内蔵が背中から飛び出しそうで、吐き気がし、体が地面にぶつかりそうになる。
その瞬間、フワッと浮いた。
今度は足から体が投げ出されそうになる。
手を離したらどこまでも飛んでいけるかもしれない。
どこまでもどこまでも
あの雲の向こうへ
どこまでもどこまでも
国境を越え、見知らぬ街まで
「おじさーん、ブランコ替わって」
隣には少年が立っていた。
春の陽気のせいか、知らぬ間にブランコで寝ていたようだ。
行くあてもなく、近くのベンチに座った。
少年がブランコを大きくこいでいる。
私はただそれを目を細めて見ていた。
#18 『ブランコ』
俺はばぁちゃんの言葉を頼りにとうとう南の島までやって来た。
伊良部島…沖縄にある島だ。
ここにたどり着くまでには、かなりの時間がかかった。
全国の伊良部さんに電話をし、何なら北から南へ会いに行ったりもした。
違った、何も得られなかった。
そうだ、もっと単純に考えれば良かったんだ。
旅路の果てにたどり着いたこの島に何かある。
何かは知らんけど。
それを証拠にこの暑い中、黒のスーツに黒ネクタイをし、サングラスをかけた男たちが俺の後をつけている。
とにかくこの伊良部島に何かがある、俺の第六感がビンビンと何かを感じていた。
#17 旅路の果て
それは全く動かない。
動く気配すらない。
それでもそれを見つめ続ける。
それはやはり動かない。
微動だにしない。
諦めずにそれを凝視し続ける。
あなたに届けたい。
時が止まったままの
笑顔のあなたにそれを届けたい。
#16 『あなたに届けたい』
「ばぁちゃん!俺だよ俺!分かる?」
病床のばぁちゃんに声をかける。
寝ているような起きているような、ばぁちゃんは天井に顔を向けていたが、俺の声が聞こえたのか、こちらにゆっくりと視線を向けた。
俺を見つけると、ばあちゃんは安堵した表情で口を動かした。
『………』
「えっ!なに?」
聞こえないので、耳をばあちゃんに近づける。
『…い……』
「えっ!?何?」
『いらぶ…』
「伊良部?」
『I LOVE…』
「?」
ばぁちゃんはそれだけを言うと、いつもの優しい笑みを浮かべて目を閉じた。
それが最後の言葉だった。
ただこの時はまだ、この最後の言葉が世間を揺るがすあの大事件へと繋がるとは思いもしなかった。
#15 『I LOVE…』
この橋を渡れば、新生活が始まる。
背中に夕日を浴びながら、テクテクと歩いていく。
この川を渡ってみたくて、ひとつ手前の駅で降りた。
オレンジ色に反射しているビルディングたちを遠くに眺め、立ち止まった。
橋の真ん中辺りで、大きく息を吸い込む。
桜の香りと排気ガスの臭いが入り交じっていた。
息を吐き出しながら、顔がほころんだ。
再び歩き出す。
さっきよりも大きな歩幅で。
橋の終点には見えないバリアが張り巡らされている。
負けないように、気負わないように
僕は新しい街へと、一歩踏み出した。
#14 『街へ』