『寂しさ』
あぁ、あなた死んだのね
畳の青さが際立つ朝方
遠くの空にはモヤがかかる
掃除が下手な誰かのせいで
埃が舞っているんでしょうね
小鳥 小鳥 小鳥
小鳥がないてる
ないてる
ないてる……
畳の青さが目立たぬ夕方
遠くの街には影がかかる
目立ちたがり屋な誰かのせいで
光が散っているんでしょうね
カラス カラス カラス
カラスがないてる
ないてる
ないてる……
煙たい部屋の壁には染みが
マールボロの煙草のせいね
曇ったガラス戸を覗いたところで
中身なんて分かりやしない
だってあなた──
もう死んだんだから
『最初から決まってた』
何億年も前に出来た
チンタラと生きてる私の宇宙が
ナンタラとかいう難しい名前の
カンタラとかいう難しい法則で
何億年も後に消滅するって……?
未来に行っても
過去に行っても
何方も結果がおんなじならば
これまで紡いだ世界の因果も
ほどけたところで関係ないね
ゲームのボタンをピコっと押したら
どんな物語も一つに収束!
緑の衣の勇者でも
赤い帽子の配管工でも
黄色い電気のネズミでも
電源落ちたら強制終了
人がどうかは知らないけれど
宇宙は何時でもモーマンタイ!
『 だから、一人でいたい。』
一人でいたいから
一人でいたい
痛くはなくても
独りでいたい
無意味に感じる
トートロジー
理解ができない
いろは歌
本当に?
……本当に
よってらっしゃい
みてらっしゃい
喧騒まぎれた
孤独な独白
毒吐くあなたは
孤独が似合いと
毒吐き独白する孤独
本当に?
……本当に
花一匁と
やってくれるな
あの子が欲しいと
言ってくれるな
かって嬉しい?
バカ言うな
売れ残ったのは――
「じゃんけんぽん!」
――どこの子だ……?
『澄んだ瞳』 215
歩いた軌跡だけが残って
足下はすでに薄氷へ
夢だけ見ていた瞳には
鮮やかな白昼夢が焼き付いている
それには気付かぬふりをしながら
今を生きているなんて嘯いた
怖がりのまま夢に浸って
夢を見たまま湖底に沈む
ひび割れた心に染みていく
冷たい水の感触を憶えても
誰にも見向きもされずに
気付いたふりだけしていたんだ
歩いた軌跡だけが残って
怖がりのまま夢に浸って
足下はすでに薄氷へ
夢を見たまま湖底に沈む
夢だけ見ていた瞳には
ひび割れた心に染みていく
鮮やかな白昼夢が焼き付いている
冷たい水の感触を憶えても
それには気付かぬふりをしながら
誰にも見向きもされずに
今を生きているなんて嘯いた
気付いたふりだけしていたんだ
『視線の先には』
入道雲にゆらり陽炎
視線の先にはなんにもなくて
ただ歩く 歩く 歩く
水筒は持った?
ランプは?
ナイフは?
食料は?
あぁ……靴だけを忘れてる
意味が無い
歩けない
無理なんだ
無理なんだ
灼けた線路を裸足で歩く
視線の先にはなんにもなくて
ただ痛い 痛い 痛い
飛行機雲が空を割る
それを綺麗と誰かが言った
汗の混じった息を呑む
気怠い気分で前を見る
視線の先にはなんにもなくても
なにかを求めて彷徨い続ける
証明がしたい
否定がしたい
「私の旅は無駄では無かった」
そう言えるのならなんでもいい
足裏がただれ
陽炎が邪魔をする
入道雲は変わらずそこで
こちらをじっと見下ろしていた