日が来ないことを夢見てもいいです
それでも明日が来ることに
絶望してもいいのです
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も頑張りました
ゆっくり休みましょう

いつまでも続く明日に疲れても
それでも思いきれないあなたを
ここでは誰も
あなたを責めることが出来ません
ですから
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も一日頑張りました
ゆっくり休みましょう

さようならを言うには
少しだけ我慢してみてみませんか
ここでは誰かが
あなたをずっと待っています

信じられなくても
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も頑張りました。
ゆっくり休みましょう

あなたの流す涙が
あなたが綴ったことばが
今度は誰かをなぐさめるのかもしれません
ですから
理由もなく涙を流しても
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした。
あなたは今日も頑張りました。
ですから
ゆっくり休みましょう

9/5/2023, 12:40:46 PM

お題:貝殻


あの子が残したのは、たった一つの爪の先ほどの瓶に入った桜貝。
僕はそっと手のひらに乗せて。じっと眺めた。

海からやってきた、あの子が身につけていた、たった一つのアクセサリー。
本当なら、海に返してあげるべきなのだろう。
でも僕には出来そうもなかった。
この硝子の小瓶を手放してしまえば、僕と、あの子をつなぐものが消えてしまいそうで、とても、怖かった。
もう二度と会えないということを、受け入れなければならないということを。



あの子は海岸に流れ着いて来た。その美しさに一目で奪われてしまって、僕の家に連れ帰って看病をした。
あの子は最後まで言葉は話せなかったし、文字も書けないようだったし読める様子もなかった。何があったのかわからないけど、足も痛めているようだった。

そんなあの子はある日、僕が持ってきた王子様とお姫様の絵姿を見て目を輝かせると、お城に連れて行ってとしきりに身振り手振りをし始めた。
それだけで、あの子は王子様にあいたくて、海の果てから来たのだと分かってしまった。

たまたま僕の叔父さんがお城の庭師をしていたので、連れて行く事はできたけど。それから先はどうなったのかわからない。
久しぶりに遊びに来た叔父さんから、僕が連れてきたあの子を、いつの間にか城に召し上げる話になっていたから。
だから、僕があの子をもう一度見たのは。

王子の船が、隣国の姫との結婚式のために隣の国に旅立つのを見えなくなるまで、見送りの人々が誰もいなくなるまで、やがて満月が空に高く登っても水平線を見つめ続けていた。
そうして僕があの子に手を差し伸べようとしたその瞬間、あの子は海に飛び込み、僕の目の前で泡になって消えてしまった。
最後まで、あの子は僕を見なかった。


僕はそっと目を閉じ、あの硝子の小瓶をそっと撫でた。
おだやかな波の音が、僕の耳に届く。
しばらくそうしていたけれど、やがて僕は目を開いた。
今日はこんなに穏やかな夜の海だから。
本当は僕のところに残すつもりのなかった王子様への想いは、あの子とともに海に帰るべきなのだと。
長い時間をかけて僕はようやくそのことを受け入れると、硝子の小瓶を波打ち際にそっとおいた。
さざ波が、僕の想いとあの子の王子様へ届くことのなかった想いを、代わりに届けようとしているかのように、桜貝の入った小瓶を静かにさらっていった。




Next