かも肉

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11/30/2024, 11:46:12 AM

作品20 泣かないで


 今夜もいつもみたいに過ごしていた。
 いつもみたいに、なんとなくネットに触れて、なんとなく見知らぬ誰かに愛を呟いて、なんとなく気分を動かして、なんとなく口角上げて、なんとなく息をして。 
 なんとなく生きていた。
 それは、いつもと同じ。
 だけど今日は、変なのが一つ混じった。なんとなくこのままじゃ駄目だと思うよって。
 この“なんとなく”まみれの生活、なんだか悲しくないか?辛くないか?苦しくないか?この生活は明日もきっと同じなんだろ、変わることなどないんだろ?来週も、来月も、来年も。永遠に“なんとなく”。それってなんか、可哀想だな。
 そう聞かれたから考えてみる。悲しいどころじゃない。言葉では表しきれないほど苦しいし寂しい。冷たい。それはそんなのだ。と返す。
 あーあ。考えちゃった。気づいちゃったね
 漠然とした何かが私を襲ってきた。
 呼吸が苦しくなってきて、心臓が激しく動き出す。目と口から何かが零れそうになる。汚い。我慢しなくちゃ。
 ぎゅうって体を小さくすると、涙が溢れでた。声にならない叫び声も出てきた。
 何もかも全く止まらない。嗚咽が出ちゃう。嫌だ。誰かに見られたら変な奴だと思われる。笑われる。心配される。目立ってしまう。みられる。
 でもホントは、誰かに見られて、気に留めてもらいたいんでしょ?って、誰かが耳元で言う。誰なんだよお前。
 ぐるぐる考えが頭を巡る。そしたらその分、心が締め付けられる。助けて誰か。
 こういうときに、慰めと心配の言葉をかけてくれる人が、いればいいのに。泣かないでって言ってくれる人が、いればいいのに。泣くのも認めてくれる人が、いたらいいのに。何も気にしなくていいくらいに強く抱きしめてくれる人が、いたらいいのに。私が一人じゃなければ、いいのに。
 私は、これ以上泣きたくない。だれかこの気持ちをとめて。

 今夜は一人、部屋の真ん中でうずくまる。
 わたしはこどくだ。

11/29/2024, 10:37:03 AM

作品19 冬のはじまり


 目の前で風が踊り始めたから、風花がとてもキレイだなと思っていた。すると目の前に、キラキラ輝いた黒髪が通った。美しかった。
 そして私は、髪に六花を付けたキミに、見惚れてしまった。私の心に、春が来た。
 話し掛けようと、キミの隣に行く。けれでも、すでに先客がいたようだ。
 隣にいるのは、キミの恋人さん。

 赤くなった鼻を隠して、白色の息を吐く。
 あっという間に、冬が始まっちゃった。

 私の季節は、巡るのが早すぎる。



⸺⸺⸺
薪割りから解放される季節の始まりです。
きれませんように。

11/28/2024, 12:38:20 PM

作品18 終わらせないで


 映画で言うなら 最後の場面
 終わりたくないよ スローにして
 こんな当たり前が大事だってことに
 なんで今気づいてんの?
 
 隣で突然、君が歌いだしたあの曲。なんて曲?って聞いたら、秘密って返された。
 だからこの曲を聴くときには、必ず、君が隣に居た。それが自分にとっての、当たり前だった。
 そんな当たり前も、あと少しで終わる。
 終わってしまうには、流石に早すぎると、何度も何度も思うけど、意外とこんなものかもしれないね。
 だからせめて、二人だけのエンドロールは豪華なものにしよう?
 夕日が赤くて綺麗な浜辺で歩いたり、イルミネーションを見たり、駆け足の季節を感じたりしてさ。もちろん、あの曲も一緒に。きっと楽しいよ。
 失いたくないって思うはずだよ。この時間が終わらなければいいなって思うはずだよ。
 きっとね。……うん、やっぱり。
 まだまだ、自分たちのエンドロールには早すぎるよ。だから終わらせないでいよう。約束だ。
 自分はそんな感じの、
 
 意外なオチに賭けている



⸺⸺⸺
スピッツの『エンドロールには早すぎる』の歌詞を入れてます。お題を見て、この曲がずっと頭の中に流れてしまったので、書いちゃいました。うまく組み込めない。
ぜひ、聴いてみてください。すっごい優しいです。
スピッツは、本当に聴く精神安定剤。歌詞も曲も優しくて、ちゃんと聞いたら中々すごいことを言っているものもあるけど、それも含めてとても良いです。ライブ行ってみたい絶対楽しい。
そんなこんなでテストやばいです。

11/27/2024, 4:52:01 PM

作品17 愛情
 

 「僕は多分、比較的恵まれた環境で生まれ育ってきた。ただ一つ足りなかったものと言えば、親からの愛情かもしれない」
 君からの告白の返しとして、僕はそう切り出した。
 「だってしょうがないよ。僕なんかよりもずっと立派な兄達に愛をばら撒いたほうが、みんな幸せになるはずだし。僕は何もできない役立たずだから、もらっても愛の無駄遣いになるだけだし」
 告白の緊張からなのか、君は顔を真っ赤にしてる。それでも僕の話に、耳を傾けてくれる。
 ただそれだけのことなのに、なぜだか胸がぎゅうっと苦しくなって、嬉しくなる。
 「だからなのかな。正直言って愛っていうのが、僕にはよくわからないんだ。それどころか、とてつもなく憎らしくて気持ち悪いものに感じてしまう」
 目の前で、君が泣きだしてしまった。やめて、泣かないで。傷つけたいわけじゃないんだ。
 「ごめん、傷つけて。でも、君が本気で僕に向き合ってくれるから、僕も本気で君に返したい」
 ポッケに入っていたハンカチを、そっと差し出す。プレゼントって戯言を言おうとしたけど、意味を思い出してやめた。
 君が落ち着いたのを確認して、続きを話し始める。
 「少し訂正させてくれ。愛ってのは素晴らしいものだと思うよ。流石に僕でも、そう思う。なんなら、人間が行える行為の中でも、特に尊ぶべきものだと思ってる」
 初めて、僕の考えをありのまま、他人に伝える。少し怖いな。声が震えちゃうや。
 「でも、それが僕に向かれると思うと、やっぱり、気持ち悪いんだよ。本来なら幼い頃についてるはずの、愛の免疫がないからかな」
 まさか幼いときのことが、ここまで僕のことを苦しめせるなんてね。分かっていたなら、こうならないですんだのに。
 「だからごめん。君のそれには応えられない」
 僕だって本当は、みんなみたいに愛情を交換し合いたかった。君のそれを、笑顔で受け止めたかった。
 「君のことは、友人の中でも、特に特別な存在だと思ってる。多分これは、世間で言う好きなんだと思う。でも、どの好きなのかはわかんないし、名前をつけたくない。分類したくない」
 仮に、この気持ちが“愛情”ってのからくる“好き”なんだって、知ってしまったら、僕はこの気持ちを捨ててしまいたくなる。消し去りたくなる。無かったことにしたくなる。
 それはやだ。
 だから僕は、言葉を紡ぐ。
 「でもね。」
 いつか君が好きだと言ってくれた笑顔を、無理やり顔に貼り付けよう。これ以上、傷つかせないように。 
 君の祈りに、応えられますように。

 「君の好きは、心地よかったよ」

 告白してくれて、好きって言ってくれて、ありがとう。
 これが僕なりの、精一杯の愛情表現だ。



⸺⸺⸺
作品16 微熱 の君(貴男)目線
 兼
作品3 また会いましょうのせんせー過去編目線

テスト勉強が間に合わないどころか範囲ミスっていて絶望です。

11/26/2024, 12:24:48 PM

作品16 微熱


 やっと伝えられた、この想い。
 どうか冗談だと言って笑ってくれ。それが僕への、唯一の救いになるから。
 どうか冗談だと言って振ってくれ。そうしてくれれば、今まで君が僕にくれた悲しみも、苦しさも、喜びも、恐ろしさも、恥ずかしさも、嬉しさも、ときめきも、辛さも、憎しみも、嫉妬も、何もかも全部、過去のものにできるから。
 だからさ、
 だからどうか今だけは、いつもみたいに困った感じの笑顔を見せてよ。
 僕の胸を、その表情だけで満たしてくれ。
 そしてその表情で、この微熱みたいな淡い思いを、綺麗に消してくれ。
 耳が少し熱くなるのを感じる。
 この祈りを込めて、もう一回言うよ?
 声が震えないように、浅く息を吸う。少しだけ、涙が出てきそうだ。それでも言ってやる。
 貴男へ。このくだらない祈りを聞いてくれ。

 「好きです。」





⸺⸺⸺
性別特に指定なし。
テストがやばくてそれどころじゃない。
誤字はないです。

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