「ほいな〜」
「何しに来やがった義妹氏よ」
「新しい世界…行ってみない?」
「………今私の中で、実際に世界行くか変な薬の実験台になるかの二択なんだけど、どっち?」
「第三の択だ、ばぁーか!おねぇ好みの恋愛要素無くて主人公のキャラクリ自由で適度にシリアス入ったRPGを見つけたから持ってきたんだよ!」
「ほう…つまり新たなファンタジー世界へ冒険出来るって、コト!?」
「そういうこと」
「やる!!!」
「んじゃ、これソフトね。おやつと飲み物持ってくるから横で画面見ててよき?」
「よきよき!さぁって、どんな主人公で冒険に出そっかな〜♪」
「(まぁこのゲーム…指示に従うだけじゃ、ハッピーエンドどころかノーマルエンドに行くのも難しい、超寄り道推奨ゲームなんだけどね)」
「うっわホントだ!髪型も髪色も目の色も豊富だ!クッソ自由度高いじゃん!」
【ダイヤは知らない。これから二週間、ほぼ徹夜でハートの冒険に付き合う羽目になることを】
「…ぁー、えっと。あの」
「何か?」
「先生、正直にお答えください。転移魔法失敗しましたよね?」
「いやいやそんなまさかまさか……はは()」
「先生ほど高名な魔法使いがまさか…⸺壁にハマるのが成功と言い張るんですか?」
「………いやぁ。失敗、しちゃいましたね♪」
「楽しまないでください!!!どうするんですか!?今の私ら、師弟揃って城壁に上半身だけ出てる大マヌケですよ!?宮廷からのお仕事の時間までに出られる保証は無いんですよ!!!」
「……はは♪」
「だから、楽しむなぁ!!!」
【マヌケな宮廷所属魔法使いとして、数日間国の笑い話のタネにされたらしい】
「あなた……誰?昔の私の知り合いなの?」
色々あって離れていた嫁を迎えに行ったが、嫁は記憶喪失になっていた。はぁ!?嫁が幼少の頃から少しずつ調きょ⸺ん”ん”っ、洗の……じゃなくて、そう!教育!教育が無駄になったじゃないか!!!
昔は、俺がいなきゃ何も出来ない可愛い子だったのに、自分から進んで家事や仕事して、交友関係も良好そうで……うぅ、閉じ込めたいなぁ。
「あなたのこと、よく知らないけど…これからまた仲良くなれば思い出せるかな?ともかくよろしくね!」
えへへ……明るいなぁ。
俺が何もしてなかったらこうなってたんだろうな。だけど、面倒くさがりで俺がいないと何も出来ない方が俺的には好きなんだよなぁ。でも、これからまた俺がいないとダメな子にしてあげたらいいかな…いいよね?
僕はもう、君がいないと生きていけないから、それくらい許してよ…ね?
【記憶喪失ルートのハートとスペード……あれ前回もスペードお前…話だった気が()】
私は弱いのに、何故アイツらと戦った?
実戦経験なんて無いのに、どうして立ち向かった?
戦ったことなんて、空想上でしかないのに。
⸺いや、理由は分かりきってる。
私の後ろに、守りたい人たちがいるから。
私の天使ちゃんと、天使ちゃんの宝石ちゃんがいるから。
「⸺さん、もう…やめてください」
「嫌だよ。私がこうしているだけで、私の”大切”が傷つかないなら。私の”生”なんて、溝に捨ててやるさ」
「そん、な……」
私と天使ちゃんが会話していることを、好機と思ったのか、敵の一体が近接攻撃を仕掛けてくる。が、敵が放った攻撃は、私が張った結界に阻まれ消失する。でも、結界は割れてしまった。やっぱり脆いな…⸺あ。
しくった…相手は一人じゃなく、二人。それを一瞬、忘れてしまった。
剣が⸺鋭い刃が、天使ちゃんの心臓を刺して、宝石ちゃんへ、次の刃を構えていた。ゆっくりと、ゆっくりと。
⸺本当、この無駄に回る頭は嫌いだ。
役に立つ時はある。さっきの結界を張ることとか、長ったらしい呪文の詠唱時とか。
でも、こういう時。
決して間に合わない終わりが迫っている時、現実を突きつけてくる、この頭が、大嫌いだ。
こんなとき……に。あの人に、頼れたら……いいのに。
「こんな時こそ、隣りに居てよ……バカ」
そんな私の呟きは、声に出てしまったらしい。なんでって、それは⸺。
「やっと見つけた。やっと俺を呼ぶ声が聞こえた。ははっ、俺がいないくせに、随分充実してたみたいだな?」
⸺バカが、私の声を聞いたと、突然現れたから。
【お前…そういうとこやぞ……】
ココロはわからない。
どうして目から水が出てくるの?
どうしてココロにそんな顔をするの?
どうしてココロは、こんなにイタイの?
ココロに刺されて、クルシイはずなのに。ニクイはずなのに。ココロのことを、抱きしめるのはなんでなの?
「⸺どれだけ時間が経っても。どんなに姿が変わっても。母親が自分の子供を間違えることはないさ……おかえりなさい、心」
……なんで、ココロの声は、出ないの?
【変わらない愛と変わる現実】