NoName

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12/6/2024, 2:39:33 PM

逆さま






落っこちた

おっこちた

くるくるぐるぐるとろりんと

どぅるどぅるとぅるとぅりからりんた

目ぇが覚めたら火車髑髏

走れ走れや円の中

落っこちた

おっこちた

月から隠れて闇に逃げ

昼を怖れて夜を恋う

ぐるぐるくるくるどろりんと

とぅるとぅるどぅるどぅりからりんた

12/4/2024, 2:38:17 PM

夢と現実





いつまでも見ていたいものが夢
いつからか目を背けたいものが現実


11/30/2024, 1:43:14 PM

泣かないで





「いい名前じゃん、千草」
「やだよ。みんな馬鹿にするんだ。草の名前だって。草が千本も生えてる、荒れ地だって。じゃなかったら笑いものの場所だって」
「笑いもの?」
「“草生える”って」
「……あぁ……へえ…そんなこと考えちゃうのか…世代を感じるなあ…」
「やだよ、改名したい。なんでこんな名前にしたの」
「いや、名前つけたのは俺じゃなくてねーちゃんだから…」
「その場にいたんでしょ! おじさんニートなんだからっ」
「に…違うよニートじゃないよちゃんと働いてるよ」
「嘘つけ、いっつも家にいるじゃん!」
「エーちょっと草生えるとか言ってる世代が在宅ワーク知らないはずないでしょぉ…働いてるよぉ」
「ぅえええぁあああもぉやだあああ」
「エエエからのギャン泣きぃ? 泣きたいのは俺だよぉねーちゃん帰ってきて〜」
「うぅっ、っく、か、かわいい…めいっこがな、いてるんっだか、らーー! ちゃんとっ、なぐ、っさめて!」
「エーコワイよなんでその年でもう既にねーちゃんみたいなこと言ってんのよ、教育行き届きすぎでしょ」
「ほらぁあああ」
「あ~〜はいはい、はい」
「ハイは一回ぃぃ〜」
「うわめんどく…はいっ。だ!大丈夫だって。そんなん名前からかわれんのなんてちっさい頃だけ! 別に読めない名前でもないし周りがちょっとオコサマなだけ! ちーちゃんはかわいーし名前もかわいーし無敵!」
「うぅあああ」
「エー足りない? まだ足りない? んん、エートちーちゃんは絵も上手だし歌も上手だし、あっ、ほら、だから周り嫉妬しちゃってんじゃん? 名前くらいしか責めるとこないんじゃん? だって別にまじで馬鹿にされるような名前じゃねえし、あ、なんかちょっと腹立ってきたな。まじでなんでふつーにいい名前バカにされなきゃいけねーんだろ」
「う、ァあ…?」
「読み方も漢字もあるし古来からの美しい名前じゃん? ねーちゃんだってそんな適当につけた名前じゃねえし、 …はぁ腹立つなぁ、ちーちゃん主にそれ誰がゆってんの? 名前教えて? 今度迎えいったときに…」
「おっ、おち、おちついて! きっ、気にしてない! ほんとは別にそんな気にしてないから!」
「エーそお? ちゃんと傷ついたら言うんだよ? かわいい姪っ子泣かされて黙ってる俺じゃないからね?」
「うん大丈夫! ぜんっぜん! ほらもう泣いてないし!」
「んんーそう〜〜? まあちーちゃんがそう言うなら…あっ! そーだアイスあるんだったハーゲンダッツ。食べる?」
「アッアイス、ワーイうれしいなぁ〜〜」
「いえーい持ってくるねえ」

少し高級なアイスがテーブルに並ぶ。
今日も平和が守られた。


11/23/2024, 12:23:44 AM

夫婦





祖母が亡くなった。
元気な人で、直前まで本当に元気で、人々は口を揃えて「ああいういき方がいいね」と言った。生き方なのか逝き方なのか、あるいは両方なのか。

けれど本人はそろそろだということがわかっていたのかもしれない。
決してきれい好きとは言えない人だったけれど、片付けに訪れた祖母の家は既にすっきりと片付いていた。
生活に必要なものが置かれている簡素な家の中にはまだ、微かな温もりが残っているような気がする。

大きな食器棚の中には自分用の茶碗、汁椀、幾つかの皿。そして客人用なのか湯呑みとティーカップセットが二客。
ふと棚奥になにか白いものが見えて手を伸ばす。

白い布に包まれたそれは、恐らくもとは盃だったのだろうという形状で、その半分だった。
朱塗りの盃──にはっとする。
わたしはこのもう半分を見たことがある。

箪笥の左、上から三段目。
同じく白い布に包まれた朱塗りの盃の片割れがある。
二つを合わせるときっちりと合う。
祖父と祖母二人の生活の始まりと終わりが、何事もなかったかのようにぴったりと重なる。

二人が眠る墓に金継をした盃を共に納めた。
きっといつかどこかで、少女と青年が酒を飲むだろう。


11/17/2024, 3:50:00 PM

冬になったら





「早くこっちおいでよ」
電話で少しだけ不機嫌そうな声がエコーを掛けた。
「スノータイヤ履いてるんでしょ?」
「履いてるけど、でも雪道の運転慣れてないし」
「だから今こないとでしょ。本格的に冬になったら絶対来ないんだから」
「いや、そしたら帰り雪道になって帰れないかもしれないじゃん」
一瞬の間。
「だからそれでいいじゃん。」
むう、と頬を膨らませたのが電話越しでもわかる。
「帰らなくていーじゃん。」
窓の外は寒そうな風が葉を落とした枝を揺らしていて、
きっともう1ヶ月もしないうちにその中に白いものが混ざるんだと思う。

「…いっか。帰らなくて」
「ウン」
素早い切り返しで相槌を打ち、
「ん、待ってそれどっち?」
慌てたような次の句が追いかけてくる。つい笑ってしまった。
壁に掛けたカレンダーは本当はもう明後日から予定を書き入れていない。

「明日行くよ。そっち」
一拍の間。
「えっほんと?」
電話越しでも明るい表情が見えてこっちも笑ってしまう。

冬が来る。

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