結之志希

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10/24/2023, 2:01:11 AM

『どこまでも続く青い空』


「大丈夫だよ。どんなに遠く離れたって、私達は同じ空の下にいるんだ」


 君は涙を浮かべながら笑う。
 自分に言い聞かせるように、どこまでも続く青い空を指さして。


「寂しくなったら、空を見よう?私はいつだって、この空の下にいるから」


 涙を振り切って、にっこりと笑う君は、僕が恋に落ちた時と同じ。
 世界でいちばん素敵な笑顔をしていた。

10/20/2023, 9:34:50 PM

『始まりはいつも』


 ビュゥ、と吹く風に髪が攫われる。
 今日は高校生活最初の日。
 はためくスカートを押さえて、私は目の前の校門を見上げた。

 私の父と母は、幼い頃に亡くなった。
 それ以降、全く寂しくなかったと言えば嘘になる。
 けれど、私は両親がいつも、空から私を見守ってくれていると信じている。

 だって、落ち込んだ時、涙を流した時、嬉しいことがあった時。
 私の周りでは、いつも風が吹いていた。
 両親が、頑張れって励ましてくれているように。
 大丈夫だよって、抱き締めてくれているように。
 よかったねって、共に喜んでくれているように。

 そして、何かを始める時も、背中を押す風が吹いていた。
 今日のように。


「お父さん、お母さん。私、頑張るよ」


 誰にも聞こえないように、小さく呟いて、私は校門を潜り抜けた。
 ビュゥ、とまた風が吹く。
 私は笑って顔を上げた。

10/17/2023, 11:45:05 PM

『忘れたくても忘れられない』


 この体に、鮮烈に刻み込まれたあの感覚、あの興奮。
 限界なんて見えなくて、どこまででも力を奮えそうで、私はあの時、自由だった。
 忘れたくても、忘れられないの。

 だから、何年経っても追い求める。
 何十年経っても追い求める。
 体が老いて、思う通りに動けなくなっても。
 私が一番自由だったあの瞬間を再び味わえるように、限界に挑戦し続ける。

 私ならできるわ。
 だって、私は……最高の作家だから。

10/17/2023, 12:23:06 AM

『やわらかな光』


 ぽかぽかした部屋に寝転がって。
 窓から吹き入る風を感じて。
 やわらかな光に染まったレースカーテンを。
 光の道ができた白い天井を見る時。

 私はじんわりと、「あぁ、幸せだな」って思うんだ。

10/16/2023, 8:28:02 AM

『鋭い眼差し』


「貴方を逮捕します」


 逃亡、抵抗、その一切を許さない鋭い眼差しが僕を貫く。
 恐怖からだろうか、体がゾクッと震えた。
 それと同時に、涙も込み上げてきた。


「泣いても無駄よ。罪を犯したことを後悔しなさい」

「違うんです……」


 捕まることに、涙しているんじゃない。
 こんな人生なんか、終わったっていい。
 牢獄に入って台無しになるほど、僕の人生は素敵なものじゃなかったんだから。


「刑事さん、僕の話を聞いてくれませんか……?」

「戯言なら聞かないわ。逃げるチャンスができると思わない事ね」

「貴女から逃げるつもりなんてありません……ただ、聞いてもらいたいんです。ずっと無視されてきた、僕の気持ちを……」


 こんなに真っ直ぐ僕を見つめてくれる人なんて、今までいなかった。
 きっと、貴女なら僕の話を聞いてくれる。

 ずっと、誰かに聞いてもらいたかった、僕の心の叫び。
 それを、取り調べ室で貴女に話そう。

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