作品20 泣かないで
今夜もいつもみたいに過ごしていた。
いつもみたいに、なんとなくネットに触れて、なんとなく見知らぬ誰かに愛を呟いて、なんとなく気分を動かして、なんとなく口角上げて、なんとなく息をして。
なんとなく生きていた。
それは、いつもと同じ。
だけど今日は、変なのが一つ混じった。なんとなくこのままじゃ駄目だと思うよって。
この“なんとなく”まみれの生活、なんだか悲しくないか?辛くないか?苦しくないか?この生活は明日もきっと同じなんだろ、変わることなどないんだろ?来週も、来月も、来年も。永遠に“なんとなく”。それってなんか、可哀想だな。
そう聞かれたから考えてみる。悲しいどころじゃない。言葉では表しきれないほど苦しいし寂しい。冷たい。それはそんなのだ。と返す。
あーあ。考えちゃった。気づいちゃったね
漠然とした何かが私を襲ってきた。
呼吸が苦しくなってきて、心臓が激しく動き出す。目と口から何かが零れそうになる。汚い。我慢しなくちゃ。
ぎゅうって体を小さくすると、涙が溢れでた。声にならない叫び声も出てきた。
何もかも全く止まらない。嗚咽が出ちゃう。嫌だ。誰かに見られたら変な奴だと思われる。笑われる。心配される。目立ってしまう。みられる。
でもホントは、誰かに見られて、気に留めてもらいたいんでしょ?って、誰かが耳元で言う。誰なんだよお前。
ぐるぐる考えが頭を巡る。そしたらその分、心が締め付けられる。助けて誰か。
こういうときに、慰めと心配の言葉をかけてくれる人が、いればいいのに。泣かないでって言ってくれる人が、いればいいのに。泣くのも認めてくれる人が、いたらいいのに。何も気にしなくていいくらいに強く抱きしめてくれる人が、いたらいいのに。私が一人じゃなければ、いいのに。
私は、これ以上泣きたくない。だれかこの気持ちをとめて。
今夜は一人、部屋の真ん中でうずくまる。
わたしはこどくだ。
作品19 冬のはじまり
目の前で風が踊り始めたから、風花がとてもキレイだなと思っていた。すると目の前に、キラキラ輝いた黒髪が通った。美しかった。
そして私は、髪に六花を付けたキミに、見惚れてしまった。私の心に、春が来た。
話し掛けようと、キミの隣に行く。けれでも、すでに先客がいたようだ。
隣にいるのは、キミの恋人さん。
赤くなった鼻を隠して、白色の息を吐く。
あっという間に、冬が始まっちゃった。
私の季節は、巡るのが早すぎる。
⸺⸺⸺
薪割りから解放される季節の始まりです。
きれませんように。
作品18 終わらせないで
映画で言うなら 最後の場面
終わりたくないよ スローにして
こんな当たり前が大事だってことに
なんで今気づいてんの?
隣で突然、君が歌いだしたあの曲。なんて曲?って聞いたら、秘密って返された。
だからこの曲を聴くときには、必ず、君が隣に居た。それが自分にとっての、当たり前だった。
そんな当たり前も、あと少しで終わる。
終わってしまうには、流石に早すぎると、何度も何度も思うけど、意外とこんなものかもしれないね。
だからせめて、二人だけのエンドロールは豪華なものにしよう?
夕日が赤くて綺麗な浜辺で歩いたり、イルミネーションを見たり、駆け足の季節を感じたりしてさ。もちろん、あの曲も一緒に。きっと楽しいよ。
失いたくないって思うはずだよ。この時間が終わらなければいいなって思うはずだよ。
きっとね。……うん、やっぱり。
まだまだ、自分たちのエンドロールには早すぎるよ。だから終わらせないでいよう。約束だ。
自分はそんな感じの、
意外なオチに賭けている
⸺⸺⸺
スピッツの『エンドロールには早すぎる』の歌詞を入れてます。お題を見て、この曲がずっと頭の中に流れてしまったので、書いちゃいました。うまく組み込めない。
ぜひ、聴いてみてください。すっごい優しいです。
スピッツは、本当に聴く精神安定剤。歌詞も曲も優しくて、ちゃんと聞いたら中々すごいことを言っているものもあるけど、それも含めてとても良いです。ライブ行ってみたい絶対楽しい。
そんなこんなでテストやばいです。
作品17 愛情
「僕は多分、比較的恵まれた環境で生まれ育ってきた。ただ一つ足りなかったものと言えば、親からの愛情かもしれない」
君からの告白の返しとして、僕はそう切り出した。
「だってしょうがないよ。僕なんかよりもずっと立派な兄達に愛をばら撒いたほうが、みんな幸せになるはずだし。僕は何もできない役立たずだから、もらっても愛の無駄遣いになるだけだし」
告白の緊張からなのか、君は顔を真っ赤にしてる。それでも僕の話に、耳を傾けてくれる。
ただそれだけのことなのに、なぜだか胸がぎゅうっと苦しくなって、嬉しくなる。
「だからなのかな。正直言って愛っていうのが、僕にはよくわからないんだ。それどころか、とてつもなく憎らしくて気持ち悪いものに感じてしまう」
目の前で、君が泣きだしてしまった。やめて、泣かないで。傷つけたいわけじゃないんだ。
「ごめん、傷つけて。でも、君が本気で僕に向き合ってくれるから、僕も本気で君に返したい」
ポッケに入っていたハンカチを、そっと差し出す。プレゼントって戯言を言おうとしたけど、意味を思い出してやめた。
君が落ち着いたのを確認して、続きを話し始める。
「少し訂正させてくれ。愛ってのは素晴らしいものだと思うよ。流石に僕でも、そう思う。なんなら、人間が行える行為の中でも、特に尊ぶべきものだと思ってる」
初めて、僕の考えをありのまま、他人に伝える。少し怖いな。声が震えちゃうや。
「でも、それが僕に向かれると思うと、やっぱり、気持ち悪いんだよ。本来なら幼い頃についてるはずの、愛の免疫がないからかな」
まさか幼いときのことが、ここまで僕のことを苦しめせるなんてね。分かっていたなら、こうならないですんだのに。
「だからごめん。君のそれには応えられない」
僕だって本当は、みんなみたいに愛情を交換し合いたかった。君のそれを、笑顔で受け止めたかった。
「君のことは、友人の中でも、特に特別な存在だと思ってる。多分これは、世間で言う好きなんだと思う。でも、どの好きなのかはわかんないし、名前をつけたくない。分類したくない」
仮に、この気持ちが“愛情”ってのからくる“好き”なんだって、知ってしまったら、僕はこの気持ちを捨ててしまいたくなる。消し去りたくなる。無かったことにしたくなる。
それはやだ。
だから僕は、言葉を紡ぐ。
「でもね。」
いつか君が好きだと言ってくれた笑顔を、無理やり顔に貼り付けよう。これ以上、傷つかせないように。
君の祈りに、応えられますように。
「君の好きは、心地よかったよ」
告白してくれて、好きって言ってくれて、ありがとう。
これが僕なりの、精一杯の愛情表現だ。
⸺⸺⸺
作品16 微熱 の君(貴男)目線
兼
作品3 また会いましょうのせんせー過去編目線
テスト勉強が間に合わないどころか範囲ミスっていて絶望です。
作品16 微熱
やっと伝えられた、この想い。
どうか冗談だと言って笑ってくれ。それが僕への、唯一の救いになるから。
どうか冗談だと言って振ってくれ。そうしてくれれば、今まで君が僕にくれた悲しみも、苦しさも、喜びも、恐ろしさも、恥ずかしさも、嬉しさも、ときめきも、辛さも、憎しみも、嫉妬も、何もかも全部、過去のものにできるから。
だからさ、
だからどうか今だけは、いつもみたいに困った感じの笑顔を見せてよ。
僕の胸を、その表情だけで満たしてくれ。
そしてその表情で、この微熱みたいな淡い思いを、綺麗に消してくれ。
耳が少し熱くなるのを感じる。
この祈りを込めて、もう一回言うよ?
声が震えないように、浅く息を吸う。少しだけ、涙が出てきそうだ。それでも言ってやる。
貴男へ。このくだらない祈りを聞いてくれ。
「好きです。」
⸺⸺⸺
性別特に指定なし。
テストがやばくてそれどころじゃない。
誤字はないです。