作品43 プレゼント
ラッピングを頼まれた商品を受け取り、好きな色の紙を切る。丁寧に包装し、紙にあう色のリボンを、ふわふわになるように可愛く結ぶ。そして、返す。
この季節になると、この作業が一気に増える。サンタさんがたくさん来て、子供の好きそうな商品を頑張って探すのを見られるこの仕事が、大好きだ。そこからしか感じられない親子の愛がある。
きっとクリスマスの朝には、キラキラした子どもたちの顔を見れるんだろうな。親はそれを、愛おしいと感じるのだろう。
そして、子供はその視線を浴びながら、私達が丁寧に包んだラッピングをグチャグチャにして、中身にだけ気を取られて、この包装たちはクズ箱に捨てられて。考えただけでも腹立たしい。
この仕事が好きな分、どんどん子供が嫌いになっていく。いつからこんな捻くれたんだろう。
ああそうだ。親にサンタさんの正体を言われた頃からだ。あのころからなのか。そしてそこから数年経って……。
人ってこんなんになっちゃうんだな。
作品42 ゆずの香り
冬至といえば、かぼちゃとゆず湯。好き嫌いが分かれるらしいが、私は両方大好きだ。今年は、かぼちゃを煮物と団子にし、柚子は親戚から頂いて風呂に浮かべ、楽しんだ。
それが昨日のこと。やっぱりいつもと違う風呂って気分が上がる。
少し鼻歌をしながら登校する。やけに量の多い階段を登り、友達におはよーと挨拶し、席に向かう。
窓側の一番うしろの席。この季節だと太陽の光で暖かいし、暖房はいい感じの距離にあるから、控えめに言って最高。しかも隣の席はクラスで一番頭がいい天才さんだから、近くの私は先生に当てられづらい。すべてが最高。
机にカバンを置き、椅子に腰掛ける。外が寒かったぶん、暖房がよりありがたく感じる。
ぬくぬく暖まっていると、隣の天才さんから話しかけられた。前髪を整える。
「なんかいいにおいするね。柚子?」
慌てて髪の匂いを嗅ぐ。
「ほんとだ。」
「香水?」
「いや、昨日冬至だったからだと思う。ほら、ゆず湯。」
なるほどと、納得したように天才さんが目を細める。かっこいいしかわいい。
「昨日だったんだ。」
「知らなかったの?」
「うん。ゆず湯入れなかったな。」
それはなんと。
「残念だね。」
「あ、でも。夕飯にかぼちゃは出てきたよ。」
「でもお風呂はいつも通りと。」
「いや、入浴剤入ってた。」
「え?ゆず?」
「いや。檸檬の入浴剤。」
「何故……。」
「お母さん、柑橘類の見分けついてないから?」
「全くの別物なのに。……あ、あれじゃない?んがつくからじゃない?」
何を言ってるんだと顔をされてから、気づいた顔をする。
「ああなるほど!そういうことか。」
「ね!」
「でも食べてないから意味ないかもね……。」
「そうだね……。」
そこまで話して、チャイムがなる。先生が教室に入ってきて、ホームルームがはじまった。
天才さんに向けていた体を前に向きなおし、顔を下に向け、細く長く息を吐く。顔がどんどん赤くなっていくのを感じた。
私、ちゃんと普通に喋れてた?なんかすごいどうでもいいことしか話してない気がする。え、変な人とか思われてないよね?
今更ながら手鏡で顔を確認する。前髪よし。先生にバレない程度の控えめメイクよし。肌の調子よし。
大丈夫。今日はちゃんとかわいい。まあ、そのためにいつも頑張ってるからだけどね。
手鏡をポッケにしまい、天才さんをチラ見する。
私は隣の席の人、天才さんが好きだ。
⸺⸺⸺
檸檬の花言葉“心から誰かを愛しく思う”
柚子の花言葉“恋のため息”
ネットで調べただけなので正しいかはさておき、珍しくキャピキャピ系です。
柑橘類の見分けがつかないというのは、かも肉自身のことです。わあ恥ずかし。
作品41 大空
やっぱさ。人間誰しも空飛びたいって思うときあんじゃん?なぜか僕達は、空に強い思いを抱いているから。ほら、その証拠に、自由を絵として表すときに、大体は空を写してたりするし。
それだけ、空って大切で憧れるものなんだよ。
だから、僕が今からすることも、全部憧れから来てるだけ。だから、気にしないで。
さっきから一生懸命そっちで、相談乗るよとか早まらないでとか言ってるけど。こっちからしたら、終始意味わからなくて、若干の恐怖を覚えてるよ。
ずっとさ、空に行ってみたかったんだ。羽なんて僕らには存在しないけど、大きな翼を広げて大空に飛び立つ。なんかいいなって思わない?
そしてその願いは高ければ高いほど。空に近ければ近いほど、叶いやすくなってく。
わかる?あ、いや分からなくていいよ。共感されるなんて思ってないから。
でも一つお願い。いい?ありがと。
僕の。俺の夢、止めんなよ?
⸺⸺⸺
希死念慮の形は人によって違うよーって話です。
こんにちは、かも肉です。
いつもたくさんハートを送ってくださり、誠にありがとうございます。
これまで毎日書くことを心がけていたのですが、あまりにも書くことに夢中になってしまい、寝不足で体調不良になってしまいました。
この馬鹿みたいな経験を踏まえ、これからは二日に一回とか、そこら辺のゆっくりしたペースでやっていきます。
というより、気づいたらアプリ消してるかもです。普通にスマホの容量がなさすぎて、アプリの断捨離を始めているので。
一応これまで書いたのは全部コビーしているので、失うものは何もありません。ただ、創作欲求を満たすだとか、文章を書く練習するだとかがすごくやりやすいので、正直続けるか消すか微妙なところです。
まあ、急に消えてたら断捨離したんだなと思ってください。
なんでこんなグダグダ書いているかって?それはもちろん、今回のお題がムズいからっすよ。
こんな野郎が書いた文章を読んでいただけているのかと思うと、とても嬉しいです。
消えるその日まで、どうかお楽しみください。
そう言って明日になって確認すると、あれ消えてる!とかならすごいうけるんすけどね。
はい、ここまで読んでいただきありがとうございます。
それでは本題の“ベルの音”だっけ?なんだっけな。直で書いてるから消せない。まあ、適当に行きましょ。“ベルの音”ですどうぞ。
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作品40 ベルの音
家の近くに喫茶店ができた。歩いて十五分、自転車で五分くらい。そのは、とても美味しくて、特に喫茶店オリジナルのパフェが絶品だ。
なぜこんなに詳しいのかというと、
「ねえ、ここ、気になるよね!一緒に行こ!」
この女のせいだ。
彼女は前の席に座ってる、所謂キラキラしてる系の女子。何故か陰キャの私にいつも絡んでくる。漫画かよ。
でもまあ、私はあなたに興味ない。
「いや、甘いの苦手だからいい。」
「コーヒーもあるって!」
「コーヒーはお腹痛くなる。」
「普通のご飯もあるよ!」
「家ので十分。」
だからいつもこんな調子で、嘘をついたりして、あらゆる誘いを断っている。なんで親しくないやつなんかと一緒に、飯食いに行かなきゃいけないんだよ。
「ねーねーいこーよー。」
無視して帰る準備をする。
今日は早く帰らなければいけない。なぜなら、好きな作家さんの最新作が、やっと近所の書店に並ぶからだ。
「急いでるから。さようなら。」
足早にドアに向かう。誰も私を止められない。もちろん彼女も。いつだか布教したことがあるが、多分覚えておないだろう。
まあだから、さっさと帰ろうか。
教室の入り口近くまで歩いていく。
「……本買ってあげるよ?」
思わず足が止まってしまった。
後ろを振り返ると、彼女がニヤリと悪そうな顔で笑っていた。
「行こっか?」
その誘いに乗ってしまった。
カランコロンと、ドアのベルが鳴る。
五分で帰ってやると決心して学校を出たはずなのに、その決心はあっと言う間に塵となった。
店内に足を踏み入れる。片手には、さっき買ってもらったばかりの本がある。決心が揺らいだのは、これのせいだ。悪くない。
そう自分に言い聞かせながら、店内をぐるりと見渡した。
なるほど、いい感じのお店だ。レトロな雰囲気で、かかってる曲もセンスがある。カウンター席しかないようなので、一人で来るときとかは良さそうだ。
頭を物理的な意味で必死に動かしていると、キッチンの方からいらっしゃいませと言う声が聞こえた。キッチンを見てみる。お父さんより年上で、おじいちゃんよりも若干若いくらいの男性。所謂おじさんが、エプロンを着て立っていた。
席に座ると水とメニューを渡され、ごゆっくりどうぞと言い、去っていく。
隣に座っている彼女に見えるように、メニューを置いた。
「えーどうしよー。やっぱパフェがいいと思うけど、気分はパンケーキなんだよなー。ねーねーどうする?決めた?」
はしゃいでる様子で、彼女が言った。なるほど、メニューの写真はどれもすごく美味しそうだ。これは、迷うな。
しばらく考えていると、彼女がまた言った。
「え、やっぱりケーキも良くない?パフェがパンケーキがケーキ……。悩む!」
彼女が行ったメニューの写真を順に見ていく。私だったらパンケーキだな。そう思ったので、パンケーキにした。あとは彼女が選ぶのを待てばいい。
しかしなかなか決まりそうにない。次は原点に戻って、パンケーキとパフェで悩んでいた。なんだか可哀想に思えてくる。
しょうがないな。
「私パンケーキにするから一口交換する?」
そういうとキラキラした目でこちらを見つめてきて、
「いいの!マジ感謝!ありがとー!」
と、すごい感謝された。なんか、かわいいな。
さっきのおじさんを呼び、パフェとパンケーキを頼む。すぐ運ばれてきた。
食べる前に写真を取り、好きなところを選ばせて口に運んでやる。美味しそうに食べていた。たしかに美味い。これは行きつけになりそうだ。
夢中で食べていると、彼女がフォークを近づけてきた。
「はい、お礼!おいしーよ?」
少し抵抗しつつもいただく。
「!?え、おいし!?」
思わず声に出てしまった。
「ありがとうございます。」
おじさんが嬉しそうな顔で、こちらを見た。
「ね、おいしいよね!」
満面な笑みで彼女が喋った。
可愛い人が二人いる。これは行きつけに知るしかない。
そう決めたとき、ドアの方からベルの音がした。新しいお客さんが入ってくる。
「いらっしゃいませ」
おじさんの声が、まだ少し残ってるベルの音とともに、店内に響きわたった。
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はい、眠いです。雑ですみません。優しい目で見てください。
作品39 寂しさ
帰り道はいつも暗い。仕事は早く終わらせたはずなのに。気づくと夜が迫ってきて、暗くなっている。
冬が来たんだな。
あなたが呟いた。そうですねと返す。
たまたまバス停まで帰り道が同じ。ただ、それだけの理由で、いつもあなたと一緒に帰っている。
言葉を交わすときもあれば、交わさないときもある。他の人だったら気まずくなってしまうけど、あなただけは別。
この時間が好きだ。
雪が降り始める。あなたの髪の毛につき、その結晶をゆっくり崩していく。それがとても綺麗だった。
見惚れながら歩いていると、あっという間にバス停までついてしまった。
それではさようなら。
あなたが言った。同じくさようならと返す。バスに乗ったあなたを、小さくなるまで見て、歩き始める。
さっきよりも空気が冷たくなっている気がした。星の輝きが眩しく見えた。雪が少し積もっていた。
一人分の足跡を、付けていく。