陽月 火鎌

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9/30/2024, 12:26:28 PM

今日も、私の薬は来ない。
「もう二度と会えない」なんて思ったら、約束を破ることになる。だから、約束したからって気持ちで押しつぶす。

「ご飯、出来たよ。扉の横に置いておくから、冷める前に食べちゃいなよ」
「………ありがとう、ございます」

人の気配が去った後にお礼を言うなんて、私って……いい、や。ご飯、食べよう。
⸺やっぱり私…和食、好き……だな。美味しいなぁ…お惣菜みたいだけど。お惣菜でも、別にいいんだけど……ちょっぴり冷たいところもあるし、もう少し長めに温めてほしい、かな。

「ご馳走様………いい加減、外に出てみようかな」

ずっと部屋の中にいたら、いつかは誤魔化しが効かなくなると思うし…気分転換にはなる、かな……?
勇気をだして、部屋の外に出てみる。思ったより、簡単に部屋から出られた。そっか…外って、行くのは簡単だったね。台所で食器類を洗うという目標を立て、目標を完了するため、食べ終えた食器類を持って台所へ向かう。片付けなんて、いつぶりだったかな…。


きっと明日も、私の薬は来ない。だけど仕方ないのだ。あんな、夢でした約束が守られる保証なんて、無いんだから。新しい友達を作るくらいなら、彼も許してくれる…かな?


【新しい友達が出来るまで、あとXX日】

9/29/2024, 12:42:22 PM


「もう、見れないんだな。あの頃の景色は」

かつては沢山の子供が生活していた孤児院の一室。この孤児院に住んでいた彼らは、歴史に残るようなことを成し得た子らもいる。しかしもう殆どの子供たちが寿命を迎え、次の生を始めているのかもしれない。
⸺いくら自分が長命種とはいえ、150年以上も未練たらたらで孤児院を続けていたのは、友達の一途さを笑えないな…割とガチで。

「おいお前、何そこでぼーっとしてんだ!」

指導役の冒険者に叱られ、仕方なく子供部屋を離れ、他の冒険者たちの元へ向かう。今の俺は新人冒険者。先輩冒険者の足を引っ張らずに一人前だと認めてもらうことが、今の目標だ。
いつまでも過去の声を懐かしんでるだけじゃ、ある友達に指差して笑えないからな。


誰一人いなくなった孤児院の一室は静寂に包まれる。
だがしかし、聴けるものが聞くと……子供たちの楽しげな笑い声に包まれるのだと、近隣の村々で噂されている。

【決して朽ちない、不滅の孤児院】

9/29/2024, 2:52:32 AM


⸺では、また。二度とお会いしたくないですが。
「違う、なぁ…バツ」

⸺じゃあね♪ばいば〜い!
「これも違う、かな…バツ」

⸺ふふっ……では皆様、さようなら。
「あぁー、これ…もしっくりこないな。これもバツ」

⸺お前ら、あばよ。
「これも…ちg「台本出来たかー?」どぅわっ!?!?」

「ケケっ、ひっくり返ってらぁ。んなに驚いたのか?」
「お、驚きますって!あぁもう、びっくりした…急に声かけないでくださいよ」
「にゃはは、わるいわるい。んで、どう?台本出来た?」
「それ絶対悪いって思ってませんよね……台本作るって言ったの昨日ですよ。一日二日で出来たら苦労しませんって」
「そか…じゃ、しゃあないか。なら、さっきから何してたんだ?」
「主人公とヒロインの別れのシーンを入れたくて、主人公の性格が分かるような言葉を作ってから他の所に手をつけようと」
「ほぉ〜ん…なら邪魔せんように、下校時間になったらまた来んぞー」
「あっはい。分かりました先輩」
「せいぜい頑張れなぁ…只人くん」
「確かに僕は凡人です、が……⸺それだ!!!」

【別れ方のヒントは去り際に】

9/26/2024, 1:28:24 PM


秋には様々なコトをする言葉がある。
食物読書にスポーツに……冬になる前に色々楽しむ、って意味で色々な秋ができたのかな?
まぁそんなことはそこら辺に置いといて、だ。
多分私は夢を見ている。三日程前に見たクソみたいな悪夢⸺あぁクソ、あの筋肉何なんだよ私は苦手なんだよ!!!⸺ではなく、とっても楽しい夢。好きなだけ食べても体重にならない、夢のような秋の味覚が大量にあるからだ。

すげぇ!旬の食べ物が食べても食べても無くならないし、脂肪になんないし、今まで読んだことある本がずらぁーって並んでて好きなだけ読み返せるから、めっちゃ楽しい!

あっははは〜♪たっのしいー♪



細々とした用事で、義姉と話そうと家を訪ねたのだが…。

「あっははは〜♪たっのしいなぁー♪」
「何?あれ」

すっごい上機嫌で家の中を彷徨い歩く義姉を横目に義兄に詳細を聞く。

「あぁ…アイツが持ってきた果物の中に、幻覚作用があるのがあってさ。俺が選別して捨てる前に食べちゃったみたいで、数十分前くらいからあぁなってる。処置は吐かせるか時間経過しか無いだとさ」
「えぇ……つまり、事細かに記録して、正気に戻ったときに教える気なんでしょ。知ってる」
「せぇーかぁい♪せっかくだし、動物の耳カチューシャでも着けさせようかな?」
「えぇ……(引」

流石、義姉の様々なことを記録して眺め続けるのが趣味の義兄。やってることが変態だ。……褒めてるよ?
⸺でもまぁ、義姉が働いてないなら仕方ない。義兄の美味しい紅茶でも飲んでようっと。

【げんかくのあき】

9/26/2024, 9:25:57 AM

窓の外の景色を見る。
時折真っ暗闇になるのが難点だが、それで差し引いても余りあるほどの良い絶景が見れる。それでも暗闇は困るのだがな。

しかし最近、窓の調子が悪い。グルグルと窓自体が回ったり、二つある窓の一つが暫く暗闇状態が続いたり。一番酷い時は、いつもとは違う暗闇が数日続いたことだな。アレは酷かったな。暫く前はスピーカーの調子が悪い時期が数週間続いたし、そろそろ替える頃かもしれんな。

そんなことを考えていたからか、窓の外に居る人物と、スピーカーから聞こえる声に気づくのが遅れた。

『⸺ルビカ オル ラスヴェ ケルベ ズダック!』

声……呪文に気づいたときにはもう遅く、俺は引きずり出されてしまった。



「ユウ、引きずり出せたぞ!」

一際目立つ青年と、大昔の人間に似たジジイ。ジジイに引きずり出されたのかよ……可愛い女の子が良かったぜ。

「ほ、ホントに俺の中に、魔物がいるなんて……信じらんねぇ」
「なんじゃとお主。師匠の言葉を信じてなかったじゃと!?そこに直れ!鍛え直してやるわ!!!」
「えっわっ!?ちょっ、ジイちゃん、やめ、イタッ!?」

俺、取り憑くやつ間違えたか…?

【窓は視界、スピーカーは耳】

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