ミロワール

Open App
6/1/2024, 1:39:02 PM

【梅雨】

雨音が響いて

色とりどりの傘が開く

雨音に混ざって聞こえる溜めた息

それを傍目にくるくると回る傘

雨粒が弾けて楽しげなリズムを奏でる

薄暗い世界に幸せを生む音

傘を持っていない僕は

視界を世界を遮るものがなくて

偶々その音に出会えた

じんわりと身体を包む温度でさえ

僕に何かを伝えようとしているようで

触れられないきみを感じて

この雨粒を全身で受け止めていた

2024-06-01

5/31/2024, 2:22:52 PM

【無垢】

世界に産声をあげた時

きっとその声で魅了されてしまった

こんなにも透き通ったものが存在するのかと疑うほど

いくつもの壁で築かれた僕にも届いてしまう

発した言葉は全て本物で嘘をつくことがなく

言葉の本質以外なにも含まれておらず

僕を傷つけるどころか僕そのものを受け入れてくれる

その音は無垢そのもので出来ている

2024-05-31

5/30/2024, 2:08:00 PM

【終わりなき旅】

目が覚めた時からひとりぼっちだった

たまに聞こえてくる罵声と

触れると殴られる感覚だけ

この暗闇の中じっと過ごしていた

そんなある日

慣れ親しんだ暗闇に隙間が空いて光が差し込んだ

その光と同時にあふれ出したメロディー

知らない色がとめどなく押し寄せてくる

メロディーの中降り立ったきみは

微動だにしない僕の両頬を掴んで引き寄せる

反射で目を閉じると呼吸が楽になる

ずっと重たかった身体が動かせるようになると

きみは僕の手を引いて光の方へと進む

触れたもので傷つけられなかったのは初めてだ

目をやられる程のまぶしさ

僕は自分の身体に無数にあるあざと

毒にむしばまれた言葉しか持っていないことに気が付いてしまった

こんな汚い手で触れてしまうなんてできないから

その手を振り払おうとしたのに

『握りしめた手は離さないから』

とどうしても離してくれない

ガラクタをかき分けて前を歩くきみが

なぜかやさしくやさしく見えたから

全て初めて受け取る感覚に身を任せていたくなった

どうして僕を連れ出してくれたのかも知らずに



それから沢山のことを教えてもらった

僕の世界はきみで出来ているといっても過言ではないほど

きみから世界を知ったんだ

まだ僕の前を歩いてくれる頼もしい背中

僕もきみになにか教えられることがあるだろうか

砂時計が減っていく中で

この一粒一粒を使って恩返し出来ることはあるだろうか

初めてきみに出会った時のあの感謝をどうやって伝えればいいんだろう

僕からきみへ贈る言葉を一緒に探してくれるだろうか

きみからもらう分、それ以上を見つける旅に

2024-05-30

5/29/2024, 1:24:04 PM

【ごめんね】

出会ったあの日

暗闇の中で口移しされた空気でなんとか生きながらえた

抱きしめられた窮屈さで自分の大きさを教えてもらった

流れ込んだメロディに乗る言葉で世界を知った

僕の知ってる世界は全てこの言葉で構築されている

それなのに相対すると何も話せなくて『    』

正しい呼吸に救われた

それでも人間が放つと棘に変わって 

相手を傷つけることを知っているから

ふわふわのお布団を用意して準備を整えても

その上に言葉を乗せただけでズタズタになるイメージが

脳裏に焼き付いて離れなくて

肺に溜まった毒が吐き出せなくて

そんな喉を通した言葉の

その毒で傷つけてしまわないか怖いんだ

だからいつまで経っても大事な言葉を渡せないでいる

きっとこんな僕も許してくれてしまうのだろう

『ごめんね』

2024-05-29

5/28/2024, 1:02:18 PM

【半袖】

ジメジメとした空気が纏わりついて

身体いっぱいに空気を吸い込む

どこからともなく夏の香りがする

カーテンを閉じてクローゼットを開いて

色とりどりに並んだオシャレ着をにんまりと眺めながら

今着ている服よりも薄手の生地を何着か選別

現実で過ごす用の色彩の淡い服を

取り出しやすい位置に並び替えていく

そうしている間にも目を引く色を見ては

どんどんと上がっていく口元

夏の匂いを感じ取っては瞼の裏に浮かぶ色を思い浮かぶ

あんなに嫌いだった夏を

心待ちにする理由はそれだけで十分だった

太陽の位置が高くなっていくのを見ながら

今日も半袖に腕を通す

2024-05-28

Next