徒花

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11/22/2022, 3:29:45 PM

「夫婦」

例えどんなに歪な関係でも、貴方は私達を夫婦と言ってくれますか。

結婚していなくても、届けを出していなくても、
夫婦だと言ってくれますか。

愛し合っているだけでは、夫婦と呼ぶに値しませんか。

世間一般から見れば私たちは異様に見えるでしょう。
普通から外れているから。
みなが想像するような夫婦とはかけ離れている。
言えばきっと、可笑しいと、そんなの夫婦とは呼べないと批判される事でしょう。

法律上、夫婦になれない。
世間的にみても夫婦とは呼ばれない。
社会的にも夫婦になれない。

夫婦とは到底、言えない。

言わせてくれない。

言うことも憚られる。

それでも互いに愛し合っているんです。

愛し合ってしまったんです。
この気持ちを伝えてしまったんです。
思い合ってしまったんです。

この気持ちは捨てなければいけないものなのでしょう。

それでも捨てきれず残った気持ちをどこに置けばいいのか私には分かりません。

だからせめて貴方だけでもいい。
1度だけで構わないから私達の関係を夫婦だと呼んでくれませんか。


11/21/2022, 5:01:35 PM

「どうすればいいの?」

1番最初は新品で傷一つない澄み切った綺麗な状態だったのに、だんだん時が経つにつれサビ、汚れ、傷が増えていった。
あんなに綺麗だった━━は今はもうこんなに汚れてしまった。

そして色々な色が混ざり濁って、澄んでいた、あの頃が嘘のように醜く、汚くなった。

あの頃の面影は見る影もなく、最初は可愛がってくれたあの人も、今では冷たく、相手もしてくれなくなった。
壊れ物のように丁寧に優しく扱ってくれたあの手も態度も乱雑になってしまった。

私の目を見て、愛おしそうに話してくれたあの頃が酷く懐かしい。

今は隅に追いやられ、ゴミ同然に私を扱う。

服も髪もボロボロ、辺りにはハエが飛び酷い有様だ。
周りにはゴミが散乱し、壁には蜘蛛の巣が張り、床は埃まみれ。
この部屋に追いやられて、もう何年経つだろう。
周りのゴミが高く積み上がり、物を置くスペースが無くなってきたので、もうすぐここは掃除され
、ゴミは捨てられるだろう。

あの人とも、ここにゴミを捨てに来る時くらいしか会わなくなった。

しかし、会っても目は合わせてくれない。
ただ面倒くさそうで、ここから早く立ち去りたいのか足早にゴミを捨てるとすぐ帰って行く。

あの人は━━の事など、とうに忘れてしまっただろうか。

もう一度あの人の優しく暖かい腕に抱きしめられたいと願うのは強欲だろうか。
そばに居たいと思う事も許されないだろうか。

せめて私を見つめて欲しい。
あの時のように、━━に微笑んで欲しい。

しかし、あの人はもうあの頃のように━━を見てはくれないだろう。
サビて、汚れ、壊れ、汚く醜い━━を抱きしめるなど、誰が好き好んでするだろうか。

あの頃のように綺麗で何も知らなかった無知で純粋な濁りひとつ無い、澄み切った心を癒すにはどうすればいいの?
あの人にもう一度、抱きしめてもらうにはどうしたらいいの?

声泣き叫びが倉庫から響いた。
それを聞いたものは、もちろん誰一人としていない。

もうすぐゴミの日。
ゴミ収集車の音がいやに大きく聞こえた。

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補足になります。よければ。

今回は3つ物事を思い浮かべながら書きました。
1つ目は人形
2つ目は人間関係
3つ目は心
になります。
作中では心をメインで締めくくりましたが
人形、人間関係、心、の全てメインの題材な気持ちで書きました。
3つのうちどれをとっても希望が見えない、静かな絶望が共通点かなと思います。
最後のゴミ収集車なのですが、人間関係と心では何を表したのか補足します。
人間関係では自害への道が迫ってきている。
心では少しづつ壊れていった心が遂に粉々に砕かれてしまう。
情景を思い浮かべながら書いたシーンになります。

11/17/2022, 6:08:52 PM

「冬になったら」

冬になる頃には、あなたとの関係も終わってしまうだろうか。

あなたと会う機会があるのは冬まで、冬が終われば会う口実も無くなってしまう。

冬までは自分から何もしなくてもお互いに会わなければいけない理由がある。

同じ実行委員会に入ってるから。
委員会があるまでは会うことが出来るし、話すことも出来る。
でも実行委員が終わってしまえば、貴方と会う機会も自分で作らなければならない

でも、貴方とは実行委員で初めて会ったから
実行委員のこと以外話す話題が見つからないの

貴方のことを私は何も知らない。
話すのは実行委員の事ばかり。
プライベートの話をどう聞いたらいいか分からない。

自分が口下手でなければスラスラと言葉が出てきたのだろうが、生憎、そう上手くはいかない。
私は話上手で社交的な人とは真逆な人間だ。
そんなだから、いつも苦労する。

話すのは好きなのに、どう話し始めたらいいか分からない。どう聞いたらいいか、相手の事をまだよく知らない状態で、どう話しを続けたらいいか分からない。

このままでは本当に冬までで終わってしまう。

この気持ちも雪にかき消されてしまう。

伝わることの無いまま冷めてしまう。

冬になったら消されてしまう、この気持ちを少しでも温める事しか今できないのだろうか。

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「はなればなれ」

(昨夜のお題。「冬になったら」の続きとして書いてみました。今回は補足無しでご想像にお任せします。一応なのですが見方は複数の見方が出来るようにしてみました。)

冬が来たらはなればなれになってしまうであろう貴方と今は少しでも一緒に居たいと思うことしか出来ない。

はなればなれになったら貴方は私の事なんか、きっと忘れてしまうでしょう。
それでも私はきっと貴方の事を忘れることは出来ない。

貴方にとってはただの仕事感覚なのかもしれないけれど、私にとってはそうではない。

貴方と会える唯一の時間。
貴方と話せる貴重な日。

私にとって貴方が初めての人だから、こんなにも貴方のことを思ってしまうのか、貴方だからなのか私には分からないけれど、特別な気持ちを抱いていることは確かだった。

でも、どんなに思っても、この関係は必ず終わってしまう。

私にはこの関係から進める自信が無い。
私がもっとこうだったら、ああだったら良かったのにという思いばかりが積もっていく。

理想ばかりが積もったところで、どうにもならない。私にはどうしたらいいか分からない。

だから、せめてその日まで、貴方の隣に居させてください。

貴方との思い出を心に刻ませて、この想いは閉まっておくから。

また変に出しゃばって辛い思い出を残すくらいなら今のまま綺麗に閉まって置いた方がきっといいんだ。

自分に嘘をついて、貴方の前で笑うよ。

11/15/2022, 4:28:47 PM

「子猫」

何も知らない子。

好奇心旺盛で、自由奔放で、こちらの苦労など知らぬ顔でこちらを覗く。

見るもの見るものが新しく、新鮮で
色んなものに興味を示す。

育ての親に好かれようとしているのか、はたまた気まぐれなのか、膝に乗ってきたり、頬ずりしたり。
それはとても、可愛いものだ。

丸い瞳でこちらの様子を伺うように覗く。
純粋無垢な瞳は濁りがなくて穢れを知らないそれは、とても綺麗なものだ。

これから色んな事を知っていくのだ。
この瞳もいつかは濁ってしまうだろうか。
純粋無垢な仕草も、好かれようとする姿も
いつかは見ることが出来なくなってしまうのだろうか。
反抗的な態度も見せるようになるかもしれない。

いつか私の手から離れていってしまうのだろうか。
その時は私の方が縋ってしまいそうだ。

どんなにそう思っても、いつかはそんな日が来るのだろう。
いつかその日が来ても私は貴方を愛し続けよう。
反抗的になっても、私に強く当たろうと、
貴方は愛しくてたまらない私の子に変わりないから。


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補足になります。良ければ。

子猫と人間の子を重ねて書いてみました。
猫も人間の子も違いはあれど、どちらも同じようにも見えると思い、合わせて書いてみました。
どちらの見方もできるように書いてみましたので良ければ読み返して見てください。


余談ですが前回の「秋風」補足

季節の変わっていく様子と、心の移り変わりを
混ぜて書いてみた、つもりなのですがあまり上手くまとまらなかったなと感じています。

夏から秋へ気温が寒くなっていくように
最初は熱を入れて頑張っていた出来事も色んなことを知っていくうちにだんだんと冷めていく。
その様子を落ち葉でも表してみました。

最後の部分は辛いことがあったが諦めきれず、辛さや辞めたい気持ちを振り払って、また前を向き夢に向かって歩き始めた。というイメージで入れてみた箇所です。

11/15/2022, 6:57:33 AM

「秋風」

あんなに暖かかったのに、楽しかったのに、
ワクワクとドキドキでいっぱいだったのに冷めてしまった。

冷めてしまったんだ。
あの頃が嘘みたいに、すっかり変わってしまった。

何も知らなかった。
実際に体験してみて痛いほど痛感した。
あの頃の私がどれだけ夢ばかり見ていたか、どれだけ軽い気持ちだったかを。
希望で満ち溢れていたあの頃が酷く懐かしい。

色んなことを知ってしまって段々と心の熱も冷めてしまった。
消えてしまいそうなほどに。

それでも必死に食らいついた。落ちまいと、生き残るんだと。それでも失敗し、上手くいきはしなかった。
この熱も随分小さくなってしまった。

公園を通りかかると落ち葉を見つけた。
強い風が吹くと木から紅葉が沢山舞散った。
そして木には枝だけが残っていた。

でもいつか必ず、また葉をつける。

消えかかっている心の灯火も諦めない限りは、いつかきっと、あの頃のように燃え盛ってくれると信じて。

秋風が私の頬を冷たく撫でる。
それでも私は前を向いて歩いた。

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