酸素不足

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6/9/2024, 12:26:02 PM

『朝日の温もり』


ああ、まぶしいなあ。
こんなにきれいなら、ずっとみていたい。
でも、ぼくにはにあわない。
このあたたかさも、ぼくにはにあわない。

僕には、夜の冷たさが似合っている。

6/8/2024, 12:27:41 PM

『岐路』


今までずっと、あの人の言うことを聞いてきた。
それが正解だと思っていたから。
でも、これは、流石に聞き入れられない。
そう思っているのに、拒否することができない。
ここであの人に逆らったら、どうなるのだろう。
ここから先、物事を自分で決めて生きていける自信がない。

何時間も悩んだけれど、結局ぼくは、あの人に従うことにした。
だって、そうした方が楽だから。
今さら生き方を変えられやしない。


ぼくは、キッチンから包丁を持ち出し、彼女のマンションへと向かった。

6/7/2024, 11:49:34 AM

『世界の終わりに君と』


眼下に広がる地獄絵図を見ながら、大きなため息を吐く。
呆気なく終わって行く世界は、これ程までにつまらないものだったのか。

「何してるの?」

ふわりと隣に寄って来たきみに、思わず笑みがこぼれる。

「思っていたよりも、つまらなかったよ」
「あら、こんなに素敵な景色なのに?」

くすくすと楽しそうに笑うきみが、とても愛おしい。

「僕と、一曲踊っていただけますか?」

手を差し伸べれば、きみは嬉しそうに僕の手を取ってくれた。

「もちろん。曲が終わるまで、踊りましょう」

人々の断末魔の叫びを聞きながら、僕たちは、世界の真ん中で踊り続けた。

6/6/2024, 12:07:20 PM

『最悪』


「なに、してるの……?」

ああ、見られてしまった。
彼女にだけは、知られたくなかったのに。

「えっと、これは、その……」

自分の手にあるものを、必死に隠そうとしたけれど、その前に彼女に奪われてしまった。

「もしかして、指輪?」

箱の大きさと質感で悟ったのだろう。彼女は僕が隠したかったものを言い当てた。
もう、最悪だ。
せっかくサプライズで渡そうと思っていたのに。

「本当は、明日渡そうと思ってたんだけど……」
「明日?」
「付き合って、三年目の記念日だから」

プロポーズの言葉も、シチュエーションも、指輪を渡すタイミングも、完璧に決めていたのに。
こんな形で彼女にバレてしまうなんて。本当に最悪だ。

「じゃあ、待ってる」
「へ?」
「明日、楽しみにしてるね」

にっこりと笑って、指輪を返してくれた彼女に、愛しさが込み上げて、思わず力強く抱きしめた。

6/5/2024, 1:42:25 PM

『誰にも言えない秘密』


ベッドですやすやと気持ち良さそうに眠る彼の髪を、優しく撫でる。
何度も染めている髪は、傷んでいてパサパサしている。
その髪を思う存分撫で、そのまま頬に指を滑らせる。
つるりとした頬の感触を楽しんだあと、そっと自分の唇を近付ける。

これが、私のささやかな楽しみだ。
私が毎日、眠っている彼の髪を撫で、頬に口付けしていることを、きっと本人は知らないだろう。
仕事へ行く前や、仕事から帰って来た時、彼が眠っていれば必ずこの行為をしている。


「いつも早々と帰るけど、何か用事でもあるの?」
「ペット飼ってるんです」
「えー!そうなの?何飼ってるの?」
「犬……ですね」
「そうなんだ、写真とか無いの?」
「すみません。最近飼ったばかりで、写真無いんです」
「そっか、じゃあ今度見せてね」
「はい」


「あの子の家って、ペット禁止じゃなかった?」

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