藁と自戒

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淡い光が眼前を覆い尽くした。身体はふわふわと揺られ、揺れに身を任せ、丸まり、眠る。気がついたら身体は世界に投げ出され、光の目隠しはいつのまにか取り払われていた。私がちっぽけなここちよさを失った悲しみでわあっと泣き出すと、周りの大人達は嬉しそうに微笑んだ。一緒に泣く女もいた。少し暖かい気持ちになった。心地よくもなった。

暫くたって私が歩けるかどうかぐらいになった。なんとなくソファーによりかかってる手を離してみたくなった。ぐらぐらと足元は揺れ、今にも倒れそうになった。いつもより高い視点は少し怖くて、とても不思議だった。それを見ていた両親は慌ててカメラを構え、母はこっちにおいでーと声をかける。おぼつかない足取りで母の方へ進む。瞬間、床が目の前に迫った。べちんっ、かなり、とてーも痛かった。痛かったから、わんわん泣いた。2人とも駆け寄って慰めてくれた。なんか知らんけど記念日になった。

両親はいっつもなんか私に話しかけてくれた。何を言ってるかは分からないけど私も真似してみようと思って口に出してみる。私がなにか言おうとすると両親は押し黙った。私が口を動かし終えると、母は嬉しそうに微笑み、父もまたどこか悲しそうに微笑んだ。2人とも私の頭を撫でてくれた。母が勝ったらしい。

#上手くいかなくたっていい

8/9/2023, 4:51:53 PM