桑名仁

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4/26/2024, 11:05:43 AM

善悪は誰が判断するのか?

その行為は善だという人間が居ても、もう一方の人間は悪だと言う。どちらの主張も間違っていない。それぞれの正義がある。ただ、それだけのことなのだと。
どちらが正解かなんて、決められない。

4/25/2024, 12:52:16 PM


夜空に煌めく星を見つめていると、自分がどれだけちっぽけな存在なのかを思い知らされる。星は何年も前のものが見えているんだと、どこかのラジオで聞いた。

いま見えている星はもうすでに存在していないのかもしれない。消失していたとしても、それに気付くのは何百年もあとの話。ずっとあなたの姿が目の奥にこびりついて離れないが、それは星と同じなのかもしれない。
すでに居なくなっていることにまだ気付いていないだけなのか。

もう一度、会いたいな。

流れ星に祈ろうと思っても、たったひとつしかない陳腐な願いしか出てこなかった。

4/22/2024, 1:19:49 PM


テレビニュースで連日報道されている事件を見て、あなたが光のある方へ進めたのだと思った。 ゆっくりと一歩ずつでも、進めていて、よかった。あなたが姿を消してから、ずっとあなたのことだけを考えていた。ご飯は喉を通らないし、微かな物音でさえもあなたかもしれないと目を覚ましてしまう。ぐるぐると脳裏を駆け巡るあなたの顔は、いつだってつらそうだった。

幸せになれないあなたに、幸せになってほしいと思っているわけではない。あなたは幸せになってはいけないから。それだけは紛れもない事実だ。でも、不幸でいるべきではない。不幸でいてほしくはなかった。己を責め続けてほしくなかった。

私はあなたのように"自分"を貫けない。強い意志なんてない。呪われてもいない。でもあなたと出会って、私にもやり遂げたい信念が生まれた。

たとえ間違いだったとしても、私だけはあなたを肯定し続けること。

あなたの行為に善悪なんてつけられない。その行動で救われた人間は居るのだから。でも反対に失われた命もある。誰かが救われる裏には誰かが犠牲になっている。
そういう風に出来てしまっているこの世界の仕組みが理不尽なのだ。それでもあなたに出来る最良の選択をしているし、何も間違えてはいないと私だけは声を上げ続けたい。それがあなたのなかのほんのひとつだけでも、救っていたらいいなって、思うんだ。

4/21/2024, 2:37:47 PM

泣いていた。一切涙を見せたことのない彼が、ズビズビと鼻を鳴らしながら幼子のように泣いている。

元国語教師で、口がよく回る彼に何度も泣かされてきたのはこちらの方だった。だから、初めて見るそんな彼の姿に呆気に取られ、言葉に詰まっていると

「……たとえ歪んでいたとしても、おれは、おれの正義を全うしたい」

嗚咽を挟みながらもゆっくりと言葉を紡ぐ彼。

「誰かに理解してもらおうなんて思っていなかった。でも……なんでだろうな、お前に分かってもらえないのは、何故だかつらいんだ」

俯いていた顔がこちらを捉える。目と目が合い、重力に従った雫がぽたりと彼の頬から落ちていく。まるでスローモーションになったかのように、その雫の行方を追いかけた。

点と落ちて、小さな水たまりができた。しばらく手入れのされていないボロボロでくたくたな茶色のブーツ。それはまるで彼の心みたいだと思ったし、彼はずっと自分以外のために生きているんだと理解した。


私には言えない、言いたくない秘密を抱えて、葛藤しながら毎日を生きてきたんだ。私がなんにも考えずにケタケタ笑っている時も、彼の心の底では複雑に絡み合った感情がぐるぐる渦巻いて、今にも飲み込まれそうだったんだろうな。


「おれは、お前がいないと生きていけないんだって、気付いたよ」

情けない話だ、と鼻を赤らめながら滲ませた瞳でそう言った。


情けないのはこっちだ。愛おしい人のことをなんにも分かっていなかった私のほうだ。ぐっと唇を噛み締めて、勢いをつけて彼の胸元へ飛び込んだ。抱きつけば、自然と彼は受け止めてくれる。その"慣れ"には二人の過ごしてきた時間と経験と優しさと情が溢れていた。今更手放すことなんて、できない。


「幸せにはしてやんないけど、ずっと一緒には居てあげるから」

私はへらりと微笑んで、力いっぱい抱きしめた。

4/20/2024, 11:35:40 AM

幸せなとき、人は笑う。多くの人間にとってそれが当たり前だ。なのにあなたは幸せを感じれば感じるほど、眉を顰めていた。あなたの少年のような笑顔を見なくなったのは、いつからだろう……。

自分の幸せを追い求めるのが人生の主軸であるはずなのに、あなたはずっと抗っている。幸せと真反対の闇の中で光の方をただじっと見つめて、そこから動けないでいる。太陽を見て目を細めるように、幸福と同意義の光はあなたにとって眩しすぎるのだろう。


「……人生をかけて、償う。それだけだ。俺の人生に他はなにもいらない、なにも求めちゃダメなんだ」

そう言って電子タバコの煙を吐き出して遠くを見つめる。


わたしの紡いだ言葉も差し出した手のひらも全部知らないふりをして、あなたはいっそう暗い闇に溶け込んだ。



あなたの愛用していたプルームテックプラスがもう少しで廃盤になるとネットで知り、何故だか無性に悲しくなって、思わず購入した。

これがなくなったら、あなたの存在も全て消えてしまう気がした。電子タバコをセットして、なんとなく吸ってみると変なところに入り込み、むせてしまう。生理的な涙が目のふちからこぼれる。泣いてても、もう誰も拭ってはくれない。

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