もしも、過去へ戻れるのなら。今すぐにでも戻りたい。
その過去で私は、今度こそ破滅を止めよう。
そして破滅を止めたあとは、私が元いた未来へ戻り、終末を見届けるのだ。
それが、原因を止められなかった愚か者の責任だから。
【後悔には過去という重石が乗っている】
あの子はいつも輝いている。
いつ見ても、どこに居ても、輝いている。
月みたいに優しく、太陽の様に明るい。
本当に、星みたいなあの子。
私も、あの子になりたい。
あの子を追って、星になりたい。
星になって皆を、仲間を照らしたい。
でも私は、あの子の仲間ではあるけど、真に仲間とは言えない。
あの子は正に主人公。だけど私はただのモブ。
それも、悪人に堕ちてしまう、どうしようもないモブ。
そう、私は………悪の誘いに、乗ってしまった。
私が、あの子になれる。
あの子になって、あの子と同じ星になって、輝ける。
そんなことが出来るって、彼が囁いた。
あの子を、星を追うために私は一度……地に落ちよう。
それがきっと、一番の近道だろうから。
【欠片は星に憧れる】
飛びたい、この空を。
そうしたら、交通費が掛からないから。
外気に触れるから、暑さも寒さもモロに来るけど。
【理想は空を飛ぶ程度の能力】
今日は、いいことが沢山あった。
朝の星座占いで一位だった。
ラッキーカラー・ラッキーアイテム共に、私の好きなモノだった。
通学中、美男子とぶつかってしまったが、彼の制服が私と同じ学校であることに気づいた。
HRに、同じクラスの転校生が彼であることを知った。
彼の席が私の隣になった。
私が彼への学校案内をすることになった。
楽しかった。
放課後、いつもの日課を受けていたら、彼が割って入って止めてくれた。
別にどうでも良かったけど、嬉しかった。
⸺だから今日は、いいことでいっぱいの、特別な日になると思っていたのに……施設へ帰ると、いつもの仕事が入っていた。
今日のターゲットは、〇〇町▽◎番地。
昨日来たばかりの新参者にして、前々から、ターゲット候補に上がっていた要警戒者。
そしてそれは、彼だった。
酷く冷淡な目は、昼間とは真逆の印象。
低く唸るような声は、彼の本性が垣間見える。
あぁ…そんな人だったなんて。
⸺今日は、特別な日だ。
初恋をして、その初恋相手を殺した、とっても特別な日。忘れないよ。
だって…この恋を、最初で最後のモノにするから。
【本業、暗殺者。副業、学生。】
じりじりと、己の身を蝕むこの暑さ。
風に揺れる木陰に入れど、ただの気休め。
されど、人とは単純。
思い込みで多少涼しく感じてしまう。
実際は、さほど変わらぬ灼熱だというのにな。
【暑さで唐突に語り始めた通行人】