『始まりはいつも』
ビュゥ、と吹く風に髪が攫われる。
今日は高校生活最初の日。
はためくスカートを押さえて、私は目の前の校門を見上げた。
私の父と母は、幼い頃に亡くなった。
それ以降、全く寂しくなかったと言えば嘘になる。
けれど、私は両親がいつも、空から私を見守ってくれていると信じている。
だって、落ち込んだ時、涙を流した時、嬉しいことがあった時。
私の周りでは、いつも風が吹いていた。
両親が、頑張れって励ましてくれているように。
大丈夫だよって、抱き締めてくれているように。
よかったねって、共に喜んでくれているように。
そして、何かを始める時も、背中を押す風が吹いていた。
今日のように。
「お父さん、お母さん。私、頑張るよ」
誰にも聞こえないように、小さく呟いて、私は校門を潜り抜けた。
ビュゥ、とまた風が吹く。
私は笑って顔を上げた。
10/20/2023, 9:34:50 PM