【82,お題:秋晴れ】
秋と言ったらなんだろう?
読書の秋 スポーツの秋 食欲の秋 芸術の秋
さまざまな○○の秋があるけど、僕は
”焦燥の秋”
みんな進むのが早いんだよ、もっとのんびり肩の力抜いていこ?
ほら、今日の空も澄み渡っていて綺麗だよ
下ばっか見ないで、たまにはゆっくりしてみたら
【81,お題:忘れたくても忘れられない】
脳裏に強く強く刻み込まれた”あの光景”
何度も「忘れてしまいたい」と願った、だが忘れられない 忘れてはいけない
(...ごめんなさい、僕のせいだ...)
夏の終わりかけ、秋の気配が近付いてくる
最近は風が冷たいね~って、兄と一緒に話しながら歩いてたおつかいの帰り道
横断歩道を渡ってたんだ、教えられた通りに
兄は心配性だから「絶対道路に飛び出しちゃダメだよ!信号機が青になってもちゃんと周りをみてから...」
って、いっつも言い聞かされてた
俺、ちゃんと周りみたよ 手もあげて転ばないように歩いて渡ったんだよ
でも、神様って意地悪だ
「待って!彼方っ!」
「お兄ちゃ...」
ビーーーーッッ!ギギキィィィッッッッ!
耳の張り裂けそうなほどの急ブレーキ音、周りを歩く人々から悲鳴が上がる
突き飛ばされて転がったコンクリートのざらついた感触
誰かの吐いたものが下に落ちる音、誰かがカメラアプリを起動させる音
血肉がひしゃげ、ゴムが擦り切れた不快な臭い
そして..................
あの日から、俺は声がでない 喉に問題がある訳じゃないし、怪我をしたわけでもない
だが、発音しようとすると途端に喉が締め上げられるように息が詰まってしまう
兄の死を間近で見てしまった事が原因とされている
今でもあの光景が忘れられない、呪いみたいに脳に深く刻み込まれていつまでも消えない傷
トラックとガードレールに挟まれて押し潰された、ついさっきまで兄だった肉塊
ドラマで見るような綺麗な死体じゃなかった、見るだけで胃から酸っぱいものが込み上げてくるような
原型がわからない程のぐちゃぐちゃ腐乱死体
何度も忘れたいと思った、でもその度に身を挺して俺を守ってくれた兄の顔がよぎる
...俺が、死んでしまえばよかったのに
フラッシュバックする光景に言い様のない吐き気を感じながら、脳内で再演される”あの日の惨劇”を目に焼き付ける
自分のせいで兄が死んだこと、それを忘れないことが
僕にできる、たった1つの贖罪だと思うから
【80,お題:柔らかな光】
「俺さ、あと1年くらいで死ぬんだよね」
「......は?」
カミングアウトは突然だった
あまりにも自然に、なんでもないことのように言うものだから
驚いてコントローラーを握った手が止まった
その隙に颯爽と必殺技を決め、ゲームセットの音楽が流れる
「え?いや、...マジ?」
「うんマジ、心臓と肺に疾患があって最低1年、運が良ければギリ3年いくかってとこかな」
なんだよそれ、てかしれっと勝ってんじゃねえよ
だが、冗談言うなよと笑うには君の瞳はあまりにも真剣だった
「だからさ、ちょっと付き合ってくんね?」
「何に?」
そう言うと君は、子供がいたずらを思いついた時のような顔でニヤッと笑った
「”死ぬまでにしたい100のこと”」
そこから、僕と君の旅が始まった
君のやりたいことノートには、それはまあいろんなことが書かれていた
駅前のパン屋のサンドイッチを食べる、とか 映画を観に行く、とかならまだ良い
問題なのは、君がかなりの気まぐれだと言うこと
きっとその場で思いついたことを書き留めたのであろうそのノートには、時々思いもよらない願いが転がっていることがある
「いや...水中でラーメンを食べるって...なんでこんなの書いたん?」
「おー、そんなこと書いたなぁ...理由は知らんけど」
と、まあこんな具合である
彼のノートに書かれるがまま、僕たちはあっちへ行ったりこっちへ行ったり
しまいには、学校に忍び込むなんていう一歩間違えば通報ものの行為までやってのけた
でもまあ、運命と言うのは残酷なものだ
「”最低1年”とか言うからさぁ、1年は絶対一緒にいれるって思ったんだけどなぁ...」
柔らかな光に包まれ、穏やかに目を閉じる君を見る
その姿はまるで眠っているようにしか見えないが、きっともう目は覚まさない
「やりたいことリスト、半分も達成してないじゃん」
彼に死に際はとても静かだった
苦しみに喘ぐこともなく、ただただ静かに穏やかに
一度、寝てるだけだと勘違いしたほどに静かな死だった
「まあ、苦しまず逝けたのならよかったよ」
淡く柔い光包まれた君が幸せそうに微笑んだ気がした
【79,お題:鋭い眼差し】
「出てって...もう出てってよ!!!」
バチンッ
「かぁ...さん...?」
「...ッ!その声で私の名前を呼ばないでちょうだいっ!」
ドンッ...
静かな部屋に、僕と母さんの呼吸音だけ響く
母さんに殴られた右頬が、ジクジクと熱かった
「アンタのせいよ!アンタがいるせいでッ...あの人は私を愛してくれないじゃない!」
髪を捕まれて激しく揺さぶられる、強い衝撃が何度も背中を殴り付けた
何で怒られているかなんてわからない、だがこんなに母さんが怒ってるんだ、また僕が何かしてしまったんだろう
「ごめん...なさい...母さん、ごめんなさいッ!」
泣きながら床に頭を擦り付け必死に謝る
大きな怒鳴り声よりも、殴られる痛さよりも、母さんに嫌われてしまう恐怖のほうが何倍も強かった
それしか言えないロボットのように、ごめんなさいを繰り返す僕を
母さんは肉食獣が小さなウサギを見るような、鋭く冷たい眼差しで見下ろした
「...アンタなんか産まなきゃよかった」
そう吐き捨てるように言うと、もう一度僕の体を強く蹴って母さんは奥の部屋に引っ込んでしまった
その日から、って訳ではないと思うけど、今でも僕は人の視線が怖い
今にも飛び掛かって、肉を食いちぎらんばかりの獣の目
劣った物を選別していく鋭い眼差し
みんながみんな僕を嫌ってる訳じゃないんだろうけど、それでもやっぱり
「生きづらい...なぁ」
【78,お題:高く高く】
小さい頃お父さんによく、たかいたかいしてもらったなぁ
あれ結構凄くない?子供と言ってもそれなりに重いだろうし、手ェぷるぷるするよ?
一回も落っこちたことないし、やっぱ親って凄いのな