頑張ってるのに「もっと頑張んないと」って言われるのが辛い。
なんで何も知らないくせに、できないくせにダメ出しされなきゃいけないの?頑張りを知ってから言ってよ。努力をわかってから言ってよ。何にも知らないくせに。
「実りの無い一週間だね。」
そう言われたら私はどうしたらいいの?ちゃんと毎日毎日練習した。今まで以上に頑張ったつもりだったのに。それで実りの無い一週間だなんて言われたら、全部無駄だったみたいじゃん。時間も努力も。
たった一言でもいいから、褒めて欲しかった。
#5 優しさ
困っていると、いつも先に気づく。
大丈夫?と聞く前に、さりげなく手を貸してくれる。
その優しさが、自分だけのものじゃないと知っているから、期待しないようにしていた。
それでも、声をかけられるたび、胸が少しだけ痛む。
放課後、ありがとうと伝えると、相手は当たり前みたいに笑った。
その笑顔が、いちばん残酷で、いちばん優しい。
好きだとは言えない。
でもこの気持ちを優しさだと思っていたい夜がある。
#4 逆光
夕方の教室は、窓から差し込む光で白く滲んでいた。
帰り支度をする背中を、少し離れた席から見ている。
君に話しかける理由は、いくらでも思いつくのに、立ち上がれない。
逆光の中では表情が見えなくて、その分、勝手に期待してしまう。
笑った気がして、胸が跳ねる。
でもそれは、ただ光が揺れただけかもしれない。
チャイムが鳴り、教室が空になる。
声をかけられなかった気持ちだけが、夕焼けの中に残った。
逆光は、近くにある想いほど、見えなくしてしまう。
#3 こんな夢を見た
こんな夢を見た。
夕暮れの駅で、なぜか待ち合わせの約束をしていないのに、同じベンチに座っている夢。
会話は少なく、電車の音だけが遠くで響く。隣にいるのが当たり前みたいで、理由を考える必要もなかった。
手が触れそうで触れない、その距離がやけに現実的だった。
発車ベルが鳴る。
どこへ行く電車かは分からない。でも立ち上がらず、ただ一緒に時間が過ぎるのを待っていた。
目が覚めたとき、胸に残っていたのは名前のない温度だった。
きっとあれは、失くした過去じゃなく、まだ来ていない未来の夢だ。
#2 タイムマシーン
古びた展示室の隅に、そのタイムマシーンは置かれていた。動かない模型だと分かっているのに、ふたりはしばらく前に立ち尽くす。
「戻りたい時間ってある?」
そう聞かれて、少し考える。
昨日でも、数年前でもない。
「今が良いな」
そう答えると、彼は小さく笑った。
もし本当に時間を戻せたら、違う言葉を選んだかもしれない。違う距離感で、違う結末もあったかもしれない。でも、彼の隣にいるこの瞬間だけは、変えたくなかった。
展示室を出ると、夕暮れが広がっていた。
タイムマシーンはもういらない。この時間が、十分に大切だった。