詩のようなもの0018
足音
帰宅が遅い彼の足音で目を覚ましてしまう。
寝返りを打って眠りに飛び込むが、待っていてくれない時には寝はぐれてしまう。
気にしない。
仕事が忙しい。それはお互い様。
でも。
軽く苛立ちながら眠気を待つのが嫌だ。
誰かと一緒に暮らすのは大変。
独りで生きていけるように
訓練してきたから、大変。
足音が気にならなくなるまで
あと
どれぐらいかかるのだろう。
詩のようなもの 0017
終わらない夏
毎日アプリに日記をつけ始めたら
私の今年の夏が
鮮明に刻まれていくことに気づいた
15の時に
子供時代の日記を燃やした
あの炎は今も覚えている
大人になる儀式のような覚悟も
30になる前に
書いていたものを
ダンボールに詰めた
今も屋根裏に置いてある
処分しなきゃなと思う
便利なことに
mixiもTwitterもblogも
ある日突然
相手の都合で消えてしまって
多分インスタもXもスレッズも
そしてこのアプリも
いつか消えてしまうのかもしれなくても
文字に閉じ込めた夏の記憶は
終わらないのかもしれない
記録を残したいとは全然思わないが
記憶が消えないで欲しいと思っているらしい
記憶を強化するために
私は言葉を紡ぐのかもしれない
詩のようなもの0017
遠くの空へ
入れ!と祈ったが
シュートはゴールバーを叩いて
遠くの空へ
チャンスを!と祈り続けたが
祈りはどれぐらい届いたのだろう
ゴミを一回拾ったら
席を一回譲ったら
神様はきっと見ているんだ
ポイントを貯めるみたいに
徳を積んで
積んで積みまくりますから
どうか
彼を活躍させてください
って
毎日思ってた
いつものように
道端のゴミを拾っちゃったけど
「ああもう祈る必要はないんだ」
と気づいて
初めて
彼の引退を痛感した
これからは推しじゃなくて
私のために徳を積む
いいじゃない、いいじゃない
遠くお空の上に
いるかもしれない神様
お願い
……ああなんてつまらない
詩のようなもの0016
突然相方が倒れた!
うわ急に来るんだ!!
こんなふうに
ある日いきなり来るんだ!!!
今回は
大事に至らなかったけれど
いつか来るさよなら
必ず来るさよなら
一生は思っていたほど長くなくて
一年が飛ぶように過ぎていく今
残り時間も儚く短いのだろう
あとどれぐらい?
いや、そう考えるより
明日
さよならしてもいいように生きよう
詩のようなもの0015
吾の記憶すでにたくさん手放して
君の昔の話が少し
君の云う君棲む里の夕空は
稜線漆黒光る星々
脳裏には君の故郷が浮かびおり
君なき家に君探す庭
月あかり吾の名前呼ぶ君の声
満天の星逝く身の不思議
恐るまじ君共に在る旅路なら
忘れず待っていてくれたのね