【病室】
誰にも聴こえない声がきこえるらしい
誰にも見えないものが見えているらしい
真っ白い空間で完璧に管理され
他者と違うのだと強制的に自覚させられる
果たしてどちらが治療を受けているのか
皆自分勝手に僕が期待通りの言葉を行動を取るものだと
白い色が正だというくせに
その内に孕んだどす黒い色が口を動かして
好き勝手に部屋を汚い色で染めていく
そうやって押し込められるほどに
遠かった声も瞼の裏の色も存在感を増していく
人間となにかの狭間で呼吸が窮屈になっていく
僕が居なくなることが正しいのならそうしてしまおうか
毎日の診察でもう限界のはずなのに
耳元まで近づいた声が僕をどうしても引き留める
もしこの声に捕まったら終わりが来るのならどんなに幸せなのか
点滴で流し込まれる”正常な人”の思考回路が混ざりこんで
ここが現実なのか夢なのかもはや僕にはわからない
目前に迫っている綺麗な色がまだ生を歌うから
注ぎ込まれる偽物の栄養に抗って
真っ白い壁を汚い汚れがしみ込んだ壁を彩る
くぐもった思考回路でさえ救いが
どちらにあるのかは明白で
こんな囲まれた場所から抜け出すためきみの手を取った
2024-08-02
8/2/2024, 2:05:45 PM