「愛情」
目には見えないものを手に入れるは難しい
それでも欲しいと願ってしまう。思ってしまう。
お金では手に入れられないそれが酷く輝いて見える。
安易に手に入れられないからこそ美しく見える。
欲しいと思う。羨ましくなる。
一筋縄ではいかない、やっとのことで手に入れてもそれが本物とは限らない。仮面を被っただけの偽物かもしれない。
それでも欲しいと思う。
手に入れたいと思う。
それほどに、それは魅力的に見える。
それが欲しいと思うのなら、まず自分から差し出さなければならない。
嘘偽りのない、本物を手に入れたいのなら、まず自分が嘘偽りのない本心で語らなければならない。
本心で訴えるからこそ伝わるものがある。
本心だからこそ相手に響き、情に訴えかけられる。
相手にどう接して欲しいのか、どう思って欲しいのか、まずはそれを自分が実践し、示していく事が大切だと思う。
自分がされたら嫌なことは相手にしない
自分がされたら嬉しいことを相手にしていく
当たり前のようでずっと持続していくことは意外と難しい。
たとえ相手がすぐに返してくれなくても、続ける事が大切だ。大事なのは心、想いだと思う。
見えないからこそ、相手を信じる、例え裏切られる日が来ようとも相手を恨んではいけない。
不平等で不条理でも、相手を恨んでも状況は悪化するばかりだ。
恨めばそれで終わってしまう。鏡を通せば恨んだ相手と瓜二つ。
恨みは負の感情を呼ぶだけ。負の感情は連鎖し止まらなくなりやがて暴走する。
それでも人は愛情を求める。
求める限り、危険とは隣り合わせだ。
それでも、それだけ複雑で難しいからこそ、魅力的で素敵に見える。
そして相手を信じる心を忘れなければいつかきっと相手にも伝わると信じている。
あなたに私の心をあげます。
だから嘘偽りのない心からの愛を私に分けてくれませんか。
「微熱」
少しだけ浮かれてたと思う。
好きな事を見つけて、それが楽しくて、上手くいって、わくわくがとまらなくて、夢中になった。
まるで夢の中に居るみたいに。
ただ、それだけに夢中になった。
他のことも忘れて、ただそれだけをずっとやっていた。
暖かくて、ふわふわして、まるで酔っているように浮かれていた。
まるで熱に浮かされているみたいに。
しかし、熱もいつかは下がり冷めていく。
他のことを忘れて夢中になっていたあの頃が嘘みたいに熱が引いていく。
上手くいかなくなって、モチベーションも下がって気分も下がっていった。
あの不思議な感覚もなくなって、急に現実に引き戻されたみたいだった。
熱はいつか引いてしまう。
心も身体も等しく、いつかは冷めてしまう。
だからそれまでは熱に浮かされたままでいたい。
「太陽の下で」
あなたの光は私達を生かすだけでなく
心まで暖かくしてくれる。
光があるから生きていける。
身も心にも光は必要だと思う。
貴方の光が道しるべ。
光を追いかけて、どこまでも歩んでいく
光があるから迷っても落ち込んでも
また立ちあがれる。
光が雲でおおわれて落雷が私を襲う
見えない光に不安を覚える
稲妻が走り、雨の涙が地を濡らす。
心もまた荒れてゆく。体は濡れ冷え切り、体力も奪われる。
光が差しこまない黒い空 の下
落雷が落ちるのも、体力が落ちるのも構わず
光を求めて祈りを捧げる。
祈りに応えるように、雲が晴れてゆく
太陽の光が心も体も温める
そうなったらよかったな。
現実は残酷に、必ず祈りに応えてくれるとは限らない。
冷え切る心と体をどうにか温めようとちじこまる。
その時、眩い光が体を包み込む。
まるで、その光は自分の中から発光してるようだった。
あぁ、強い灯火は心にもあるんだ。
それはまるで太陽のように。
太陽は陰って見えないけれど、太陽の下で
まるで共鳴するように眩く光る心を抱きしめた。
きっと空も晴れるよ。
「セーター」
貴方が編んでくれた、手編みのセーターに袖を通すと貴方の温かさを思い出します。
でも、少し悲しくもなります。
だって貴方はもうどこにも居ない
セーターを一つ置いて何処か遠いところに行ってしまったようでした。
貴方が残してくれたセーターに意味を探す日々を送りました。
それでも都合のいい解釈やバカバカしい想像ばかりで実の所、何一つそれらしい考えは思い浮かびませんでした。
何も言わず、セーター、一つ置いていった貴方の真意を私はもう知ることが叶わないのでしょうか。
その日も貴方が残してくれたセーターに袖を通し
貴方の温かさを感じながらあの頃を思い出していた。
その時ふと貴方が言った、ある言葉を思い出しました。
「語るのも大切だけど物事や行動で示す事も同じくらい大切なの」
「強い想いや願いは言葉にしなくても自然と伝わるもの」
あぁ、このセーターには貴方の心が入っているんですね。
きっといつか、その時が来れば貴方の真意にも気づける日が来ますよね。
そう思うと何故か少し、心が軽くなった気がしました。
72
「落ちてゆく」
美しくキラキラ輝くものは私の手から沢山こぼれていく。
それはまるで涙のように。
たくさん持っていたのに手のひらからこぼれて落ちてしまった。
持ちきれる量は最初から決まっている。
その規定量を超えれば当然零れ落ちゆく定めなのだ。それでも悲しく思わずにはいられない。
手からこぼれたそれは、とても小さく数え切れないほど沢山あり、一つ一つがキラキラと輝いていた。それはまるで宝石のように。
だが手からこぼれた瞬間それは消えてしまう。
泡のように脆くて儚く、消えてしまえば跡形も無くなってしまう。
一つ一つが宝物のように大切なのに。
その一つ一つが何にも変えられない唯一無二のものなのに、それは驚くほど呆気なく消えてしまう。
この手のひらがもっと大きければ、零すことなどなかっただろうか。
私の心が広ければ貴方を受け止めることが出来ただろうか。
私の記憶が薄れていかなければ、消えていかなければ、大切な記憶も、忘れてはけなかった経験も
全部覚えていられただろうか。
限界がなければ、どこまでも高く飛べただろうか。
心も体も記憶も何かにつけて限界というのは存在する。
限界を超えると壊れたり、失ったりする
それはまるで器のように。
入れ過ぎれば零れてしまう。
扱いを間違えると壊れてしまう。
落とすと意図も簡単に割れ、粉々になってしまう。
いつか必ず壊れる時が来る。
何かを手に入れる時は必ず代償が必要になる。
何かを得る度何かを失っている。
今日も新たなもの手に入れて、それと引き換えに何か大切なものを捨てている
どれだけ器が広がろうと、どれだけ厚みがあろうと、必ず限界がくる。
それでもこの身(器)が壊れて砕けぬ限り永遠に繰り返していかなければいけない。
得て失ってを。