✝しがない高校生✝

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愛情

────ガタンゴトン…ガタンゴトン…

大きく揺れながら移動する列車の中。
風が冷たく空は灰色をしていた。

あぁ、思い出してしまう。

一年前の今日の出来事を───

今日は君の誕生日だ。
仕事を早めに終わらせて今まで
ゆっくり出来なかった分お祝いをしようと
ワクワクしながら家の鍵を開ける。

誕生日プレゼントを隠そうと
周りを見回した時、机に何かが置いてあることに
気づいた僕は訳が分からずに慌てた。

「もう一緒に居られない」
と置き手紙と婚約指輪が置いてあったのだ。

お互い仕事ですれ違いを繰り返して
幸せを感じることも少なくなったけれど
こんな終わり方は嫌だと
雨の中、足掻くように君を探した。

嫌だよ…戻ってきてくれ…
願っても君は何処にも見つからなかった。


〇〇駅 〇〇駅 お降りの際は────

目的地に着いた僕は手紙を取り出す。
明るい空色に淡い桃色のコスモスの封筒に
何度も書き直した跡が残ってる手紙用紙。

そこには今、君が住んでいる場所や
一年前の出来事についての謝罪が
書かれていた。

僕は直接会って話し合いをしようと
君の居る街に向かった。

けれど緊張もするし、やっぱり辞めようと思うし
まだ君が好きなんだという気持ちが混ざって胸が締め付ける。

この街は君が好きだった花や
付き合っていた頃によく食べていた料理。
君の好きなものがあちらこちらに詰まっていて
歩く度に彼女を思い出させるようで…

落ち着こうと近くにあったカフェに寄り
君と一緒に飲んでいた珈琲を注文した。

スケサ…ンデミテ…

後ろの席から話し声が聞こえる。
こっそり聞き耳立てみると、

「祐介さん!これ美味しいわよ、飲んでみてっ!」
「これこれ、紗良ちゃん、声が大きいよぉ~笑」

聞き覚えのある声、はしゃいでるような話し方も
信じたくなかったけれど
あの日の…置き手紙の理由が分かった。

珈琲が届いては急いで飲みその場を去った僕は
涙と共に変わらない君への愛を想う。

そうか…君は幸せなんだね、
もう僕は必要無い、
僕は君が幸せならそれでいい。

美味しかったはずの珈琲は
今はただ苦いだけ…

「今までありがとう、お幸せに」

11/27/2023, 11:43:10 AM