記憶の地図
あの頃、確かに聞こえていたーー水の音。
静かに、でも力強く流れる感情の川は
私の中の記憶という地図を、今日もひそやかに描き続けている。
天を見上げた日
祈りのように願った夢たちは
まだ終わってなんかいなかった。
むしろ今、ようやく翼が風を覚えている。
そして、胸の奥に眠っていた言葉たちが
ひとつ、またひとつと剣のように目を覚ます。
それは痛みではなく、意思。
迷いを切り拓く、確かな決断の光。
私の地図には、もう戻れない道もある。
けれど、進める道はいつだって自分の足で決められる。
水の流れも、空の鼓動も、鋭い意志もーー
すべては私の中に、今も息ずいている。
だから私は歩く。
忘れたくなかった風景を、もう一度迎えに行くように。
「マグカップ」
朝の光が差し込む窓辺
テーブルの上に、ひとつのマグカップ。
ぬくもりはもう消えていて
中身も空っぽ。
手に取ろうとして、やめた。
それはまるで、昨日の夢の続きのようで
触れれば何かが壊れそうだった。
動きたくても、どこへ向かえばいいかわからない。
あのときの決意も、もう少し熱があれば…
でも今はただ、冷めているだけの時間に
身を任せている。
指先に残る、かすかな陶器の感触。
それだけが、今をつなぎとめている。
まだ捨てられないマグカップ。
まだ、終わらせられない気持ち。
君だけのメロディ
足がすくんで 立ち止まった
どちらに進めばいいのか わからなくなった日
世界が遠くて
自分だけ 取り残された気がしてた
でもね
その沈黙の中にも
かすかに響いていたものがある
誰にも聞こえない 君だけの音
それは 強くない
でも 優しい
壊れた夢のかけらと 冷えた夜の涙を
ひとつずつ 溶かすように
静かに 静かに
君の中で 整っていく
焦らなくていい
戻ってもいい
寄り道のその途中で
君だけのメロディは 生まれてるんだ
迷って 傷ついて 癒えていく
その全部が 音になる
そしてきっと
その音は 誰かの心を照らす
灯りになる
「I love」
愛してる。
約束も、まだ形にならない未来さえも。
言葉を交わさずともわかり合えるあのぬくもりを
私は胸の奥で何度も抱きしめている。
あなたと交わした視線の中に
確かに「永遠」の気配を見つけた気がした。
それは、ほんの一瞬のようでいて
時を超えて今も私の中で輝いている。
愛してる。
ただ、そこに在るだけで心を照らしてくれるものを。
恐れも迷いも
その光の前ではただの影になって消えていく。
そしてようやく見つけた。
心の奥に閉じていた扉。
その扉を開ける鍵は、いつも私の手の中にあった。
誰かに渡したつもりだったけれど
本当は最初から、手放してなかったのかもしれない。
愛している。
私という存在を、いま、ここにある奇跡を。
愛することを選んだ私を
私は、心から愛している。
「雨音に包まれて」
静かに降る雨の中、
何かが少しづつ、胸の奥からこぼれていく。
名前も付けられないような不安や、
気づかぬうちに蓄えてしまった重さ。
誰にも言えなかった秘密たちが、
ぽたり、ぽたりと、音を立てて溶けていく。
こんな日は、すべてを抱えなくていい。
知ろうとしすぎなくていい。
「わからないまま」の時間も、
きっと心を守っていてくれる。
消耗と痛みの先に、
何か大切なことがそっと姿を見せる。
それは学びか、あるいは…静かな受容かもしれない。