空模様。綺麗。明日も綺麗だといいな。明日があるといいな。でも、模様って変わらなきゃ模様じゃなくて事実なのかな。何事も変化を通じてでしか形を捉えられないのかな。昨日から変わらない自分しか自分と呼ばないなら。今これを読んでいるあなたはあなたなのかな。あはは。おやすみ。
1つ、部屋がある
部屋には整然と
自転車が並んでいる
自転車は1台1台異なって
同じ自転車はひとつもない
それが、真横にズラっと
部屋の端まで停めてある
壁にぶつかり真横に曲がり
ぐるっと1周置いてある
天井を見上げると
窓(?)のようなものがあって
それが出口だと直感する
自転車を手押すと
バタバタと倒れ始めた
転倒は1周ぐるっとおこり
目の前までやってきた
倒れちまった自転車を
1台1台積み重ね
自転車の山を作った
自転車の山に登ると
ガシャンガシャンと
金属のぶつかる音がした
ああ、1番下の自転車は
へしゃげてしまって
とても乗れやしないだろう
そう思うと少し悲しい
自転車に乗って
窓まで登る
窓を覗くと
へしゃげた
後輪が
見えた
#自転車に乗って
昼休みの音楽室の隣の教室。そこをこっそり借りてお弁当を食べるのが好きだった。音楽室から部活なのか趣味なのかはわからないけれど楽しそうにピアノの鍵を叩く音が聞こえる。知ってる曲が演奏されたり、知らない曲が演奏されたり。昔ピアノを習っていたからそこそこ曲の知識には自信があった。でも知らない曲の方が楽しそうに演奏していて聞いてて気分が良かった。ピアノが苦痛になり辞めた身としては尊敬と、ほんのちょっと嫉妬心みたいなのがあった。そんな昼休みが好きだった。
ある日からピアノの音が聞こえなくなった。しーんと静まり返っている音楽室。どうしちゃったんだろうと思ったが、1度も足を運んだことがないので真相を知るために教室を尋ねるというのは出来なかった。そんな日が数日続いたある日、音楽室から音が聞こえた。これはあの人の伴奏じゃないっていうのはわかったけど、堪らず、音楽室へ駆け込んだ。ゆったりと演奏していた初老の彼は珍しい来訪者に演奏の手を止めた。そこで、毎日のように弾かれていたピアノのこと、最近弾かれることがなくなったこと、いろいろ知った。知りすぎてしまった。どうやら病弱だったらしい。
悲しさというか喪失感というか、いたたまれない日々を数日過ごした。数週間、数ヶ月と時間は飛ぶように過ぎてその日は突然やってきた。下校時刻、自転車で音楽室の前を横切った時、その音が、その演奏が聞こえた。彼の曲だ。そう思った私は自転車を停めその場に立ち尽くす。窓からは真っ暗な音楽室。やっぱりこの曲は、と思った。
私の青春と言えば、あいみょんの「麦わらの帽子の君がー」っていうフレーズが鳴り響いていた。うん、マリーゴールドって歌の歌詞なんだけど。君を花に例えた素敵な歌だなって思った。多分、夏の歌なんだと思う。麦わら帽子といえば夏だし。とはいえ、夏に麦わら帽子を被る人なんてそう居ない。素敵な君に麦わら帽子を被せても、唾の広い帽子でも、ニット帽でもきっと素敵なんだろうなって思う。でも、夏!って感じるのはやっぱり麦わら帽子だなって思う。もうほぼ誰も被っちゃいないのに。
失ったもの。あの日の夜の蛍とか、みんなで集まった放課後とか、家の裏の駄菓子屋とか。想像するだけで、あの頃、あの季節を思い出させる。でも、もう今は無い。私はあの頃の蛍を、放課後を、駄菓子屋を知っている。だから思い出すことが出来る。きっと、麦わら帽子=夏もいつかの記憶なんだろう。たぶん、保育園かな。でも、将来のみんなが麦わら帽子って言葉を聞いても夏を想像できなくなるのはちょっと悲しいな。ブランコって春の季語だったっけ。
#麦わら帽子
淡い光が眼前を覆い尽くした。身体はふわふわと揺られ、揺れに身を任せ、丸まり、眠る。気がついたら身体は世界に投げ出され、光の目隠しはいつのまにか取り払われていた。私がちっぽけなここちよさを失った悲しみでわあっと泣き出すと、周りの大人達は嬉しそうに微笑んだ。一緒に泣く女もいた。少し暖かい気持ちになった。心地よくもなった。
暫くたって私が歩けるかどうかぐらいになった。なんとなくソファーによりかかってる手を離してみたくなった。ぐらぐらと足元は揺れ、今にも倒れそうになった。いつもより高い視点は少し怖くて、とても不思議だった。それを見ていた両親は慌ててカメラを構え、母はこっちにおいでーと声をかける。おぼつかない足取りで母の方へ進む。瞬間、床が目の前に迫った。べちんっ、かなり、とてーも痛かった。痛かったから、わんわん泣いた。2人とも駆け寄って慰めてくれた。なんか知らんけど記念日になった。
両親はいっつもなんか私に話しかけてくれた。何を言ってるかは分からないけど私も真似してみようと思って口に出してみる。私がなにか言おうとすると両親は押し黙った。私が口を動かし終えると、母は嬉しそうに微笑み、父もまたどこか悲しそうに微笑んだ。2人とも私の頭を撫でてくれた。母が勝ったらしい。
#上手くいかなくたっていい