幸せなとき、人は笑う。多くの人間にとってそれが当たり前だ。なのにあなたは幸せを感じれば感じるほど、眉を顰めていた。あなたの少年のような笑顔を見なくなったのは、いつからだろう……。
自分の幸せを追い求めるのが人生の主軸であるはずなのに、あなたはずっと抗っている。幸せと真反対の闇の中で光の方をただじっと見つめて、そこから動けないでいる。太陽を見て目を細めるように、幸福と同意義の光はあなたにとって眩しすぎるのだろう。
「……人生をかけて、償う。それだけだ。俺の人生に他はなにもいらない、なにも求めちゃダメなんだ」
そう言って電子タバコの煙を吐き出して遠くを見つめる。
わたしの紡いだ言葉も差し出した手のひらも全部知らないふりをして、あなたはいっそう暗い闇に溶け込んだ。
あなたの愛用していたプルームテックプラスがもう少しで廃盤になるとネットで知り、何故だか無性に悲しくなって、思わず購入した。
これがなくなったら、あなたの存在も全て消えてしまう気がした。電子タバコをセットして、なんとなく吸ってみると変なところに入り込み、むせてしまう。生理的な涙が目のふちからこぼれる。泣いてても、もう誰も拭ってはくれない。
4/20/2024, 11:35:40 AM