今日の天気は晴れ。雲ひとつない快晴。
星が綺麗に見える日。
「主様。」
ボクは大好きな人に声をかける。
「良ければ、一緒に星を見に行きませんか。」
「もちろんいいよ。」と言う主様。
一緒に見れるのが嬉しくて心の中でスキップする。
「じゃあ行きましょ!」
今日は見張り台じゃない。外に。
「ふふ、元気だね。」
「だって、………いえ、なんでもないです!」
「…?」
今日は、少し大胆に出たい。
ボクも大人の男性だって。伝えたい。
外に出て、少し冷たい空気を吸い込む。
そして、空を見上げる。
空一面に広がる星。
綺麗で吸い込まれそうになる。
「綺麗…」
うっとりとした目で星を見上げる主様が
星より綺麗で。
ついじっと見てしまった。
「はい…本当…。」
綺麗ですね…。主様。
誰もいない。2人だけ。だから、だから…。
「主様。」
「ん?どしたの?」
そう言ってボクの方を見る主様。
「本当、お綺麗です…」
一言、そう呟いてボクは主様に口付けをした。
「ら、らむり…?」
照れている主様が可愛くて。
もっとしたくなってしまう。
「主様。ボクだって、一人の男です。」
どうか、少しは。ボクのことを男だって、見て。
耳まで赤くして俯いている主様。
小さく「うん…。」と返ってきた。
「ラム…リ…。」
真っ赤な顔で見つめてくる主様。
ああ、もう。本当に。
この人は…「次は容赦しないですよ?」
そう軽く言うけど、
ボクももう我慢はできそうにないです。
口付けをしたのは2人だけの秘密です。
ボクと主様だけの、秘密。
主様が随分と長く帰ってこなかった。
だから、帰ってきた時に、首元に噛み付いた。
強く、強く噛み付いた。
私のモノだと、証明するように。
「ラト、いい子だね。偉い偉い。」
そう言ってくれる主様。
でも私は悪い子です。
「い、いえ…私は、主様に…」
首元に噛み付いてしまった、血も出してしまった。
でも、ちゃんと止血したし、何度も謝った。
「いいんだよ。大丈夫だよ。」
「止血できて偉いね。」そう言って笑う主様。
そんな顔しないで、無理に笑わないでください。
「ごめん…なさい…」
「謝らなくていいんだよ。
私がいいって言ってるんだから、ね?」
何故か目から零れていた涙を主様は舐める。
「泣かないで、ラト。」
これ以上、私に優しくしないでください。
歯止めが利かなくなってしまいます。
これ以上、甘くされたら。
次にあなたが来なくなった時に、私は…
「ただいま。ラト。私は、ずっとそばにいるよ。」
頭の中で甘く溶けていく声とその言葉に、
酷く安心してしまった。
「はい…あるじさま…」
これが癖になってしまったら、
私はもう元には戻れない。
最近は毎日カラフルで煌めいている。
そんな毎日に欠かせないのが彼の存在。
暗い心をパッと晴らしてくれる。
「主様!」
と元気に呼ぶ声。
「ただいま。ラムリ。」
今日も疲れた。と言えば
「紅茶いれましょうか?あ、そうそう!ケーキも買ってきたんです!一緒に食べましょ!」
そう笑ってる彼を見るだけで私の心は晴れていく。
「うん、一緒に食べよっか。」
そう言うと彼は笑顔でキッチンに走っていった。
彼が戻ってきた手にはケーキと紅茶の乗ったお盆があった。
「ありがとうね、ラムリ。」
「ふふーん!主様に感謝されちゃった!」
私がお礼を言うだけでニコニコする彼。
そんな彼が可愛くて仕方がない。
「じゃあ、ティーパーティーしようか。」
そうニコッと笑って見せると彼は元気よく頷いた。
明日も私の世界に彩りを。
彼と永遠の時を。
この世界に楽園があるのならば、
それはきっと天国だろう。
「ラムリ!」
ボクの大好きな人がボクを呼んでいる。
邪魔するものは何も無い。
「はい!主様!どうされました?」
「見てみて!お外が綺麗だよ!」
そう幼い子のようにはしゃぐ貴方。
「そうだね。綺麗だね!」
こんなにも可愛い貴方と2人で居れるなんて。
ここは楽園だろうか。
「私もいつか綺麗な星を見てみたいなぁ。」
「そうですね。主様。でも…」
「ん?」
「それはダメですよ。」とボクは言う。
貴方を守るために。
ボクは貴方をここに閉じこめる。
「ラムリ…怒っちゃった…?」
少し震えた声で聞いてくる。
「いいえ!怒ってませんよ!
主様がいい子にしてくれてますから。
ボクは笑顔です。」
そう明るい声で言うと貴方はホッとしたような顔をする。
ボクはここが楽園だ。
ボクの楽園を壊すわけにはいかない。
「これからもずっと、ボクと2人ですよ。主様」
大丈夫、ボクが貴方を守るから。
だから、ボクの傍から離れないで。
消えないで。ボクの一番星。
ラトの髪は綺麗なマゼンタ色で長い。
そのマゼンタの髪は綺麗に三つ編みをされている。
「おや、おはようございます。主様。」
少し外の空気を吸おうと庭に出ていた。
「あ、ラト。おはよう。」
「風が気持ちいいですよ。主様。」
そうやって笑う彼。
「ふふ、そうだね。気持ちいいね。」
桜の花びらが風に乗ってこっちに来る。
ラトの綺麗な髪に桜の花びらが落ちたようだ。
「ラト。ちょっと動かないでね。」
「はい。」
サッと髪についた桜の花びらを取る。
「花びらついてたよ。」
って笑って言うとラトはニコニコしながらこっちを見ていた。
「主様は可愛いですね。」
いきなり言われた言葉に驚きながら少し怒る。
「もう、いきなりそんなこと言わないで。」
顔が熱くなってる。
「くふふ…主様は本当可愛い方ですね。」
そう微笑む彼。
愛おしそうにこちらを見るから許してしまう。
「また、こうやって一緒に朝の風浴びましょうね」
約束です。と言う、私は照れながら頷いた。