「秋風」
あんなに暖かかったのに、楽しかったのに、
ワクワクとドキドキでいっぱいだったのに冷めてしまった。
冷めてしまったんだ。
あの頃が嘘みたいに、すっかり変わってしまった。
何も知らなかった。
実際に体験してみて痛いほど痛感した。
あの頃の私がどれだけ夢ばかり見ていたか、どれだけ軽い気持ちだったかを。
希望で満ち溢れていたあの頃が酷く懐かしい。
色んなことを知ってしまって段々と心の熱も冷めてしまった。
消えてしまいそうなほどに。
それでも必死に食らいついた。落ちまいと、生き残るんだと。それでも失敗し、上手くいきはしなかった。
この熱も随分小さくなってしまった。
公園を通りかかると落ち葉を見つけた。
強い風が吹くと木から紅葉が沢山舞散った。
そして木には枝だけが残っていた。
でもいつか必ず、また葉をつける。
消えかかっている心の灯火も諦めない限りは、いつかきっと、あの頃のように燃え盛ってくれると信じて。
秋風が私の頬を冷たく撫でる。
それでも私は前を向いて歩いた。
11/15/2022, 6:57:33 AM