【終わりなき旅】
目が覚めた時からひとりぼっちだった
たまに聞こえてくる罵声と
触れると殴られる感覚だけ
この暗闇の中じっと過ごしていた
そんなある日
慣れ親しんだ暗闇に隙間が空いて光が差し込んだ
その光と同時にあふれ出したメロディー
知らない色がとめどなく押し寄せてくる
メロディーの中降り立ったきみは
微動だにしない僕の両頬を掴んで引き寄せる
反射で目を閉じると呼吸が楽になる
ずっと重たかった身体が動かせるようになると
きみは僕の手を引いて光の方へと進む
触れたもので傷つけられなかったのは初めてだ
目をやられる程のまぶしさ
僕は自分の身体に無数にあるあざと
毒にむしばまれた言葉しか持っていないことに気が付いてしまった
こんな汚い手で触れてしまうなんてできないから
その手を振り払おうとしたのに
『握りしめた手は離さないから』
とどうしても離してくれない
ガラクタをかき分けて前を歩くきみが
なぜかやさしくやさしく見えたから
全て初めて受け取る感覚に身を任せていたくなった
どうして僕を連れ出してくれたのかも知らずに
それから沢山のことを教えてもらった
僕の世界はきみで出来ているといっても過言ではないほど
きみから世界を知ったんだ
まだ僕の前を歩いてくれる頼もしい背中
僕もきみになにか教えられることがあるだろうか
砂時計が減っていく中で
この一粒一粒を使って恩返し出来ることはあるだろうか
初めてきみに出会った時のあの感謝をどうやって伝えればいいんだろう
僕からきみへ贈る言葉を一緒に探してくれるだろうか
きみからもらう分、それ以上を見つける旅に
2024-05-30
5/30/2024, 2:08:00 PM