詩のようなもの0031
ページをめくると
そこには私の書いた原稿があって
私が撮影に立ち会った写真があって
大きな記事だから
インタビューの名手だったから
連載を持っていたから
必ず私の名前があった
いつ書店に行っても
つまり月初でも月末でも
必ず自分の仕事の載った雑誌が買える
その場で作品を見せられるように
週刊誌と月刊誌と専門誌の編集部に
出入りした
そういうライターを目指して
そういうライターになった
当時、マスコミって憧れの業種だった
肩で風を切って
寝ないで頑張って
点と点が繋がると次々仕事が広がっていく
難しすぎる簡単すぎる資料を毎度もりもり読み込んで
隙間時間に学んで遊んで
取材もプライベートも出会いと別れのそのときめきと痛みこそを
ガチで味わって
そして原稿に向かう瞬間が大好きだった
雑誌に出てくるようなオフィス兼自宅
壁一面の書棚とリモワのスーツ
時計と靴と眼鏡にはお金をかけた
怖いものなんか何もなかった
ずっと幸せな天職が続くんだと思ってた
我が子を亡くすまでは
詩のようなもの0031
忘れ物はない
悔いもない
そうやって
さよならしよう
詩のようなもの0031
8月31日は毎年恒例徹夜の日
お嬢の宿題は家族総出でお手伝い
と言ったって
親は所詮アシスタントで
資料集めたり
プリントアウトしたり
ご飯作ったり
飲みもの運んだり
寝そうになったら起こしたり
根性あるなと感心してたけど
基本出そうが出すまいが
よかろうが悪かろうが
全く関与しなくて
親は頑張ってるお嬢を応援するだけ
社会人になった今も
徹夜には強いし
根性あるけど
お嬢の今の仕事って
ずーっと8月31日って感じ
あの緊張感と高揚感が
きっと肌に合ってたのね
詩のようなもの0030
いつもふたり
ひとりよりふたり
だけど
わたしたち
じぶんのことが
いちばんすき
だから
ふたりでうまくいく
詩のようなもの0029
心の中に広がる美しい風景を
私はまだ明確に持っておりません
死ぬ前に見る人生最期の走馬灯の
背景はまだわからないのです
案外日常生活の、この天上の模様だったりするかもしれません