ミロワール

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8/5/2024, 2:01:40 PM

【鐘の音】

この場所で泣き出してから休みなく泣き続けてきた

呼吸の仕方を教わっていないから

子守歌替わりに聞こえる暴言の意味も分からないから

どこかの物語のように助けてくれる人もいないし

僕に足を止める人もいないことも分かっていた

だから目をぎゅっと瞑って

誰も居ないどこかに行きたいと願った



夢の中で訪れた地図に載っていない

どこかの街の大きな時計台

柔らかな風が葉を揺らす音と共に聞こえる鳥のさえずり

時計台の主は大きな髪を風に靡かせて僕を見て微笑む

世界の全ての光が彼女から生み出されるようだった

今まで触れたことも無い温かな光に

自分が消えてしまうかと思うほどに

誰も居ないどこかを願ったはずなのに

そこは僕と彼女2人の世界だった

何百年も前から続く素敵なおまじないらしい

誰もいないはずの時計台が鐘を鳴らして

それを合図に歌いだす彼女

誰にも祝われたことの無い生を

初めて祝福された気がした

誰かの世迷言さえも本物に変わる瞬間だった

幸せも束の間、目覚めの怒号が世界を壊していく

思わず手を伸ばす僕に変わらず微笑みをくれる彼女

『また逢えるから』そう言われた気がして

勝手に片側だけの約束を結んだ



目を開いていつもと変わらない景色の色を見る

だけどもう涙は止まっていた



2024-08-05

8/4/2024, 10:45:04 AM

【つまらないことでも】

ずっと独りで過ごしてきてさ

紡げる言葉なんてたかが知れてて

きっと素晴らしい言葉に囲まれているきみには

とても退屈なものだろうに

こんなつまらないことでも

いつもと寸分違わずきみは笑ってくれる



2024-08-04

8/3/2024, 1:14:24 PM

【目が覚めるまでに】

何度も命を亡くす夢を見ていた

歪んだ視界越しに潰れた自分を幾度となく見下ろした

物心がつく前からかけられた

呪いの言葉が蝕んで見せる風景

結末がわかっている夢でも現実よりよっぽど幸せだった



いつからかそばに居てくれた安息をくれるウタ

意識を失う間際に手から伝うその体温に

どれだけ救われることか

カタチを持たないきみに触れられる唯一の時間

僕を何度も貶める人間がひしめきあう現実に

この時間以上の幸せがあるのなら教えてよ

僕の目が覚めるまでに

もう居ないはずの僕が今日も誰かに殺される前に



2024-08-03

8/2/2024, 2:05:45 PM

【病室】

誰にも聴こえない声がきこえるらしい

誰にも見えないものが見えているらしい

真っ白い空間で完璧に管理され

他者と違うのだと強制的に自覚させられる

果たしてどちらが治療を受けているのか

皆自分勝手に僕が期待通りの言葉を行動を取るものだと

白い色が正だというくせに

その内に孕んだどす黒い色が口を動かして

好き勝手に部屋を汚い色で染めていく

そうやって押し込められるほどに

遠かった声も瞼の裏の色も存在感を増していく

人間となにかの狭間で呼吸が窮屈になっていく

僕が居なくなることが正しいのならそうしてしまおうか

毎日の診察でもう限界のはずなのに

耳元まで近づいた声が僕をどうしても引き留める

もしこの声に捕まったら終わりが来るのならどんなに幸せなのか

点滴で流し込まれる”正常な人”の思考回路が混ざりこんで

ここが現実なのか夢なのかもはや僕にはわからない

目前に迫っている綺麗な色がまだ生を歌うから

注ぎ込まれる偽物の栄養に抗って

真っ白い壁を汚い汚れがしみ込んだ壁を彩る

くぐもった思考回路でさえ救いが

どちらにあるのかは明白で

こんな囲まれた場所から抜け出すためきみの手を取った



2024-08-02

8/1/2024, 2:39:03 PM

【明日、もし晴れたら】

ぽつりぽつりと落ちる音

裏腹に浮かび上がる心の音

誰に伝えるでもなかった言葉を

自分だけでも忘れないように呟いたら

雨粒に混ざって地面に色を付ける

雨の日だけはずっと変わらない

まるであの時をずっと取っておいてくれるきみのように

でも変わらないものなんてないことも分かっていて

僕もそれになってしまうのがどうしようもなく怖いから

だから明日、もし晴れたらきみに逢いにいこう

どんなに景色が変わっても

僕はあの時と変わらない気持ちでいると伝えに



2024-08-01

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