エリィ

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4/7/2024, 1:15:37 PM

沈む夕日

夕日が沈み、濃紺へと変わる空にひときわ眩しく輝く一番星を見ながら、駅からバスに乗り換える。
郊外へ向かうバスの中は、私と同じように仕事を終えた人達で、いつもごった返している。
この時間はひときわ混むけど、早く家に帰りたい。
やすみたい。
だから、混んでいるのがわかってこのバスに乗る。

バスの中の人は降りていって、少しずつ減っていく。
座れるようになった帰りのバスに揺られて、私は再び窓から空を見た。

この沈む夕日の空と夜空へと変わる前の空。
この時間が好きだ。
境目は曖昧で、それでいて混ざり合うようで完全には混じり合わないふたつの空。

この時間は、特になんの意味もなく日々を過ごしている曖昧な私を包み込むようで、なんだか安心する。

なにか成功を目指して走らなければならないと思わせるほど輝く昼の太陽は、今の仕事に、生活に疲れた私には眩しい。
そうかと言って、夜になったから必ず身を休めて眠りに落ちなければならないと思わせる月の光が照らす夜空も、寝付けない私には、少し眩しくて落ち着けない。

だから、
どちらでもいい。
曖昧なままでいい。

そんな気になるこの時間は、私にとって癒やしの時間になる。

4/4/2024, 10:27:51 AM

それでいい

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も頑張りました
ゆっくり休みましょう

明日が来ないことを夢見てもいいです
それでも明日が来ることに
絶望してもいいのです
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も頑張りました
ゆっくり休みましょう

いつまでも続く明日に疲れても
それでも思いきれないあなたを
ここでは誰も
あなたを責めることが出来ません
ですから
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も一日頑張りました
ゆっくり休みましょう

さようならを言うには
少しだけ我慢してみてみませんか
ここでは誰かが
あなたをずっと待っています

信じられなくても
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした
あなたは今日も頑張りました。
ゆっくり休みましょう

あなたの流す涙が
あなたが綴ったことばが
今度は誰かをなぐさめるのかもしれません
ですから
理由もなく涙を流しても
それでいいのです

今日も一日お疲れ様でした。
あなたは今日も頑張りました。
ですから
ゆっくり休みましょう

9/5/2023, 12:40:46 PM

お題:貝殻


あの子が残したのは、たった一つの爪の先ほどの瓶に入った桜貝。
僕はそっと手のひらに乗せて。じっと眺めた。

海からやってきた、あの子が身につけていた、たった一つのアクセサリー。
本当なら、海に返してあげるべきなのだろう。
でも僕には出来そうもなかった。
この硝子の小瓶を手放してしまえば、僕と、あの子をつなぐものが消えてしまいそうで、とても、怖かった。
もう二度と会えないということを、受け入れなければならないということを。



あの子は海岸に流れ着いて来た。その美しさに一目で奪われてしまって、僕の家に連れ帰って看病をした。
あの子は最後まで言葉は話せなかったし、文字も書けないようだったし読める様子もなかった。何があったのかわからないけど、足も痛めているようだった。

そんなあの子はある日、僕が持ってきた王子様とお姫様の絵姿を見て目を輝かせると、お城に連れて行ってとしきりに身振り手振りをし始めた。
それだけで、あの子は王子様にあいたくて、海の果てから来たのだと分かってしまった。

たまたま僕の叔父さんがお城の庭師をしていたので、連れて行く事はできたけど。それから先はどうなったのかわからない。
久しぶりに遊びに来た叔父さんから、僕が連れてきたあの子を、いつの間にか城に召し上げる話になっていたから。
だから、僕があの子をもう一度見たのは。

王子の船が、隣国の姫との結婚式のために隣の国に旅立つのを見えなくなるまで、見送りの人々が誰もいなくなるまで、やがて満月が空に高く登っても水平線を見つめ続けていた。
そうして僕があの子に手を差し伸べようとしたその瞬間、あの子は海に飛び込み、僕の目の前で泡になって消えてしまった。
最後まで、あの子は僕を見なかった。


僕はそっと目を閉じ、あの硝子の小瓶をそっと撫でた。
おだやかな波の音が、僕の耳に届く。
しばらくそうしていたけれど、やがて僕は目を開いた。
今日はこんなに穏やかな夜の海だから。
本当は僕のところに残すつもりのなかった王子様への想いは、あの子とともに海に帰るべきなのだと。
長い時間をかけて僕はようやくそのことを受け入れると、硝子の小瓶を波打ち際にそっとおいた。
さざ波が、僕の想いとあの子の王子様へ届くことのなかった想いを、代わりに届けようとしているかのように、桜貝の入った小瓶を静かにさらっていった。




7/20/2023, 10:08:50 AM

擬人化注意

視線の先にはいつも、あなたがいました。
あなたをめで追い出してから、もう何年になるでしょう。
初めてあなたと出会ったのは、忘れもしない7年前の夏でした。
あるお店にふらりと立ち寄った私は、そこであなたの姿を見かけました。最初はただ、他の型と並んでいただけなのに、あなたはただそこにいただけなのに、私はあなたの佇まいに目が吸い寄せられました。そしていつの間にかあなたを手を取り、熱い眼差しを注いだのです。
それが、あなたとの最初の出会いでした。

あなたと出会ってから、私の人生はガラリと変わりました。かつて付き合っていた、私のかつての相棒では満たされないものを、あなたは私に与えてくれました。

あなたを守るために、私は防護をするという名であなたの真の姿を表に出すようなことをしません。あなたというとても繊細な存在を守るためなら、私はいくらでもあなたに貢ぎました。そう、いくらでも。
あなたの為なら、誰がなんと言おうと私は食費を削ってでもあなたとともにいることを選びます。

そして、私はあなたの姿を日々追いかけるようになりました。
あなたが、私の目の見えるところにいないと不安でどうしようもなくなってしまい、いつもあなたを探しています。

そうして、私はあなたをずっと捕まえて話さないのです。
でも、自分は平気で長電話をします。
あなたには傍を離れることを許さないにも関わらず、自分は平気であなたから離れ、ある日はあなたを鎖で繋いだまま眠ります。

そして、あなたの声で目を覚まし、1日が始まるのです。
私はあなたの表面を愛撫して、アラームを止めるとベッドからモゾモゾとあなた―充電の終わったスマホ―を取り出すのでした。

お題 視線の先には

7/13/2023, 8:34:23 AM

これまでずっと
…しばらくお休みします

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