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『夢見る少女のように』 220



幼い少女が、真っ白な画用紙に沢山の色を乗せていく。
少女が5才になった誕生日に、両親からプレゼントしてもらった色鉛筆。ひとたび少女が手に持てば、それらは少女に理想の世界を届けてくれた。
少女にとって色鉛筆とは、物語に出てくる魔法のステッキとなんら変わりなかったのだ。

少女が夢を描く。

それは"少女"が"お姫様"になる物語かもしれない。
それは"少女"が"魔法使い"になる物語かもしれない。
それは"少女"が"騎士"になる物語かもしれない。

少女は思いつく限りの物語を、何枚も画用紙に描き続けた。しかし……どれだけ理想を思い描いても、何故か幼い少女の心は満たされない。求めているものとは違うような、納得できない何かがあったのだ。

──それから短くはない歳月が経ち、あの頃の"少女"は"女性"へと成長していた。

近く一人暮らしをするにあたって、実家の片付けをしていた時、幼い頃に自分が描いた夢を見つける。
女性はそれを見た時、どうして当時の自分が満足出来なかったのか、今になって少し分かった。

片付けをしばらく休み、大切に保管してあった画用紙と色鉛筆を手に取る。
大人になった少女が、真っ白な画用紙に沢山の色を乗せていく。

少女の夢を描く。

それがどんな物語になるのかは分からない。
しかしそれはきっと……"少女"が"少女"のまま幸せになれる物語なのだろう。

6/8/2025, 3:07:31 AM