もしも未来を見れるなら、貴方は何を見たい───?
そんな風に問いかけてきた女がいた。
場所は確か、街角の裏路地。
占い師でも気取ってるのか、顔を隠すヴェールをつけてやがった。
だが、俺はオカルトは信じねぇ。
だから。
未来ってのはいずれ来るもんだ。
なら、来たその瞬間に、全力で生きれば何の問題もねぇ。と、そう返したわけだ。
その返しが気にいったのか、それとも意趣返しか。
あの女、「二年後、貴方。死ぬよ」と言い捨てて消えやがった。
ひでぇ占いもあったもんだろ?
あぁ…なんで今、そんな話をしたのかって───?
ハハ!見事二年経ったからに決まってんだろ?
終わりが見えてるってのは良いなぁ、おかげで何も気にせず無茶ができた。
後悔───?あると思うか?
泣くんじゃねぇよ。
お前が居るんなら、安心して任せられる。
…計画性なんざ。カケラもない人生だったが…
悪くなかったぜ───。
パキッパキッと、踏み砕く音にやや面倒になってペンを投げる。
「うお、あぶねぇ!?」
「当たればよかったのに…」
ここは私の、アトリエ。
ガラスで描く、無色の世界───。
「累計何億$かしら…いい加減学んでくれる?」
「わりぃわりぃ…力加減は苦手でなぁ」
「それで?」
ガラスに沿わせた刃を止めて、耳だけ後ろに傾ける。
入ってきたのは、極彩色の鱗を持つ竜人。
人の世に降りては、宝をせびる俗物だ。
どうせ今日も、奪ってきた宝を見せびらかしに来たのだろう。
わざわざ見てやる理由はないが、話くらいなら聞いてもいい。
「いや、何。俺様の信者どもがな?」
「ええ。」
「コレ見せたら、それ以上の宝なんてございません!とか言い出したんだよ」
思わずぴくりと耳が反応する。
なんだかんだで、この男の信者は目利きだ。
それが絶賛する宝…。
少し…、いや、かなり気になる。
「それは、私の作品よりも?」
「おう?ダントツだと思うぜ?」
その上でコイツも高評価か…。
少しぐらいみる価値はあるかも知れない。
「見るわ」
スッと指先に魔力を込めて、ガラスの台座を撫でる。
くるりと景色が変わり。
はたしてそこにあったのは───。
「ィッ……いいと思うわ…」
「だろ!?ウチのポストに入ってたんだわ!」
気の迷いで作った、竜人の彫像だった。
しかも、ご丁寧にクリスタル製。
馬鹿力に対応した特注品だった。
無言で作品制作に戻る。
隣では、馬鹿が自慢げに像を讃え、それに反応して、彫像から極彩色が広がってくる。
とんでもなく、邪魔である。
私の魔力が揺らぐのも仕方ない。
…そもそも、なんで気づかないのよ?
なんともモヤモヤした気持ちで、向けた視線。
彫像の中心部には、竜の逆鱗…
極彩色を放つ三日月が堂々埋め込まれていた。
あら、あなた。
こんなところで何してるのよ?
サクラ?あぁ、あの極東の花ね。
…で、その花、どこにあるのよ。
あの若木が桜……?
花が散ったらただの木じゃない。
それを見て串菓子を食べるなんて…
変な子も居たものね…
へ?
何よいきなり、動かないでって。
怒った?珍し……!?いや、近くない?
ちょ、ちょっと。いったい何を───!?
とれた……?
何を……ッ!む、むし!!?
ふわふわー♪
…じゃないわよ!
近づけないで!苦手なの!
へ?毒もあります───?
なら、なおさら近づけるんじゃないわよ!
捨てなさい!ドヤ顔もやめろ!うっとおしい!
だいたい何でそんなのが…
私の…肩に………。ひぃ、洗わなきゃ…。
桜散る時期になると、卵を産みにくる───?
…!?
服についてないわよね!?
見てくれるのね!
お願いするわ!
…まったくもう。
ちょっと桜が嫌いになりそうよ。
……何よその笑み。
まだ付いてるとか言わないわよね?
満月の夜には、オオカミが出るんだって。
そんな事を言って、キミの瞳が輝いた。
今の時代に人狼物語とは───。
ふっと笑って、辺りを見渡す。
あまりに平和な、穏やかな村。
キラキラ星が輝いて、鳥が木で跳ね歌ってる。
乗っかってあげるのも悪くはないかな───。
軽く頷き、ハンカチ一つ。
河原のガラスを、そっと並べて口を開く。
よく知ってるね、なら、これを持っておくといい。
これは、現し身の星。
キミが危なくなった時、その身を逃す宝石だ───。
キラキラ光る瞳、僕は満足げにキミに手渡す。
夢見る心は大切だ、それはきっと宝物になる。
そんな事を考えて───。
…だけどさ。
そんな風に、頷き眠った次の日。
僕が、キミの家で目を覚ましたのは…
何の冗談だ───?
やぁやぁ、そこの女の子。
傘を一本、いかがかな?
お出かけするのに傘もなしじゃ、
雨に濡れて風邪ひくよ?
風邪をひいてもかまわない───?
そんなこと言わずに、ほら、持って。
ボクに少し、聞かせておくれよ。
今日が友達の旅立ちの日で、
お見送りに行きたいのに、
雨が降ってしまったと───。
それはそれは…災難だったね。
今から行くんじゃダメなのかい?
届かぬ思いで終わるくらいなら、
足掻いてみるのも、アリだろう?
自転車じゃなきゃ、間に合わない───?
おやおや、それじゃあ…しょうがないね。
ところで、少女。
気晴らしに一つ、見ていかないかい?
何を、って───?
ボクはマジシャンだからね、
ちょっとした…そう。手品の一つさ。
渡した傘をよーく見て?
ボクが3つ数えると、不思議なことが起こります。
さぁん───。
にーい───。
いー…おや───?
どうやら、雨が止んだみたいだね。
これなら、なんとか間に合うかい?
うんいい返事だ、
引き止めちゃって悪かったね。
全力で思い、ぶつけておいで?