『大事にしたい』
『この世界に産まれた時、既に最後には死ぬことが確定してる。だから本来、全ての物に価値なんて無い』
この主張が正しいものだと仮定すると、本当に大事なのは『死ぬまでに、どれだけ自分という存在をこの世界に残していけるのか』な気がします。
最も分かりやすい方法は子孫を残すことでしょうか?
歴史に名を残すような偉業を成し遂げるのも一つの手かも知れません。
それらが難しい場合は、誰かの記憶に残るような事をするのが現実的でしょうね。
しかしそう考えると、昨今のSNS社会というのは大変ですね。
自分が得意としていることでも、世界を見てみれば、同じ様な特技をもっている人が星の数ほどいます。
その中でより輝くためには、それに見合うだけの実力が必要になってくるのです。
昔よりも多くの人に見てもらえる変わりに、誰かの印象には残りずらくなった社会。
世界中の人と簡単に繋がれるのに……何だか少し寂しく感じます。
『空が泣く』
「雨が降っていた」
時刻は夕方6時30分。
田舎とも都会とも言い難い町の、細いとも太いとも言い難い道の真ん中に、君はいた。
濡れた髪が額に張り付き、雨を含んで色が濃くなった服が、重たそうに地面へと伸びている。
君の左後ろにはチカチカと点滅を繰り返す街路灯があって、少し離れた所でぽつねんと生えているカーブミラーがそれらを映し出していた。
地面のアスファルトを雨が打つ度に、雨粒が爆ぜてキラキラとした光を弾く。
「強い雨が降っていたんだ」
分厚い雲に覆われた空の下、君の近くに出来た小川は、夕日に照らされて鮮やかな朱色を魅せていた。
何時までも降る、雨に見られて。
『喪失感』
死んだらそこでお終いだ。
死のうと思えば何時でも死ねる。
けれど一度死んでしまえば、二度と生きることはない。
何時か誰にでも訪れるそれには、恐怖というより虚しさを覚える。
宇宙が誕生してから137億年。
その中の一瞬にも満たない時間、まるでバグのように産まれてしまった私に、一体なんの意味があるというのか。
死んだらそこでお終いならば、如何して私は産まれてきたのか。
生きていることの方が不自然だと、そう考えるのは自然じゃないのか。
一寸にも満たない虫《バグ》がいて、それが生死について考える。
誰がそんな与太話を、信じて聴いてくれるというのか。
産まれてしまったが故に、死ななければならないならば。
産まれなければ死なずにすんだと、空虚なことを言うのであれば。
この世で命を獲得《喪失》した時、既に私は死んでいたのか。
既に私は死んでいて、終わった世界を生きているのか。
ならば私が感じるこの喪失感も、"夢中に夢を説く"ような、取り留めもないことなのだろう。
※偏見に塗れた物凄く不快な考えの人物が主役となります、予めご了承ください。読まずにとばすことをオススメします。
『世界に一つだけ』
世界に一つだけ……? ッハ、笑える。
本当にそんな大袈裟に捉えていたのか? もしそうなら救いようがないな。
それはお前が思ってるほど特別なものじゃないよ。何処にでも落っこちてるような……なんの価値もないありふれたものの一つだ。
なんならそれはゴミだ。
ゴミだって全く同じものを探しても、そうは簡単に見つからないだろう?
種類もそうだし、汚れや皺の付き方だって何かしらの違いはあるもんだ。
それでもそれはゴミなんだよ。
そんな些細な違いなんてどうでもいいんだ。誰もそんなの気にしない。
ゴミの一つを手に取って、『これは世界に一つだけ!』……なんて言う奴が何処にいる。
誰から見てもそれはゴミなんだ。
ただのゴミ。
ゴミクズ。
廃棄物。
それ以上にはならんのよ。
どんなものにも価値はない。それは単なるお前の妄想だ。
お前が勝手に自分で貼った、それこそなんの価値もないレッテルなんだよ。
……理解したかな? 妄想癖のある"ゴミ"さん?
おっと失礼、間違えた!
"世界に一つだけのゴミ"さん??
『きらめき』 170
心が震え、熱が生じた。
温度は次第に高くなり、ある時を境に火花が散りだす。
きらきら きらきらと輝くそれは、見ていてとても気分が良い。
雅で美しく。
儚くて綺麗だ。
しかし永遠には続かない。
何時かは心の震えも無くなり、熱が冷め、その輝きは過去の栄光へと変わるだろう。
そうして最後に残るのは、焦げ付いた醜い心だけ。
ほらもう……きらめきの残穢はすぐそこに。