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冬になったら





「早くこっちおいでよ」
電話で少しだけ不機嫌そうな声がエコーを掛けた。
「スノータイヤ履いてるんでしょ?」
「履いてるけど、でも雪道の運転慣れてないし」
「だから今こないとでしょ。本格的に冬になったら絶対来ないんだから」
「いや、そしたら帰り雪道になって帰れないかもしれないじゃん」
一瞬の間。
「だからそれでいいじゃん。」
むう、と頬を膨らませたのが電話越しでもわかる。
「帰らなくていーじゃん。」
窓の外は寒そうな風が葉を落とした枝を揺らしていて、
きっともう1ヶ月もしないうちにその中に白いものが混ざるんだと思う。

「…いっか。帰らなくて」
「ウン」
素早い切り返しで相槌を打ち、
「ん、待ってそれどっち?」
慌てたような次の句が追いかけてくる。つい笑ってしまった。
壁に掛けたカレンダーは本当はもう明後日から予定を書き入れていない。

「明日行くよ。そっち」
一拍の間。
「えっほんと?」
電話越しでも明るい表情が見えてこっちも笑ってしまう。

冬が来る。

11/17/2024, 3:50:00 PM