✝しがない高校生✝

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微熱

───3泊4日の修学旅行。

今日は京都で八ツ橋工場を見学する予定がある。
ガタンガタンと揺れるバスの中で僕は考え事をしていた。

独りぼっちだし友達1人も居ない、
先生に誰かと班を組めって言われても
引き籠もりだった僕にはハードルが高すぎる。

お降りの際は、バスが止まってから────

アナウンスが聞こえバスを降り
僕たちは八ツ橋工場へ移動した。

工場で働く人の話を長々と聞いては
見学するために班を組むことになった。

「ど、どうしよう…」

不安でたまらなかった僕は
仮病を使おうかな…と迷っていた時、
後ろから透き通ったような声が聞こえた。

「ねぇ、良かったら私と班組まない?」

「え…いや、あっ、、えっと…ごめん!」

まさか声をかけられるなんて…
しかも僕が気になってる女の子。

前に教室の掃除をサボってる人達の代わりに
綺麗に丁寧に掃除をしているのを見た時から
教室で視線を追うようになって…

君に恋した女の子と話せる機会なんて無いのに
僕はドキドキして思わず逃げてしまった。

仮病を使い、見学を休んでしまった僕は
逃げてしまった罪悪感と
誘おうとしてくれた彼女の気持ちが嬉しくて
ちょっとだけ、にやけた。

───数十分後、彼女の班が見学が終わり
休憩時間になった。

「大丈夫?具合悪かったんだね、誘ってごめん!」

振り向くと君が不安そうにしていた。
仮病を使って休んだので心配されたけれど
勇気を出して今度こそ…と返事をした。

「あ、ありがとう!」

君は綺麗な笑顔をして僕の頭に触れた。

この時初めて勇気を出す事が
こんなに嬉しいなんて知った。
それと同時に彼女の手に触れたからか
僕の顔は熱くなっていた。

これは微熱だ、照れてない。
そう自分に言い聞かせた。

───これは微熱だと願って。


11/26/2023, 11:51:01 AM