「この表現を嫌う人も絶対いるだろうけど、私は敢えて言おう。チョコミントアイスと抹茶アイスを一対一で溶け混ぜあった色が一番好きだ!」
「……アンタ急に何言ってんの?」
「私ちゃんと食べるもん! この混ぜた結果のモノは残したことないから!」
「うわっ駄目だコイツ、書き手が乗り移ってやがる……いやじゃあアタシら誰だよ!?」
「みっちゃーん、アイスカップからこぼれてるよ〜」
「急に素に戻らないでよ亜月!!!」
【書き手を認識する一般人って……】
現実が夢だったら、良かったのに。
物語を貪り食って、寿命なんて無くて、痛覚なんて無くて、そしていつか終わりの無い生に狂う、ステキな夢。
そんな現実だったら、良かったのに。
生をするには働かなければいけなくて、食事も必要で、寿命があって、予想が出来る死しかない、嫌いな現実。
あぁ…今が夢だったら良かったのに、夢じゃないだなんて、虚無すら無い。
【歪んでないよ、セイジョウセイジョウ。】
熱く、煩く。思考の海へと引き摺り込む鼓動の音。
「お前は誰だ? 俺はお前か?」
響く声は自分か他人か。無駄に頭に響く声。
「俺はお前だ。お前は俺だ」
おいコラ勝手に決めつけるな。俺は俺でお前はお前だ。
「いいや、お前は俺を消している。俺はお前だ」
俺が忘れてるだって? んなこたねぇよ。ていうか、随分自己主張が激しい毒だなぁオイ!
「毒……毒とは、とても寂しい呼び方をするなぁ。俺よ」
ハッ、あのウザったらしくてしぶとい野郎が刺してきたナイフだぞ? 毒が仕込まれてねぇ訳がねぇなぁ!!!
「あぁ、どうやら本気で忘れてしまっている様だ……仕方がない。俺を思い出させる為に、過去の追体験でもしようじゃないか、俺よ」
はぁ? 俺がんなモンに付き合う義理はね⸺…ッグ!?
「………さぁ。思い出そうぜ、俺よ。俺の原動力を、俺の怒りを、俺の…⸺復讐をな」
あぁクソッ…意識が、持たな……………。
【多分起きたら闇堕ちしてる人】
心のオアシスという言葉がある。
俺はそれに大層救われていると思う。
どうしてだって? それはな……⸺。
「⸺ハロォー、勇者さま? 筋肉の調子はどおかしら? 目に見えた筋肉を持っていない勇者は”女”として下の下、手入れだけでもちゃあんとしなきゃよ」
「あ、あぁ、ディオンか。……うん、うん。やって、いるよ…」
「そう、良かったわ!」
俺が勇者として召喚された世界。そこは、よくある異世界……⸺などと、召喚時に思っていた考えはその日の夜に消え去った。
ちょっとした欲望を持って、”女”を所望したのが間違いだった。⸺夜、俺の部屋に来たのは、ディオン。反吐が出る程の素晴らしい筋肉を持った褐色のナイスガイ……そう、男だ。
勇者補正で上がった筋力で押し倒そうとしてきたディオンをとっ捕まえ、色々質問攻めにしたことで、ある事実が判明した。
それは、この世界では…その……だぁっクソッ、言いづれぇが言うぞ! 言っちまうからな畜生! ⸺俺達の世界でいう、男が”女”で、女が”男”である認識が、世界共通認識なのだ!!!
まぁつまり明け透けに言うが、娼館に行くと筋肉モリモリマッチョマンが出てくる。見目麗しい痩せ型は一部の好事家に人気だそうだ…知るかぁ!!!
そんな世界だからか、それともこの考えの元でこんな世界になったのか。どうも、子を孕み産み育てるというという行為が力持った”男”の定め、と日曜学校なんかで最初に学ぶらしい。
俺が元いた世界のジェンダー云々の人たちが知ったら、どう思うんだろうか……少なくとも俺は同人誌でもその手の世界は知らなかった。⸺いや二次創作としてのキャラクターの性別が反転した手のモノは知ってるが、男女の概念が反転した世界なんて知らなかったんだが…。
「それにしても、歴代ユウシャさまたちって同性が好きって噂、本当だったんだー!」
「…………ぉぅ」
どうも勇者の血筋が残っていないのは、この世界の常識を知らなかった先達者がいたからの様だ。俺がディオンや旅の道中で出会った面々に、俺とお前達の世界では性別の認識が違うと言っても、頭に?が多数……そうか、そうか。
あぁそうだ…オアシスだ。
俺の精神が保っている理由は、この世界に来る前に見た、数々の美少女アニメのキャラクター達が、俺という精神を保っている……ぶっちゃけ知らなかったら速折れていた自信しかないね、あぁ。
【彼は哀れにも、変な世界で勇者となった】
後書き
世の中の一定層に喧嘩を売ってるような気がしなくもないが、こちらはあくまでも性別の認識の反転をさせただけと言い張るメンタルが……あったらいいネ()
もしも、過去へ戻れるのなら。今すぐにでも戻りたい。
その過去で私は、今度こそ破滅を止めよう。
そして破滅を止めたあとは、私が元いた未来へ戻り、終末を見届けるのだ。
それが、原因を止められなかった愚か者の責任だから。
【後悔には過去という重石が乗っている】