ボクは、太陽が苦手だ。
長時間太陽に当たってるとフラフラしてくる。
今日は雲ひとつない快晴。
絶好のサボり日。
だけど、今日は真面目にお仕事を頑張ってる。
主様がお昼に帰ってくるから、半休を取って休むらしい。だから、それまでに仕事を終わらせる。
「ふんふふーん♪」
それに、主様と一緒に街にお出かけする予定も立ててる。楽しみだなぁ。
「ただいま。ラムリ。」
「!…主様っ!!」
ボクの大好きな声。ボクを呼んでくれる声。
主様のボクを呼ぶ声が聞こえたら、
どこでも駆けつける。
「おかえりなさい!主様っ!」
「ふふ、じゃあ、少し休んで、一緒に街行こっか」
「はーい!じゃあボク、掃除終わらせてきますね!」
「うん、頑張ってね。」
ボクが日傘をさしてあげよう。
ボクの主様が日焼けないように。
良かったら、その傘の隣にボクがいてもいいかな。
主様を守るっていう、口実で。
相合傘をしたい。雨は降ってないけどね。
「ねぇ、主様。」
夜深い時。
ラムリとお酒を飲んでいた。
私はだいぶ飲んでいたので酔っていた。
「どしたの?」
ラムリの声は少し低かった。
「これから…館を抜け出して…2人だけで星を見に行きませんか…?」
彼は真面目な顔をして言った。
真面目な彼の顔に少しドキッとしながら答えた。
「ふふ、だめだよ。でも…行きたいなぁ。2人で」
顔が熱い。
私はすっかり火照ってしまったようだ。
「!…嬉しいです。主様。」
彼ははにかんだ笑顔で答えた。
「じゃあ、いつか…行きましょうね!
2人だけで…遠い…遠い空…綺麗な星を見に!」
「そうだね。ラムリ。」
「遠い空へ…2人だけで行きましょうね。」
彼は私の目を見つめながら声のトーンを落として言った。
「…………うん。」
彼の目を見ていると、意識がふわふわしてきた。
「一緒にいこうね、主様。遠い空へ。」
そう言われたあと。私の意識は途絶えた。
主様から薔薇を貰った。
時々ローズくんから薔薇とか色んな花を貰うからそんな見てなかったけど…
「主様からの…贈り物…」
7本の赤い薔薇。
どんな意味があるの?ってローズくんに聞いた。
「えーっと、密かな愛…っすね。」
「密かな愛…?へぇ、ありがと!ローズくん!」
「ははっ…ラムリは愛されてるっすねぇ。」
ふふ、なんだか変な気持ち。
言葉にできないけど、なんだか心があたたかい。
今日はいつも以上にお掃除頑張れそう。
「主様、待ってますからね。」
そう呟いてボクは掃除に向かった。
「あれ…ラムリがいない…」
いつもなら掃除してるはずの彼の姿が消えていた。
「どこ行ったんだろう…?」
周りをキョロキョロしていると足音が聞こえた。
「はぁ…、なんだか悪い夢見ちゃったなぁ…」
「あ、ラムリ!!」
足音の正体はラムリだった。
「あ、主様…。」
少し浮かない顔をしている彼。
「どうしたの?ラムリ、」
「いえ、なんでもないです。」
そう言って笑う彼。
「主様こそどうしたんですか?」
「あ、えっとね…、」
少し照れながら花束を見せた。
「こ、これ…ラムリに…」
「!…薔薇の…花束ですか…?」
「うん。ラムリにあげたくなってね。」
「!!!」
ラムリの顔がぱぁぁあっと明るくなった。
花束を受け取ったラムリは笑顔で言った。
「ありがとうございます!主様っ!!」
「ふふ、良かった。」
その時、窓から桜の花びらが入ってきた。
「あ、桜も満開ですよ。主様!」
「そうだね。」
今年の私の春は春爛漫に咲く。
それは隣にいる彼のおかげだろう。
私はニコッと笑って言った。
「いつもありがとう、ラムリ。
来年も…私に春を咲かせてね。」
今日は珍しく主様が一日中いてくれるって
言ってくれた。
だからボクはとても浮かれていた。
「主様とずっと一緒にいれるなんて超嬉しい!」
ルンルン気分でお掃除をしてた。
その時だった、窓からチラッと庭が見えた。
ローズくんと主様が一緒にいて、ローズくんの隣で笑ってた。
「え…?」
ボクが見たことない顔で笑ってた。
ボクにはそんな顔見してくれなかったのに…
笑ってる主様を見ていると少し胸が痛くなった。
ボクは誰よりも、ずっと主様のこと考えてるのに…
もう掃除する気分じゃなくなったから、サボっちゃおう。少し寝たら、この胸の痛みも和らぐよね…?
今日は珍しく休めたから館にいる。
庭の薔薇を見ていたらアモンに声をかけられた。
「お、主様じゃないっすか。」
「あ、アモン。」
「どしたんすか?薔薇見てたんすか?」
「うん。花束でも作ろうと思って、」
「へぇ〜?贈る人って誰なんすか?」
「ふふ、ラムリに贈ろうと思ってね。」
アモンは少しチャラいけど優しい子だ。
「…そっすか。
オレに言ってくれたら花束作るっすよ。」
「本当?じゃあ、お願いしたいな。」
「了解っす!」
ラムリに喜んでくれるかな。なんて考えながらアモンと薔薇を見てた。
ラムリは…誰よりも、ずっと私の近くにいてくれた人だから。赤い薔薇を7本、花束にして贈ろう。
私の気持ちに気づいてくれるかな。