『鋭い眼差し』
「貴方を逮捕します」
逃亡、抵抗、その一切を許さない鋭い眼差しが僕を貫く。
恐怖からだろうか、体がゾクッと震えた。
それと同時に、涙も込み上げてきた。
「泣いても無駄よ。罪を犯したことを後悔しなさい」
「違うんです……」
捕まることに、涙しているんじゃない。
こんな人生なんか、終わったっていい。
牢獄に入って台無しになるほど、僕の人生は素敵なものじゃなかったんだから。
「刑事さん、僕の話を聞いてくれませんか……?」
「戯言なら聞かないわ。逃げるチャンスができると思わない事ね」
「貴女から逃げるつもりなんてありません……ただ、聞いてもらいたいんです。ずっと無視されてきた、僕の気持ちを……」
こんなに真っ直ぐ僕を見つめてくれる人なんて、今までいなかった。
きっと、貴女なら僕の話を聞いてくれる。
ずっと、誰かに聞いてもらいたかった、僕の心の叫び。
それを、取り調べ室で貴女に話そう。
10/16/2023, 8:28:02 AM