「ばぁちゃん!俺だよ俺!分かる?」
病床のばぁちゃんに声をかける。
寝ているような起きているような、ばぁちゃんは天井に顔を向けていたが、俺の声が聞こえたのか、こちらにゆっくりと視線を向けた。
俺を見つけると、ばあちゃんは安堵した表情で口を動かした。
『………』
「えっ!なに?」
聞こえないので、耳をばあちゃんに近づける。
『…い……』
「えっ!?何?」
『いらぶ…』
「伊良部?」
『I LOVE…』
「?」
ばぁちゃんはそれだけを言うと、いつもの優しい笑みを浮かべて目を閉じた。
それが最後の言葉だった。
ただこの時はまだ、この最後の言葉が世間を揺るがすあの大事件へと繋がるとは思いもしなかった。
#15 『I LOVE…』
1/29/2023, 2:35:02 PM