「遠くの街へ」
普通列車で駅5つ・車で30分の遠くの街へ遊びに行った。
一年生になったら、友達100人できるかな、なんて歌っていたのが数週間前。
100人の1人目…だったとは思わないけど、何人目かの友達に、ゆうきちゃんが居た。
ゆうきちゃんは、名前が男か女かわからないって言いながら笑う、その頃珍しいショートカットの、かけっこと漫画の好きな、ありていに言えば言えばボーイッシュな女の子だった。
そして、同じようにボーイッシュな私の一番の友達だった。
一番仲のいいともだちと宣言して、髪型も真似してショートにして、どこに行くのも何するのも一緒だった。
ゆうきちゃんが、1年経った時に「隣町」に引っ越すことになった。
家と
学校と
学童保育所と
プールの為に行くとなりの学校と
近くの小さな公園と
遠くの大きな公園と
同じ町のおばあちゃん・おじちゃん家しか
知らなかった私にとって、「隣町」は本当に遠くて。
テレビに映っている外国と同じように思っていたと思う。
サイン帳を渡し泣きながら「ぜったい遊びにいくからね」と言ってお別れ。
ゆうきちゃんは隣町に引っ越し、転校して行った。
子供の約束のぜったいは、3カ月くらいしてあっさりやってきた。
親が車で連れてゆうきちゃんの引越し先に連れて行ってくれた。
ゆうきちゃんに聞いた住所におでかけ。
幹線道路を走り、近くなったら地図を広げて番地確認。
たどり着いた2階建てのお家。
ゆうきちゃんは相変わらずショートでかっこよくて、
2階の一人部屋に案内してくれて、
漫画の新刊が増えていて、
色々お話して、
ケーキを一緒に食べた。
新しい学校の友達の話に寂しさを覚えた。
普通列車で駅5つ・車で30分のとおいとおい町を通り過ぎて、
近くの街に遊びに行く。
2/29/2024, 9:16:52 AM