無音

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【79,お題:鋭い眼差し】

「出てって...もう出てってよ!!!」

バチンッ

「かぁ...さん...?」

「...ッ!その声で私の名前を呼ばないでちょうだいっ!」

ドンッ...

静かな部屋に、僕と母さんの呼吸音だけ響く
母さんに殴られた右頬が、ジクジクと熱かった

「アンタのせいよ!アンタがいるせいでッ...あの人は私を愛してくれないじゃない!」

髪を捕まれて激しく揺さぶられる、強い衝撃が何度も背中を殴り付けた
何で怒られているかなんてわからない、だがこんなに母さんが怒ってるんだ、また僕が何かしてしまったんだろう

「ごめん...なさい...母さん、ごめんなさいッ!」

泣きながら床に頭を擦り付け必死に謝る
大きな怒鳴り声よりも、殴られる痛さよりも、母さんに嫌われてしまう恐怖のほうが何倍も強かった

それしか言えないロボットのように、ごめんなさいを繰り返す僕を
母さんは肉食獣が小さなウサギを見るような、鋭く冷たい眼差しで見下ろした

「...アンタなんか産まなきゃよかった」

そう吐き捨てるように言うと、もう一度僕の体を強く蹴って母さんは奥の部屋に引っ込んでしまった


その日から、って訳ではないと思うけど、今でも僕は人の視線が怖い
今にも飛び掛かって、肉を食いちぎらんばかりの獣の目
劣った物を選別していく鋭い眼差し

みんながみんな僕を嫌ってる訳じゃないんだろうけど、それでもやっぱり

「生きづらい...なぁ」

10/15/2023, 11:33:47 AM