『冬支度』
秋の終わりに月を見る
夜長の終わりに酒を飲む
やれ、来るぞ
やれ、来るぞ
冷たい冷たい冬将軍
やれやれ
やれやれ
もう、来るぞ
おもてなし
うらはあり
さっさと帰って
おくんなましと
そんな冷たい
無体な言葉
心コロコロ
コロコロ心が
カチコチ
カチコチ
冷えていく
冬の初めに月を見る
夜長の終わりに酒を注ぐ
やれ、来るぞ
やれ、来るぞ
冷たい冷たい冬将軍
やれやれ
やれやれ
もう、来るぞ
『願い事』
みんな元気で長生きできますよーにっ!!
『どこにも行かないで』
蛍火ふわり
闇夜に揺れる
水槽の金魚
願いを泡に
儚きものは
終ぞ残らず
名残の涙
乾かぬままに
薄墨色の梅雨空みちて
この寂しさに名をつけるなら
其れはきっと"あなた"でしょう
遠雷の音
心を揺する
白檀の煙
細くたなびく
尊きものは
終ぞ残らず
名残の涙
乾かぬままに
薄墨色の梅雨空みちて
この寂しさに名をつけるなら
其れはきっと"あなた"でしょう
『どうしてこの世界は』
誰かの心配をする
義憤を覚える
笑顔を守りたいと思う
みんなが幸せになりたいと願う
誰かが戦争をする
義憤を覚える
笑顔を守りたいと思う
みんなが正義になりたいと願う
愛してる
愛してる
みんな誰かを
愛してる
それでも……
平和を買うには足りない
善悪を語る
神様を騙る
『愛によって世界を救う』
そんなの無理に決まってる
愛が足りてないだけなんて
そんなの嘘に決まってる
誰かの幸せを願いたいと思った
不幸は嫌いだと誰もが話した
笑顔が素敵なら褒められた
絆が大事だと教わった
愛してる
愛してる
この世は愛に
満ちている
それでも……
平和を買うには足りない
『夢見る少女のように』 220
幼い少女が、真っ白な画用紙に沢山の色を乗せていく。
少女が5才になった誕生日に、両親からプレゼントしてもらった色鉛筆。ひとたび少女が手に持てば、それらは少女に理想の世界を届けてくれた。
少女にとって色鉛筆とは、物語に出てくる魔法のステッキとなんら変わりなかったのだ。
少女が夢を描く。
それは"少女"が"お姫様"になる物語かもしれない。
それは"少女"が"魔法使い"になる物語かもしれない。
それは"少女"が"騎士"になる物語かもしれない。
少女は思いつく限りの物語を、何枚も画用紙に描き続けた。しかし……どれだけ理想を思い描いても、何故か幼い少女の心は満たされない。求めているものとは違うような、納得できない何かがあったのだ。
──それから短くはない歳月が経ち、あの頃の"少女"は"女性"へと成長していた。
近く一人暮らしをするにあたって、実家の片付けをしていた時、幼い頃に自分が描いた夢を見つける。
女性はそれを見た時、どうして当時の自分が満足出来なかったのか、今になって少し分かった。
片付けをしばらく休み、大切に保管してあった画用紙と色鉛筆を手に取る。
大人になった少女が、真っ白な画用紙に沢山の色を乗せていく。
少女の夢を描く。
それがどんな物語になるのかは分からない。
しかしきっと……それは"少女"が"少女"のまま幸せになれる物語なのだろう。