なくてはならないもの。あなたにとっての太陽はなに?
健康な精神を維持するためにも太陽は必要だが、
あまりに強い陽射しをもたらす太陽もある。
なくてはならないが、ありすぎても持て余すのだ。
#太陽
鼻を掠めるのは少し沈んだ空気と清涼感のある消毒液の香り。遠くの窓際に生けられたキキョウも微かに香る。聞こえるのは点滴が1粒ずつ落ちる音、心電図モニターの電子音、等間隔で聞こえる音は嫌でも私に時間を意識させる。あと、どれほど。ここに来て、なんども考えた疑問を頭上に浮かべ、ゆっくりと泳がせてみる。思考の波に揺られて、しばらく進み、そのうち、風は、ぴったりと止んだ。凪だ。しーんと静まり返った船上で、私は空を眺める。ウミネコが悠々と羽ばたきながら、私に語りかけてきた。いつまでも、生きるといいよと。私はなにも返答をしなかった。ただ、気持ちよさそうに空を泳ぐウミネコを、羨望の眼差しで眺めていた。ガチャり、と勢いよくドアが空いた。採血の時間らしい。急に意識を取り戻したからか、上空数十米から落下したように感じた。身体が重く、動かない。辺りは、病室の重っ苦しい空気が充満し、息を吐くと呼吸器が白く曇った。看護師が血を抜いてるらしい。左腕がさっと冷え、数秒後にはまた血の流れるのを感じるかのように、温かくなる。潮の香りは遥か遠く、私の船出はまだらしい。
#病室
窓から差し込む光がカーテンを貫き、心地よい暖かさが顔を包む。のっそりと上体を起こし、伸びをする。ベットから身体を降ろしてキッチンへと向かう。冷蔵庫から珈琲を取り出すと、徐に口へ運ぶ。苦味が口から全身へと循環し、忽ち意識は覚醒する。カーテンを勢いよく開け、部屋中を光が包む。今日はいい日だ。鳥たちは歌い、花は咲きほこる。こんな日には、、、
夜が明けた。硝煙の匂い、大地は揺れ、辺りには明瞭に陰鬱な瘴気が立ち込めている。前方に視線をやると、キャタピラによる轍が、何本か真っ直ぐと走っている。最前線で一層大きな爆発音がした。血で血を洗う戦いその先にあるものなどわからない。私達は愛国を誓う戦士であるものの、所詮は労働者に過ぎないからだ。どの道、どう足掻いても親友は帰ってこない。圧倒的な優勢。休憩時には酒瓶を片手に歌い出すものも現れるほどの優勢だ。時期に本国に帰れるだろう。しかし、爆死した親友の無惨な死体だけは網膜に焼き付き、アルコールでは流しきれなかった。見た事もない程に眩い閃光が辺りを埋めつくした。
空を見上げると常に焼夷弾が降っている。辺りの森林は全て焼き尽くされ、家屋も焼け落ち、燃えるものはもうないと言うのに。これが工業大国による戦争なのだろう。あるものは使ってしまえの精神で過剰とも言える膨大な量の兵器を投入しては更なる兵器の開発への足がかりにする。同じヒトの死であるというのに、家族全員に病院で看取られ、孫の号泣を傍らに息を引き取る老人と、荒野を掛け地雷を踏み抜き跡形もなく爆散する少女とでは価値が変わってしまう。兵器によって殺される命は1人、2人と多くなるにつれ、354,000、354,001と唯の数字へと変わっていく。ぬくぬくとした実験室でデータを見つめる彼らにとって数字の奥に沈んだ人間の顔なぞ想像したくないのだろう。その354,000人の人間1人1人に家族がいて、愛し、愛され産まれてきたと言うのに。そんな戦争ももうじき終わる。私達の大敗で終わる。だけど最後に神様が救済をして下さる。愚かな人類に鉄槌を今1度、想像を、
この話は、よく小、中学校の平和学習向けにするお話なのだが、最近の子供たちは読解力が乏しいのか、それぞれを別の話だと捉えてしまったり、はたまた脈絡がなさすぎてよくわからないなどと言ってまともに取り合おうとしないのだ。その癖、漫画ばっかり読んでいるからなのか、「伏線」がないだとか、「説得力」がないだとか言う。それは「唐突」にやってくる。「伏線」など張る暇もなく。「説得力」のある破壊などあるもんか。
それは今日にもやってくる。
-焼け焦げた大学ノートより、題「日常」-
#日常
ごちゃごちゃ何かが結びつき、
あなたは、産まれました。
世界に、産み落とされました。
あなたは、たちまち泣きました。
そりゃもう、わんわん、泣きました。
なんでそんなに泣くのかと、
母だか、父だか、不思議がり、
あなたを、高く掲げると、
あなたは、きゃっきゃと笑います。
そりゃもう、きゃっきゃと笑います。
母だか、父だか、喜んで、
あなたを、そっと抱えます。
あなたは、すやすや眠ります。
そりゃもう、ぐっくり眠ります。
母だか、父だか、安心し、
ため息をそっとひとつ、
ため息を、そっとひとつ。
#未来
狭い部屋、無造作に本が敷き詰められた本棚の上には修理中の壊れたラジオ、部屋の真ん中にある小さな机には食べかけの朝ごはん、本棚の隣にはお気に入りのレコードが山積みになっている。家にプレイヤーは置いてないんだけどね。
わたし好みの服が部屋中に散らばっている。そりゃわたしが買ってきた服だから好みで当然なんだけど。
なんとなくテレビをつけた。家の調子の悪いテレビは数瞬、砂嵐を映した後に正常な画面に切り替わった。たぶんドラマ?をやっている。熱心にテレビを見ないのでよくわからん。
新たに大学生になった子が周りに馴染もうと必死に努力して、だんだん苦しくなって、疲れちゃって、壊れちゃうお話だった。
くぅ、泣かせるぜ、だってこれは
#1年前