徒花

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「落ちてゆく」

美しくキラキラ輝くものは私の手から沢山こぼれていく。

それはまるで涙のように。


たくさん持っていたのに手のひらからこぼれて落ちてしまった。

持ちきれる量は最初から決まっている。
その規定量を超えれば当然零れ落ちゆく定めなのだ。それでも悲しく思わずにはいられない。

手からこぼれたそれは、とても小さく数え切れないほど沢山あり、一つ一つがキラキラと輝いていた。それはまるで宝石のように。

だが手からこぼれた瞬間それは消えてしまう。
泡のように脆くて儚く、消えてしまえば跡形も無くなってしまう。

一つ一つが宝物のように大切なのに。
その一つ一つが何にも変えられない唯一無二のものなのに、それは驚くほど呆気なく消えてしまう。

この手のひらがもっと大きければ、零すことなどなかっただろうか。

私の心が広ければ貴方を受け止めることが出来ただろうか。

私の記憶が薄れていかなければ、消えていかなければ、大切な記憶も、忘れてはけなかった経験も
全部覚えていられただろうか。

限界がなければ、どこまでも高く飛べただろうか。


心も体も記憶も何かにつけて限界というのは存在する。
限界を超えると壊れたり、失ったりする
それはまるで器のように。

入れ過ぎれば零れてしまう。
扱いを間違えると壊れてしまう。
落とすと意図も簡単に割れ、粉々になってしまう。
いつか必ず壊れる時が来る。


何かを手に入れる時は必ず代償が必要になる。
何かを得る度何かを失っている。
今日も新たなもの手に入れて、それと引き換えに何か大切なものを捨てている
どれだけ器が広がろうと、どれだけ厚みがあろうと、必ず限界がくる。

それでもこの身(器)が壊れて砕けぬ限り永遠に繰り返していかなければいけない。
得て失ってを。

11/23/2022, 5:01:03 PM