【言い出せなかった「想い」】
彼はいつも堂々としていて、周りの人々を惹きつける不思議な力を持っていた。
その姿を見るたびに胸の奥が熱くなるのに、言葉にできない想いが喉元で揺れて消えていった。
日々の中で彼を見つめながら、心の中では何度も「好きだ」と呟いていた。
だけど、もし伝えてしまえば、今の関係が壊れてしまうかもしれない。
その恐れが、私の言葉を縛りつけていた。
けれど不思議と、彼と目が合うたびに心が震える。
その瞬間、言葉を超えた何かが確かに通じ合っているように感じるのだ。
まだ伝えられない「想い」。
けれど、私の中で無限に広がるこの感情は、いつかきっと言葉になる。
その日を信じながら、今日も彼の横顔をそっと見つめていた。
【Secret Love】
誰にも言えない気持ちが、胸の奥で静かに育っていた。
それは花のように咲き誇ることを許されず、言葉にすれば壊れてしまう儚いもの。
彼女は不器用に微笑みながら、ただ遠くから見つめていた。
心の中では千もの言葉を練習しても、声に出す勇気はまだない。
そんな彼女の姿は、どこか幼い無邪気さを残していた。
けれど、その無邪気さこそが彼女の強さでもあり、淡い想いを守る盾でもあった。
秘密の恋は、熟練した職人の手仕事ののように、ひとつひとつ積み重なれていく。
外には見えないけれど、心の中では確かに模様を描いている。
やがてその想いが表に出る日が来るのか、それとも永遠に秘められたままなのか。
それはまだ誰にも分からない。
ただひとつ確かなのはーー彼女の世界はその秘密の愛によって、静かに色づいてるということ。
【夏の忘れ物を探しに】
夕暮れの港町。潮の香りに包まれながら、彼女は小さな旅支度を整えた。
胸の奥に残る「大切な何か」を探すために、遠くに向かう決心をしたのだ。
不思議なことに、そのきっかけは夢の中にあった。
夜ごと現れる光の扉。そこには未来へ続く合図のように、ひとつの道が示されていた。
扉を開けるには勇気が必要だと分かっていたけれど、彼女はもう迷わなかった。
やがて、静かな波に揺られながら船は進む。
心に巣くっていた重さは、潮風に溶けていくようだった。
きっとこの度の先で、夏に置き忘れた希望を見つけられる。
そう信じて、彼女は海の向こうへと目を凝らした。
【8月31日、午後5時】
夕暮れの光が街を黄金色に染めるころ
時の境目に立つような感覚が訪れる。
遠い記憶のかけらが、風に混じってささやき
胸の奥に響く音色は、どこか懐かしくも新しい。
いくつもの瞬間が重なり合い
過去と今と未来がひとつに溶け合っていく。
見えない導きは静かに背中を押し
まだ知らない道へと向かわせる。
午後5時の空に漂うその約束は
きっとこれからの自分を照らす灯火になるのだろう。
【見知らぬ街】
見知らぬ街の路地に立つ
行き場をなくした船のように
ためらいは足を重くする
道端に積まれた古い石のように
教えはそこにあるのに
心はまだ受け入れきれない
拙い手で積み上げたものが
形にならず崩れかけても
それこそが旅の始まりだったと思い出す
見知らぬ街は
私を試す問いかけであり
同時に
新しい歩みを照らす灯りでもある