✝しがない高校生✝

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11/27/2023, 11:43:10 AM

愛情

────ガタンゴトン…ガタンゴトン…

大きく揺れながら移動する列車の中。
風が冷たく空は灰色をしていた。

あぁ、思い出してしまう。

一年前の今日の出来事を───

今日は君の誕生日だ。
仕事を早めに終わらせて今まで
ゆっくり出来なかった分お祝いをしようと
ワクワクしながら家の鍵を開ける。

誕生日プレゼントを隠そうと
周りを見回した時、机に何かが置いてあることに
気づいた僕は訳が分からずに慌てた。

「もう一緒に居られない」
と置き手紙と婚約指輪が置いてあったのだ。

お互い仕事ですれ違いを繰り返して
幸せを感じることも少なくなったけれど
こんな終わり方は嫌だと
雨の中、足掻くように君を探した。

嫌だよ…戻ってきてくれ…
願っても君は何処にも見つからなかった。


〇〇駅 〇〇駅 お降りの際は────

目的地に着いた僕は手紙を取り出す。
明るい空色に淡い桃色のコスモスの封筒に
何度も書き直した跡が残ってる手紙用紙。

そこには今、君が住んでいる場所や
一年前の出来事についての謝罪が
書かれていた。

僕は直接会って話し合いをしようと
君の居る街に向かった。

けれど緊張もするし、やっぱり辞めようと思うし
まだ君が好きなんだという気持ちが混ざって胸が締め付ける。

この街は君が好きだった花や
付き合っていた頃によく食べていた料理。
君の好きなものがあちらこちらに詰まっていて
歩く度に彼女を思い出させるようで…

落ち着こうと近くにあったカフェに寄り
君と一緒に飲んでいた珈琲を注文した。

スケサ…ンデミテ…

後ろの席から話し声が聞こえる。
こっそり聞き耳立てみると、

「祐介さん!これ美味しいわよ、飲んでみてっ!」
「これこれ、紗良ちゃん、声が大きいよぉ~笑」

聞き覚えのある声、はしゃいでるような話し方も
信じたくなかったけれど
あの日の…置き手紙の理由が分かった。

珈琲が届いては急いで飲みその場を去った僕は
涙と共に変わらない君への愛を想う。

そうか…君は幸せなんだね、
もう僕は必要無い、
僕は君が幸せならそれでいい。

美味しかったはずの珈琲は
今はただ苦いだけ…

「今までありがとう、お幸せに」

11/26/2023, 11:51:01 AM

微熱

───3泊4日の修学旅行。

今日は京都で八ツ橋工場を見学する予定がある。
ガタンガタンと揺れるバスの中で僕は考え事をしていた。

独りぼっちだし友達1人も居ない、
先生に誰かと班を組めって言われても
引き籠もりだった僕にはハードルが高すぎる。

お降りの際は、バスが止まってから────

アナウンスが聞こえバスを降り
僕たちは八ツ橋工場へ移動した。

工場で働く人の話を長々と聞いては
見学するために班を組むことになった。

「ど、どうしよう…」

不安でたまらなかった僕は
仮病を使おうかな…と迷っていた時、
後ろから透き通ったような声が聞こえた。

「ねぇ、良かったら私と班組まない?」

「え…いや、あっ、、えっと…ごめん!」

まさか声をかけられるなんて…
しかも僕が気になってる女の子。

前に教室の掃除をサボってる人達の代わりに
綺麗に丁寧に掃除をしているのを見た時から
教室で視線を追うようになって…

君に恋した女の子と話せる機会なんて無いのに
僕はドキドキして思わず逃げてしまった。

仮病を使い、見学を休んでしまった僕は
逃げてしまった罪悪感と
誘おうとしてくれた彼女の気持ちが嬉しくて
ちょっとだけ、にやけた。

───数十分後、彼女の班が見学が終わり
休憩時間になった。

「大丈夫?具合悪かったんだね、誘ってごめん!」

振り向くと君が不安そうにしていた。
仮病を使って休んだので心配されたけれど
勇気を出して今度こそ…と返事をした。

「あ、ありがとう!」

君は綺麗な笑顔をして僕の頭に触れた。

この時初めて勇気を出す事が
こんなに嬉しいなんて知った。
それと同時に彼女の手に触れたからか
僕の顔は熱くなっていた。

これは微熱だ、照れてない。
そう自分に言い聞かせた。

───これは微熱だと願って。


11/25/2023, 11:20:23 AM

太陽の下で

───激しい雷雨が明けた翌日。
眩い太陽が灰色の雲から顔を覗かせている。

「ねぇ、何を作ってるの?」

台所からふわっと甘い香りと
野菜たちの香ばしい香りがして
僕は何を作ってるのか気になった。

少し覗いてみると僕の大好物の
野菜炒めとアップルパイをお弁当箱に
詰めたものが机に並んでいた。

「あなた、今日は天気もいいのよ」

君は嬉しそうに三人分のおかずを
お弁当箱に詰めながら口ずさむ。

僕は部屋に引きこもっている祐樹を誘おうと
少しぎこちない笑顔で

「祐樹、良かったら外でご飯を食べないか?」

祐樹はしばらく黙ってから口を開いた。

「……分かった」

少しそっけない返事。
だけれど僕は嬉しいような緊張するような…
そんな気持ちになった。

時間を気にしては支度を済ませ、
車に乗り目的地に向かう。

────目的地に着き
風通しのいい草原で敷物を取り出した。
朝から張り切って作ったお弁当箱と
温かい紅茶を用意し、手を合わせる。

「いただきます」

サンドイッチに色々な具のおにぎり、
僕の大好物の野菜炒めに
前に祐樹が美味しいと言ってた卵焼き。

会話は少ないけれど
川の流れる水音や鳥の鳴き声
自然で溢れてて心地よかった。

無理もないよな…焦らずに仲良くなろう、、
と祐樹の様子を疑いながら
眩い空を眺めていると、

「と、父さん、これ美味いから…食べてみて…」

祐樹は小さい声で照れくさそうに言った。
君は安心したような表情でふふっと微笑んだ。

僕は嬉しくて涙が零れそうになるのを堪え
食べかけの甘い卵焼きを口に入れた。

「うん、、うん、、とても美味しいよ!」

───すぐに仲良くなることは難しいけれど
心を開いてくれるまでそう遠くはないかな。

11/24/2023, 10:59:06 AM

セーター

──ホーホケキョホーホケキョ

カーテンの隙間から差し込む光と
聞き慣れない鳥のさえずりで
ふと目が覚めた。

「んー…よく寝た。もうこんな季節かぁ」

朝から多く走ってる車
遠くから聴こえるウグイスの鳴き声
窓から眺めていては増えていく人々。

今日は気温は低いけど日差しが暖かい。
10年ぶりに会う約束をしたお友達と
ちょっと小さいけれどお洒落な店へ
手作りのスイーツを買いに行く。

遠足に行く前日の子供のように
どこに行こうか?何を着ていこうか?
とワクワクな気持ちと10年ぶりに
お友達と会うのでちょっぴり不安もある。

この日に着ようと決めていた
私の大好きな色、薄ピンク色のセーターと
丁寧に三つ編みしてから
ポニーテールと組み合わせて、
日が差しているのでお気に入りの帽子。

10年前のアルバムを眺めながらコーヒーを飲んでは
どんな大人になったのか期待を膨らませ
小走りで玄関を出た。

切符を購入しバスに乗り
待ち合わせ場所に移動する。

待ち合わせ場所に着き、
久しぶりにお友達と顔を合わせた私。

「ゆーちゃん久しぶり!
え、もしかして……笑?」

私とお友達は声に出して笑った。
だって、本当に仲良しだと思えたから。

──このセーターは二人のお気に入り。
何年経ってもこの思い出は
ずっとずっと心に残り続ける。

11/23/2023, 10:34:44 AM

落ちていく.1

───辛いよ、苦しいよ、、

生きていれば悩みは数えきれないほどに
どんどん大きくなっていく。

普段はいつものように笑ったり騒いだりするけれど
陰で泣いたりイライラしたりもする。

どれだけ頑張っていても
結果が悪ければ見下される。

逆に結果が良ければ
期待でプレッシャーが大きくなる。

悩みから抜け出すのは難しい、
長く頑張り続けるのも根性が要る。

1年、10年と何年も繰り返し努力したら
なんて馬鹿みたいな考えだけれど

でも実際に報われた人達がいる。
きっと、、きっと大丈夫だよ。

頑張らないと、やらないとって
無理して考えなくてもいい。

その人達を思いながら
今日も一日を過ごしていく──。





落ちていく.2

────ゆらりゆらり…。

もう十分 十分だよ。
貴方は掠れた声で呟く…

世界一大切なのに
生きる理由なのに

僕は何をしてあげれたら
君はもっと幸せだった?

───その灯火がふっと消えた。

僕の瞳から涙が零れ
君の頬に溶けた。

ゆっくりゆっくりと
深い眠りに落ちていく。

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