『どうしてこの世界は』
誰かの心配をする
義憤を覚える
笑顔を守りたいと思う
みんなが幸せになりたいと願う
誰かが戦争をする
義憤を覚える
笑顔を守りたいと思う
みんなが正義になりたいと願う
愛してる
愛してる
みんな誰かを
愛してる
それでも……
平和を買うには足りない
善悪を語る
神様を騙る
『愛によって世界を救う』
そんなの無理に決まってる
愛が足りてないだけなんて
そんなの嘘に決まってる
誰かの幸せを願いたいと思った
不幸は嫌いだと誰もが話した
笑顔が素敵なら褒められた
絆が大事だと教わった
愛してる
愛してる
この世は愛に
満ちている
それでも……
平和を買うには足りない
『夢見る少女のように』 220
幼い少女が、真っ白な画用紙に沢山の色を乗せていく。
少女が5才になった誕生日に、両親からプレゼントしてもらった色鉛筆。ひとたび少女が手に持てば、それらは少女に理想の世界を届けてくれた。
少女にとって色鉛筆とは、物語に出てくる魔法のステッキとなんら変わりなかったのだ。
少女が夢を描く。
それは"少女"が"お姫様"になる物語かもしれない。
それは"少女"が"魔法使い"になる物語かもしれない。
それは"少女"が"騎士"になる物語かもしれない。
少女は思いつく限りの物語を、何枚も画用紙に描き続けた。しかし……どれだけ理想を思い描いても、何故か幼い少女の心は満たされない。求めているものとは違うような、納得できない何かがあったのだ。
──それから短くはない歳月が経ち、あの頃の"少女"は"女性"へと成長していた。
近く一人暮らしをするにあたって、実家の片付けをしていた時、幼い頃に自分が描いた夢を見つける。
女性はそれを見た時、どうして当時の自分が満足出来なかったのか、今になって少し分かった。
片付けをしばらく休み、大切に保管してあった画用紙と色鉛筆を手に取る。
大人になった少女が、真っ白な画用紙に沢山の色を乗せていく。
少女の夢を描く。
それがどんな物語になるのかは分からない。
しかしそれはきっと……"少女"が"少女"のまま幸せになれる物語なのだろう。
『元気かな』
今頃あの子は何をしてるかな。
当時からみんなに愛されていたあの子。
誰かとお話をするのが好きで、話すときも聞くときも、いつも楽しそうに体を揺らしていたっけ。
笑った時に出来るえくぼを気にしているくせに、こちらに気付くと笑顔で駆け寄ってくる。
いじらしくて可愛くて、とても素敵な子だったんだ。
あの頃から幾許かの時が流れた今に思う。
あの子が愛されていたのは、きっとあの子だったからなんだろう。
……あの子、今も元気にしてると良いなぁ。
『寂しさ』
あぁ、あなた死んだのね
畳の青さが際立つ朝方
遠くの空にはモヤがかかる
掃除が下手な誰かのせいで
埃が舞っているんでしょうね
小鳥 小鳥 小鳥
小鳥がないてる
ないてる
ないてる……
畳の青さが目立たぬ夕方
遠くの街には影がかかる
目立ちたがり屋な誰かのせいで
光が散っているんでしょうね
カラス カラス カラス
カラスがないてる
ないてる
ないてる……
煙たい部屋の壁には染みが
マールボロの煙草のせいね
曇ったガラス戸を覗いたところで
中身なんて分かりやしない
だってあなた──
もう死んだんだから
『最初から決まってた』
何億年も前に出来た
チンタラと生きてる私の宇宙が
ナンタラとかいう難しい名前の
カンタラとかいう難しい法則で
何億年も後に消滅するって……?
未来に行っても
過去に行っても
何方も結果がおんなじならば
これまで紡いだ世界の因果も
ほどけたところで関係ないね
ゲームのボタンをピコっと押したら
どんな物語も一つに収束!
緑の衣の勇者でも
赤い帽子の配管工でも
黄色い電気のネズミでも
電源落ちたら強制終了
人がどうかは知らないけれど
宇宙は何時でもモーマンタイ!