酸素不足

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『誰にも言えない秘密』


ベッドですやすやと気持ち良さそうに眠る彼の髪を、優しく撫でる。
何度も染めている髪は、傷んでいてパサパサしている。
その髪を思う存分撫で、そのまま頬に指を滑らせる。
つるりとした頬の感触を楽しんだあと、そっと自分の唇を近付ける。

これが、私のささやかな楽しみだ。
私が毎日、眠っている彼の髪を撫で、頬に口付けしていることを、きっと本人は知らないだろう。
仕事へ行く前や、仕事から帰って来た時、彼が眠っていれば必ずこの行為をしている。


「いつも早々と帰るけど、何か用事でもあるの?」
「ペット飼ってるんです」
「えー!そうなの?何飼ってるの?」
「犬……ですね」
「そうなんだ、写真とか無いの?」
「すみません。最近飼ったばかりで、写真無いんです」
「そっか、じゃあ今度見せてね」
「はい」


「あの子の家って、ペット禁止じゃなかった?」

6/5/2024, 1:42:25 PM