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3/12/2024, 3:44:49 AM

業務が最繁忙期を迎えている。連日午前様帰り。
労働基準法にインターバル制度ってなかったけ?勉強したはずなんだけれど。
お風呂でゆっくりする時間もなく、シャワーで過ごして、何よりも食事と睡眠時間をとることを最優先に体調管理を行う。
平穏な日常とは程遠い。
締切が決まっている仕事なのでまだやれる、頑張れる。
もう一踏ん張りだ。
あ、でも。もう一踏ん張り、と思えるうちは、まだ「平穏」なのかもしれない。

3/5/2024, 11:46:32 PM

「元気してる?たまには、飲みにいこーよ!いつ空いてる?」

なんて文面そのままに、軽い気持ちで声掛けたい。
返事来るかな?忘れられてないかな?
そもそも迷惑…?
時間、遅過ぎてない?木曜で大丈夫??---って。

結構緊張してるんだよ、実は。
たまには、そっちから誘って欲しいんだよ。
言わないけどね。

3/4/2024, 7:13:16 AM

早番の私は入居者の昼食介助を終えると納戸に向かった。普段はビニール手袋等の在庫補充のためだが今日は違う。納戸の奥のクリスマスツリーの隣にある段ボール3箱を運ぶためだ。取扱注意と書かれた見た目ほど重くない段ボール。その中には雛人形が入っている。7段の、本格的なやつが。
日勤の城田さんと、数ヶ月前クリスマスツリーが飾ってあった和室の一角で飾り付けが始まる。さて、どこから手をつけるのだったかと軽く逡巡する私の横で「この前のツリーも私たちでしたよねぇ」とか言いながら、城田さんは長い段ボールを開けた。ステンレス(?)の古めかしい色した骨組みが顔を出す。この色、去年と変わりないなとか思いながら手を取る私の横で、慣れた手つきで組み立てていく城田さん。テキパキ具合に、これが若さか、と検討違いな賞賛を送る。
赤い布で骨組みを隠し上から画鋲で止めれば、この時点でお雛様が見えてくる。何も並んでいないにも関わらず、だ。
見慣れた男雛・女雛、ひなまつりの歌でしか覚えのない三人官女や五人囃子、歌ですら覚えのないおじさん達を取り出し、顔を覆ってる白い紙をとり、帽子を被せ、太鼓なんかを持たせていく。
雛人形は顔が違うって聞いているけど、左大臣のおじいさん以外は真っ白い顔をしていて、よく見ても皆んな同じに見えた。よく見なくてもポーズが違うことはわかった。並び順なんかわかるはずも無いので、昨年の写真を参考に並べていく。
下段の方の嫁入り道具を並べる城田さんと「城田さんなら茶道具とかどこに並べるかすぐわかりそう!」「まさか!無理です」「覚えられませんよね」「ね〜むり〜」って話しながら。

入居者のおじいちゃんおばあちゃんは何人かが居間に残り、私たちの飾り付ける雛人形を「かわいいねぇ〜〜」なんて言いながら見ていた。私たちが可愛いわけではない。わかっているがあえて言っておく。
最後に屏風を飾り付け、ぼんぼりのスイッチを入れる。
「素敵ねぇ」と歓声があがった。

ひなまつりの当日は、桜もちを刻んでおやつとして出して、ひなまつりをみんなで歌い、Vサインの娘さんと入居のおじいちゃんのニコニコを写真におさめた。あぁ、女の子のお祭りとかいうけど、歳とると関係ないなぁと温かい気持ちになった。

温度も湿度も保たれた快適な室内。
一定で変化の少ない私の職場に、春の訪れと彩りと笑顔をくれる。
それが大人になった私の「ひなまつり」

3/1/2024, 9:13:40 AM

夏休みになると飛行機で祖母の家に行っていた。のだが、ある日私は「列車で行きたい!」と伝えた。突然の要望に「どうしたの?」と母は当然の質問を向ける。私は目を爛々と輝かせ答えた。
「青函トンネルに行きたい!」
青森と函館を結ぶ、世界最長の海底トンネル。そんなトンネルがあるのをテレビで知り、どうしても行きたくなっていた。母の嫌がる素ぶりを確認しつつも説得を頑張り初体験の切符を手に入れた。

スケジュールの都合で父だけ飛行機で、母と妹と駅に向かった。特急カシオペアに乗り込む。初の寝台列車に感動した。見知ったと言うほどでもないが、いつもの駅を出発して列車は進む。街、建物、川、木、ビル、駅、木、川、木、色々を、通り過ぎながら。無駄にベッドで横になったり、食事をしながら過ごす。
待ちに待った、青函トンネル。
行けども行けども、トンネルの壁。黒、ではない、よく見るトンネルの壁。行けども行けども壁。
私は----がっかりした。
海底トンネルと聞いて、水族館のアクアトンネルを想像していたのだ。いつかそんな景色が広がるのではないかと粘ってみたが何も変わることはなかった。夢でアクアトンネルを楽しんだ。

終着駅に到着する。こんなはずではなかったと思いつつ、自分から言い出した手前そんな事も言えない複雑な顔をした私に、母が尋ねた。
「楽しかった?」
「次は船で行ってみたい」
「船かぁ…」
母は私以上に複雑な顔を浮かべた。


「列車に乗って」

2/29/2024, 9:16:52 AM

「遠くの街へ」
普通列車で駅5つ・車で30分の遠くの街へ遊びに行った。


一年生になったら、友達100人できるかな、なんて歌っていたのが数週間前。
100人の1人目…だったとは思わないけど、何人目かの友達に、ゆうきちゃんが居た。

ゆうきちゃんは、名前が男か女かわからないって言いながら笑う、その頃珍しいショートカットの、かけっこと漫画の好きな、ありていに言えば言えばボーイッシュな女の子だった。
そして、同じようにボーイッシュな私の一番の友達だった。
一番仲のいいともだちと宣言して、髪型も真似してショートにして、どこに行くのも何するのも一緒だった。

ゆうきちゃんが、1年経った時に「隣町」に引っ越すことになった。
家と
学校と
学童保育所と
プールの為に行くとなりの学校と
近くの小さな公園と
遠くの大きな公園と
同じ町のおばあちゃん・おじちゃん家しか
知らなかった私にとって、「隣町」は本当に遠くて。
テレビに映っている外国と同じように思っていたと思う。

サイン帳を渡し泣きながら「ぜったい遊びにいくからね」と言ってお別れ。
ゆうきちゃんは隣町に引っ越し、転校して行った。


子供の約束のぜったいは、3カ月くらいしてあっさりやってきた。
親が車で連れてゆうきちゃんの引越し先に連れて行ってくれた。

ゆうきちゃんに聞いた住所におでかけ。
幹線道路を走り、近くなったら地図を広げて番地確認。
たどり着いた2階建てのお家。
ゆうきちゃんは相変わらずショートでかっこよくて、
2階の一人部屋に案内してくれて、
漫画の新刊が増えていて、
色々お話して、
ケーキを一緒に食べた。
新しい学校の友達の話に寂しさを覚えた。


普通列車で駅5つ・車で30分のとおいとおい町を通り過ぎて、
近くの街に遊びに行く。

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